講演情報
[R3P-11]高速衝突条件下の蛇紋石の構造進展その場観察
*梅田 悠平1、瀬戸 雄介2、富岡 尚敬3、有馬 寛1、犬伏 雄一5,6、児玉 了祐7,4、宮西 宏併6、中村 浩隆7,4、尾崎 典雅7,4、佐藤 友子8、富樫 格5,6、籔内 俊毅5,6、矢橋 牧名5,6、関根 利守9、奥地 拓生1 (1. 京大・複合研、2. 大阪公立大・院理、3. 海洋研究開発機構、4. 阪大・レーザー研、5. 高輝度光科学研究センター、6. 理研・SPring-8センター、7. 阪大・院工、8. 広大・院理、9. 北京高圧科学研究センター)
キーワード:
蛇紋石、衝撃圧縮、非晶質化
蛇紋石は含水小惑星に普遍的に存在する主要な含水鉱物であり、その結晶構造中に10 wt%を超えるH2Oを水酸基として保持している。これらの小惑星は衝突による衝撃圧縮と圧力解放過程を繰り返し経験してきたことから、衝突過程における蛇紋石の構造変化を理解することは、惑星形成過程における水の保持や脱水、および再分配の素過程を考察する上で重要である。さらに、RyuguやBennuに代表される含水小惑星からのリターンサンプルについて、過去に経験した衝突による物質進化や衝撃強度(衝突速度・衝撃圧力)を読み解くための鉱物学的指標としても必要不可欠である。本研究では、蛇紋石グループの一種であるアンチゴライトを対象として、衝撃圧縮および減圧過程における結晶構造変化のその場観察を行った。実験はSpring-8, SACLA施設のBL3EH5において、ナノ秒レーザーによる衝撃圧縮とX線自由電子レーザーによる時間分解X線回折を組み合わせて実施した。また、衝撃波速度を同時計測することにより、各ショットにおける衝撃圧力を決定した。本実験における衝撃圧力は最大106 GPaであった。実験の結果、衝撃圧縮中のアンチゴライトは44 GPa(衝突速度はおよそ4.7 km/sに相当)までは結晶性を保持する一方、66 GPa(6.4 km/s)以上では非晶質化することが分かった。この非晶質化は衝撃圧縮下で数ナノ秒以内起こり、その後の10ナノ秒程度の減圧過程においても非晶質状態のままであった。衝撃回収実験で報告されている無水鉱物(MgSiO₃やMg₂SiO₄)の結晶化は観察されなかった(Sekine et al., 2015; Tomioka et al., 2007)。したがって、少なくとも本実験の時間スケールにおいては、アンチゴライトの主要な衝撃応答は、非晶質化であることが明らかとなった。さらに、圧力解放曲線の計算結果、ピーク衝撃圧力が60 GPaからの減圧時の圧力温度経路はMgSiO₃やMg₂SiO₄高圧相の安定領域を横切ることが示された。このことは、衝撃により生成した非晶質物質が、衝撃持続時間や冷却速度などの条件によっては、減圧過程で高圧相として結晶化する可能性を示している。一方で、ピーク衝撃圧力が80GPa以上の場合は、常圧付近まで液相線より高温側を通ることが示された。本研究によって、衝撃圧力と蛇紋石の構造進化の関係を明らかにした。この結果は、RyuguやBennuなどの含水小惑星のリターンサンプルに記録された衝撃変成組織の形成条件を理解し、衝突強度や熱履歴を読み解くための指標となることが期待される。さらに、蛇紋石に富む含水小惑星が高速衝突を受けた際、構造水はナノ秒程度の時間内では単純に脱水・散逸するだけではなく、非晶質化、融解、減圧過程での結晶化を通じてガラスなどへ再分配される可能性があることを示唆している。
