講演情報

[R3P-20]高圧下におけるアルカリ土類金属酸化物(CaO,BaO)の金属化の検証

中村 悟1、*境 毅1、福田 脩斗2、中本 有紀2、清水 克哉2,1、門林 宏和3 (1. 愛媛大・GRC、2. 阪大基極セ、3. JASRI)

キーワード:

スーパーアース、トロイダル型ダイヤモンドアンビルセル、状態方程式、金属化

系外惑星のなかで地球の数倍から10 倍程度の質量をもつ岩石型惑星はスーパーアースと呼ばれており,地球に類似した内部構造を仮定すると質量5 倍の場合に核-マントル境界の圧力が650 GPa になると予想される(Seager et al., 2007).そのような地球よりも高い温度圧力環境に存在するマントル構成物質は地球マントルでは見られない化学組成,結晶構造を示すことが予想されている.例えば,CaSiO3は地球マントルの温度圧力領域ではペロブスカイト構造が安定であるが,600 GPa,3000 Kでパイライト型SiO2とB2構造の酸化カルシウム(CaO)に分解する.ここでCaO(B2)は400 GPa以上では金属化することが予想されている(Tsuchiya and Tsuchiya, 2011).CaO の金属化予想圧力を実験で発生することは困難であるが,同じアルカリ土類金属酸化物である酸化バリウム(BaO)の金属化予想圧力は230 GPaとなり,より低圧力で金属化すると予想されている(Uludoğan et al., 2001).CaO では理論計算の先行研究で110 GPa,実験で135 GPaまで圧縮挙動が調べられており,60 GPa付近でB1構造からB2構造に相転移することが報告されている(Vyas et al, 2023; Richet et al., 1988).また,BaO では理論計算の先行研究で150 GPa,実験で60 GPaまで圧縮挙動が調べられているが,CaOとBaOともに金属化予想圧力までの圧縮実験は行われておらず,金属化の確認も行われていない.
 本研究ではCaO とBaO について金属化予想圧力付近までの状態方程式を決定するとともに,試料の光学的応答や電気抵抗の変化による金属化の検証を行うことを目的として圧縮実験を行った.圧力発生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用い,SPring-8 BL10XU においてX 線回折測定を行い圧力と試料の格子体積を決定した.CaOの状態方程式を決定する実験ではキュレット径10 μmのトロイダル形状のダイヤモンドアンビルを用いて350 GPaまで加圧し,状態方程式を決定した.BaO については状態方程式決定の実験と高圧下での電気抵抗測定実験を246 GPa まで,光学的観察を305 GPaまで行った.
 物質のバンドギャップのエネルギーが小さくなると透明から不透明になる光学的な変化があると考えられるが,CaO では350 GPa においても透明であった.一方BaOにおいては246 GPa までの電気抵抗測定では金属化した際におこると考えられる抵抗値の低下は確認されなかったものの,237 GPa から不透明化することを確認した.最高圧力での305 GPa でも金属光沢は確認されておらず,バンドギャップが完全に閉じて金属化するには少なくとも305 GPa 以上の圧力が必要であることが明らかとなった.アルカリ土類金属酸化物の金属化には理論予測よりも高い圧力が必要であるが,金属化の兆候を示す黒色化について本研究により初めて実験的に検出することができた.