講演情報

[R3-08]氷惑星内部におけるダイヤモンドミストの生成可能性

*入舩 徹男1、國本 健広1、井上 紗綾子1、境 毅1、大藤 弘明2 (1. 愛媛大学・GRC、2. 東大・理学)

キーワード:

ナノダイヤモンド、超高圧合成、氷惑星、ダイヤモンドミスト、ダイヤモンドの雨

天王星や海王星などの氷惑星のマントルでは、水(H2O)、アンモニア(NH3)、メタン(CH4)が主な成分と考えられている。このうちメタンは、氷惑星内部の高温高圧下で分解してダイヤモンドを生成し、これが氷惑星内部のイオン性流体中を沈降し(diamond rain1))、これらの惑星の特異な磁場を引き起こすとの考えも提案されている2)。
 メタンや様々な炭化水素を出発物質とした超高圧下でのダイヤモンドの生成は、主にダイヤモンドアンビルセルやレーザー圧縮法により検証されてきた2)-7)。しかし、これらの研究においては、ダイヤモンドの生成は100 GPaを越える圧力下、かつ氷惑星内部の温度より高い温度でおきるとする結果がある一方で、より低い圧力・温度条件下で生成するとする結果も得られている。
 我々はパラフィン(CnH2n+2)を出発物質とし、マルチアンビル装置を用いて圧力15-25 GPa、温度1000-1700℃領域においてナノダイヤモンドの合成を行った8)。得られた試料は、最高温度の1700℃においても、粒径20 nm程度の極めて小さい粒径を持つダイヤモンド粉末であり、温度の低下・圧力の上昇とともに粒径がより小さくなる傾向が認められた。また最高6時間に及ぶ加熱時間において、粒径の顕著な変化は見られなかった。得られたダイヤモンドは、表面が水素で終端されている水素化ナノダイヤモンドであり、これにより粒成長が抑制されたと考えられる。
 我々の実験では、これまで報告されているダイヤモンド生成下限温度(約40 GPaにおいて1500℃)7)よりはるかに低い、1000℃(15-25 GPa)程度でもダイヤモンドの生成を確認した。従ってこれらの氷惑星内部の比較的浅部において、メタンなどの炭化水素からのダイヤモンドの生成が見込まれるが、その表面は水素で終端され、粒径もナノ領域に留まる可能性がある。
 このような微小粒子の氷惑星内部での動的挙動は、重力による沈降とエントロピー駆動の拡散との競合となるが、Péclet数により示される両者間の臨界粒径は10-2 mm程度と見込まれる。従って水素を主要な成分とした流体中でのナノダイヤモンドに対しては、後者が卓越すると考えられる。このことは、これらの氷惑星中ではダイヤモンドは雨となって降り注ぐのではなく、「ダイヤモンドミスト」として流体中を浮遊することを示唆する。最近では、これらの氷惑星中には従来の推定より多くの岩石成分が存在するとの説も提案されており9)、両惑星の特殊な磁場の原因も、「ダイヤモンドの雨」以外の要因を考える必要があるかもしれない。

(参考文献)
1) Ross, M., The ice layer in Uranus and Neptune-diamonds in the sky? Nature 292, 435-436 (1981).
2) Frost, M. et al., Diamond precipitation dynamics from hydrocarbons at icy planet interior conditions, Nat. Astron. 8, 174-181 (2024).
3) Benedetti, L. R. et al., Dissociation of CH4 at high pressures and temperatures: diamond formation in giant planet interiors? Science 286, 100-102 (1999).
4) Hirai, H. et al., Polymerization and diamond formation from melting methane and their implications in ice layer of giant planets, Phys. Earth Planet. Inter. 174, 242-246 (2009).
5) Kraus, D. et al., Formation of diamonds in laser-compressed hydrocarbons at planetary interior conditions, Nat. Astron. 1, 606-611 (2017).
6) He, Z. et al., Diamond formation kinetics in shock-compressed C-H-O samples recorded by small-angle X-ray scattering and X-ray diffraction, Sci. Adv. 8, eabo0617 (2022).
7) Kadobayashi, H. et al., Diamond formation from methane hydrate under the internal conditions of giant planets, Sci. Rep. 11, 8165 (2021).
8) Kunimoto et al., Ultra-small hydrogenated nanodiamonds synthesized at static ultrahigh pressure, Nat. Commun. (under revision).
9) Morf, L. & Helled, R., Icy or Rocky? Convective or Stable? New interior models of Uranus and Neptune, Astron. Astrophys. 704, A183 (2025).