講演情報
[R3P-16]鉄金属液体-ケイ酸塩メルト間における強親鉄元素の分配に軽元素・温度・圧力が与える影響
*近藤 望1、浅沼 尚2、芳野 極1 (1. 岡山大学、2. 京都大学)
キーワード:
強親鉄元素、Late Veneer、核-マントル分離、川井型マルチアンビルプレス
強親鉄元素(Highly siderophile elements, HSE)は白金族元素(Os, Ir, Ru, Rh, Pt, Pd)とRe, Auから構成され、ケイ酸塩相と金属相が共存する際、大部分が金属相に分配される。この特徴から、強親鉄元素は岩石惑星の核-マントル分離や、その後の核-マントル相互作用の強力なトレーサーとして取り扱われてきた。地球については、コンドライト隕石や未分化上部マントルのHSE組成分析を行った研究(例えば、Fischer-Godde et al., 2010; Becker et al., 2006)や, 鉄金属液体-ケイ酸塩メルト間における強親鉄元素分配を高温高圧実験で調べた研究(例えば、Mann et al., 2012)などから、「マントルにおけるHSEの過剰」が長きにわたる未解決問題となってきた。この「マントルにおけるHSEの過剰」の重要な点として、未分化上部マントルのHSE濃度が、高圧実験により求められた分配係数から推定された、核分離後マントルのHSE濃度よりも高くなること、さらに、HSEそれぞれの相対濃度比が、未分化上部マントルとコンドライト隕石で似た値を示すことが挙げられる。そして、「マントルにおけるHSEの過剰」を説明する説として、核-マントル分離後にコンドライト隕石と同様のHSE組成を持った物質が地球に降り積もったとする、「Late Venner」仮説が長年支持されてきた。一方で、先行研究で決定された鉄金属液体-ケイ酸塩メルト間におけるHSEの分配係数それ自体が不確定要素を孕んでいる。先行研究ではHSEを過剰に添加した(wt.%オーダー)条件で分配係数を決定しており(Mann et al., 2012)、こうした条件ではヘンリーの法則に則った分配係数が得られないことが示唆されている(Zhang & Li, 2021)。我々のこれまでの研究では、HSE濃度をwt.% オーダーからppmオーダーまで変化させ、6-21 GPaの圧力で鉄金属液体-ケイ酸塩メルト間におけるHSEの分配係数を決定した。この研究から、HSE濃度が低い条件において、HSE分配係数は互いに似た値を持つことが判った。この分配経緯数から核分離後の地球マントルにおけるHSE組成を計算すると、HSEの相対濃度比はコンドライト的となった。一方で、未分化上部マントルのHSE濃度と比べると、核分離後マントルのHSE濃度は一桁ほど低かった。この差が埋まるかどうかを検証するため、本研究では、HSE分配への圧力・温度・軽元素の影響を高温高圧実験によって調べた。出発物質には、各HSEを1000 ppm添加した鉄-HSE合金と、コンドライト組成から核の金属成分を除いたマントル組成(Andrault et al., 2018)の粉末を合成した。高温高圧実験には岡山大学惑星物質研究所の川井型マルチアンビル装置を用いた。回収試料の分析には、岡山大学惑星物質研究所のFE-EPMAと京都大学人間・環境学研究科のLA-ICP-MSを使用した。予察的結果として、硫黄(S)を入れた系と入れていない系では、硫黄の量に関わらず分配係数への影響は少ないことが判った。また、300℃以上の上昇によって、HSEの親石性が一桁程度上がることが判明した。圧力については、高圧ほど親石性が抑えられる可能性が示唆されている。本発表では、HSE分配について軽元素・温度・圧力の影響を詳細に述べるとともに、地球や月、火星におけるLate Veneerについても議論する。
