講演情報

[R3P-14]SPring-8 BL04B1における高温高圧下における弾性波速度測定実験の技術開発とその現状

*柿澤 翔1、肥後 祐司1、辻野 典秀1、Gréaux Steeve2、河野 義生3、大平 格4、石井 貴之5 (1. 高輝度光科学研究センター、2. 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、3. 関西学院大学、4. 学習院大学、5. 岡山大学惑星物質研究所)

キーワード:

高圧、弾性波速度、SPring-8 BL04B1

放射光X線その場観察と超音波パルス法を組み合わせた高温高圧下における弾性波速度測定は、地球内部物質の物理特性を決定するための主要な手法である。測定された速度データは、地震波観測データと直接比較することが可能であり、地球深部の化学組成や不連続面の原因物質を特定するための重要な物性制約を与える。特に、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL04B1に設置された大容量マルチアンビル高圧装置(SPEED-1500)を用いた測定システムは、これまでにもmajorite garnetの測定を通じたマントル遷移層の主要物質構成の決定(Irifune et al., 2008, Nature)や、下部マントル条件におけるdavemaoiteの弾性波速度測定に基づいた玄武岩質地殻の深部存在示唆(Gréaux et al., 2019, Nature)など、地球深部物質科学の進展において多くの成果を上げてきた。
本研究では、同ビームラインにおける弾性波速度測定実験のさらなる高圧・高温化、および測定精度の向上と実験の効率化、測定操作に伴うヒューマンエラーの排除を目的として、以下の技術開発を行なってきた。第一に、高圧力下での測定のため、テーパー付きアンビルを導入した (Ishii et al., 2016)。アンビル側面のギャップ形状を工夫したテーパー設計を採用したことにより、加圧時における圧力発生効率の改善が達成され、従来よりも高圧下での弾性波速度測定が可能となった。第二に、高温実験時における測定の安定化を達成するため、圧電素子の冷却システムを新たに導入した。試料部の加熱に伴いアンビルを伝わってアンビル後端に接着された圧電素子へと熱が伝導する。この熱的影響に対し、外部から冷却空気を直接圧電素子周辺へと吹き付ける冷却機構を設けることで、圧電素子の過熱を防ぎ、超音波シグナル強度の減衰を防止した。第三に、高解像度のカメラシステムを開発した(Kondo et al., 2024)。本システムでは、X線透過画像を用いた試料寸法測定の精度を高めるため、プレス装置本体の直後に設置可能な専用ステージを開発し、撮影倍率の向上を図った。さらに、取得された画像データから実際の試料長を正確に解析するため、ピクセルキャリブレーション方法を構築し、試料長の決定精度の向上をした。第四に、実験におけるヒューマンエラーの防止と測定作業効率の向上のため、測定の自動化を目的としたシーケンシャルソフトを開発した。従来は個別に手動で実行されていた試料の密度の決定と圧力の決定を目的としたX線回折測定、試料長を測定するためのX線透過像測定、およびトラベルタイムを決定する超音波測定について、これら一連の異なる測定プロセスを統合し、事前に設定したシーケンスに従って自動で順次実行するプログラムを作成した。これにより、測定者の手動操作に起因する設定ミスや測定データの保存漏れといったヒューマンエラーを排除し、安定したデータ収集スキームを確立した。第五に、実験後に得られる多様かつ膨大なデータの解析効率を向上させるため、超音波の波形データとX線画像データなどをそれぞれ解析するソフトウェアを新たに整備した。これにより、解析作業の標準化と迅速化が達成された。
これらのシステム開発および整備の結果、現在では、室温では40 GPa、高温下においては30 GPaに達する高温高圧条件下において、bridgmaniteをはじめとするケイ酸塩鉱物の弾性波速度の測定が可能となっている。本発表では、これらの技術開発の具体的なシステム構成と現在の稼働状況、および実験の結果について報告する。