講演情報

[R4-11]硫酸還元菌を含む微生物群衆を用いた硫化鉄合成の試み

*鎌田 樹也1、大藤 弘明2、塚本 雄也1、砂村 倫成2、池田 昌之2 (1. 東北大・院理、2. 東大・院理)

キーワード:

硫酸還元菌、黄鉄鉱、グレイガイト、マッキナワイト

Pyrite(FeS₂)は地球表層環境において最も普遍的に産する硫化物であり,鉄・硫黄の表層循環において重要な役割を担っている。天然では湖沼や内湾の底性堆積物などの還元環境ではpyriteが普遍的に自生しており,その形成には微生物,特に硫酸還元菌(sulfate reducing bacteria;以下,SRB)が深く関与していると考えられている。
 しかし,実験室においてSRBによるpyrite形成を再現した例は限られている。鉄源としてFeCl2などの二価鉄を添加したSRBの純粋培養実験では,生成物の多くはmackinawite(FeS)で,稀に数カ月後にgreigite(Fe3S4)の生成が確認された(e.g. Picard et al., 2018)。一方,三価鉄を用いた場合はpyriteの生成が認めれた研究例もわずかに存在する(Rickard, 1969; Duverger et al., 2020)。これに対し,天然微生物群集を用いた培養実験では、比較的容易にpyriteが形成されており(e.g. Berg et al., 2020),その形成にはSRBのみならず,複数種の微生物間相互作用が関与していることが示唆されている。
 しかし,どのような微生物がpyrite形成に寄与し,それぞれどのような役割を果たしているのかは未だ十分に理解されていない。また,天然の還元的環境ではframboid(形態・サイズが均一な多数の微結晶の木苺状集合体)がpyriteの主要形態であるのに対し,これまでの培養実験で報告されているpyriteは,自形の単結晶あるいは球晶が主体であり,両者の間には大きな不一致がある。
 そこで本研究では,宮城県仙台市与兵衛沼のヘドロから濃縮培養したSRBを含む微生物群集を,調製した培地(MgCl2・6H2O, CaCl2・2H2O, Na2SO4, NH4Cl, KH2PO4, KCl, trace element solution, selenite tungsten solution, vitamin solution, sodium lactate solution, yeast extract, MES, pH 6.5)にGilbert et al. (2008)にしたがって合成したFeOOHを加え,30℃で培養および硫化鉄鉱物の合成を試みた。生成物は脱酸素水で洗浄して凍結乾燥させた後,XRD,SEMで分析・観察を行った。
 実験の結果,培養20日後の試料では,XRDにおいて出発物質のFeOOHのピークは検出されず,mackinawiteに由来すると考えられる極めてブロードなピークが認められた。一方,SEM-EDSでは,Fe:S比がおよそ3:4であるサブミクロンサイズの不定形粒子の凝集体が主に確認され,greigiteが形成している可能性が示唆された。生成鉱物の正確な同定のために,TEMによる観察を実施する予定である。
 現在,培養期間を延長した実験や鉄源を変更した実験に加え,福井県水月湖の無酸素水塊および東京湾の底性堆積物から抽出した微生物群集を対象とした濃縮培養実験を進めており,生成した鉄硫化物の比較検討を行う。本発表では,各実験の結果を報告するとともに,培養条件やpyrite形成に関与する微生物群集について議論する。