講演情報
[R4-13]Bushveld複合岩体の大深度掘削による20億年前に形成した超苦鉄質岩中における微生物生態系の解明
*渡部 佑久1,2、城戸 太朗1,2、幸塚 麻里子1,2、宇留賀 朋哉2,3、大浦 正樹2、河合 敬宏3、金子 拓真3、鈴木 庸平1,2 (1. 東大・院理、2. RSC、3. JASRI)
キーワード:
超苦鉄質岩、微生物、国際陸上科学掘削計画、走査型蛍光X線顕微鏡、地下生命圏
カンラン石や輝石から成る超苦鉄質岩と地下水の反応は、エネルギー源である水素やメタンと共にアミノ酸等の生命材料物質も生成するため、地下生命圏の形成や維持に重要な役割を果たすと考えられている(Onstott et al., 2019)。近年、火星探査車PerseveranceがJezero Crater内のカンラン石や輝石と水が反応した領域における有機物の存在を報告している(Sharma et al., 2023)。この分析結果は、超苦鉄質岩と水の反応を伴う地下水環境が初期火星に存在した根拠となり得る。この超苦鉄質岩はマグマが層状に貫入したことで形成された集積岩と解釈されており(Williford et al., 2025)、超苦鉄質の層状貫入岩からなる地下深部で生命が生存可能か明らかにする必要がある。しかし、火星の地下を掘削して岩石コアを分析するのは困難なため、生命存在可能性を理解するためには地球の類似した環境から得られた岩石コアの研究が不可欠である。
本研究の対象である南アフリカのBushveld複合岩体は、約20億年前にKaapvaal地塊へ貫入した世界最大級の層状貫入岩体であり、その下部は超苦鉄質から苦鉄質の組成を示す火成集積岩から成る。国際陸上科学掘削計画(ICDP)において地上から掘削された深度814 mの輝岩に関する先行研究では、岩石内で微生物は三価鉄を含む金雲母粒子の縁に分布すると報告されている(Kido et al., 2026)。鉱物内の電子受容体に依存した微生物生態系がさらに深い岩石中でも同様に形成するのか検証することを目的とした。
本研究では、Bushveld複合岩体のICDPで微生物用試料として得られた最深の超苦鉄質岩試料(深度1860 m)を用いた。掘削時の微生物の汚染についてはSuzuki et al. (2024)が掘削開始時の深度15 mの苦鉄質の岩石試料で確立した手法で評価した。その手法では掘削流体に微生物大の蛍光ビーズを添加し、掘削後に得られた岩石試料の内部に蛍光ビーズが浸透したかを可視化することで汚染を評価しており、深度1860 mの試料に適用した結果、岩石内部の汚染はないと判明した。
岩石組織の特徴を調べるために樹脂埋めした試料の薄片を偏光顕微鏡観察した結果、約1 mm程度の粒径の輝石が集積しており、輝石の粒界には異なる鉱物相がみられた。鉱物相を同定するために粉末X線回折法(XRD)で解析した結果、斜方輝石と単斜輝石のピークが主体であった。深度814 mの輝岩中では、斜方輝石の粒界に三価鉄を含む金雲母と微生物の分布が見られた。そのため、本試料の輝石の粒界で見られた鉱物相が三価鉄を含むか調べるために、大気非暴露条件下でダイヤモンドワイヤーソーを用いて岩石切片を作製し、Spring-8の硬X線ビームラインであるBL36XUの走査型蛍光X線顕微鏡(SFXM)を用いて同様に大気非暴露条件下で鉄のK端のX線吸収端近傍構造(XANES)分析を行った。並行してマイクロ蛍光X線(μ-XRF)分析によるマッピングを行った結果、カリウムやカルシウムが濃集している粒界に三価鉄が共存していることが判明した。その三価鉄が共存する粒界において、SPring-8の軟X線ビームラインであるBL17SUとNanoTerasuのBL13UのSFXMによる分析を行った。炭素、窒素、リン、硫黄のμ-XRFマッピングの結果、三価鉄が共存する粒界にこれらの元素の全てが濃集していた。その粒界から窒素のK端のXANES分析を行い、無機物と有機物の試薬と培養した微生物細胞の標準から得られたXANESスペクトルと比較した。その結果、粒界から微生物細胞のスペクトル同様のスペクトルが得られたため、微生物細胞が粒界に存在すると解釈された。微生物細胞を伴う粒界の鉱物相を特定するために、エネルギー分散型X線分光装置付属の走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)による分析を行った結果、鉱物相はアルミニウムと三価鉄と共にカリウムまたはカルシウムを含む珪酸塩鉱物であると分かった。アルミニウム、カリウム、三価鉄が含まれている鉱物相は、深度814 mの輝岩の先行研究で金雲母と特定されており(Kido et al., 2026)、深度1860 mにおいても金雲母が微生物と関連している可能性が高い。一方、微生物と共存するアルミニウム、カルシウム、三価鉄を含む珪酸塩鉱物は、SEM-EDSから推定される化学組成によって角閃石また単斜輝石と絞られたが、同定には至っていない。角閃石はOH基を有する含水鉱物に対し、単斜輝石はOH基を持たないため、OH基の有無を明らかにできる局所分析手法(例えばに顕微ラマン分光法)によりどちらの鉱物相が特定できる。また、珪酸塩鉱物の結晶構造に固有のスペクトルが取得可能なアルミニウムのK端のXANESを取得することで、微生物と共存する珪酸塩鉱物相を同定し、その結果について議論する。
本研究の対象である南アフリカのBushveld複合岩体は、約20億年前にKaapvaal地塊へ貫入した世界最大級の層状貫入岩体であり、その下部は超苦鉄質から苦鉄質の組成を示す火成集積岩から成る。国際陸上科学掘削計画(ICDP)において地上から掘削された深度814 mの輝岩に関する先行研究では、岩石内で微生物は三価鉄を含む金雲母粒子の縁に分布すると報告されている(Kido et al., 2026)。鉱物内の電子受容体に依存した微生物生態系がさらに深い岩石中でも同様に形成するのか検証することを目的とした。
本研究では、Bushveld複合岩体のICDPで微生物用試料として得られた最深の超苦鉄質岩試料(深度1860 m)を用いた。掘削時の微生物の汚染についてはSuzuki et al. (2024)が掘削開始時の深度15 mの苦鉄質の岩石試料で確立した手法で評価した。その手法では掘削流体に微生物大の蛍光ビーズを添加し、掘削後に得られた岩石試料の内部に蛍光ビーズが浸透したかを可視化することで汚染を評価しており、深度1860 mの試料に適用した結果、岩石内部の汚染はないと判明した。
岩石組織の特徴を調べるために樹脂埋めした試料の薄片を偏光顕微鏡観察した結果、約1 mm程度の粒径の輝石が集積しており、輝石の粒界には異なる鉱物相がみられた。鉱物相を同定するために粉末X線回折法(XRD)で解析した結果、斜方輝石と単斜輝石のピークが主体であった。深度814 mの輝岩中では、斜方輝石の粒界に三価鉄を含む金雲母と微生物の分布が見られた。そのため、本試料の輝石の粒界で見られた鉱物相が三価鉄を含むか調べるために、大気非暴露条件下でダイヤモンドワイヤーソーを用いて岩石切片を作製し、Spring-8の硬X線ビームラインであるBL36XUの走査型蛍光X線顕微鏡(SFXM)を用いて同様に大気非暴露条件下で鉄のK端のX線吸収端近傍構造(XANES)分析を行った。並行してマイクロ蛍光X線(μ-XRF)分析によるマッピングを行った結果、カリウムやカルシウムが濃集している粒界に三価鉄が共存していることが判明した。その三価鉄が共存する粒界において、SPring-8の軟X線ビームラインであるBL17SUとNanoTerasuのBL13UのSFXMによる分析を行った。炭素、窒素、リン、硫黄のμ-XRFマッピングの結果、三価鉄が共存する粒界にこれらの元素の全てが濃集していた。その粒界から窒素のK端のXANES分析を行い、無機物と有機物の試薬と培養した微生物細胞の標準から得られたXANESスペクトルと比較した。その結果、粒界から微生物細胞のスペクトル同様のスペクトルが得られたため、微生物細胞が粒界に存在すると解釈された。微生物細胞を伴う粒界の鉱物相を特定するために、エネルギー分散型X線分光装置付属の走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)による分析を行った結果、鉱物相はアルミニウムと三価鉄と共にカリウムまたはカルシウムを含む珪酸塩鉱物であると分かった。アルミニウム、カリウム、三価鉄が含まれている鉱物相は、深度814 mの輝岩の先行研究で金雲母と特定されており(Kido et al., 2026)、深度1860 mにおいても金雲母が微生物と関連している可能性が高い。一方、微生物と共存するアルミニウム、カルシウム、三価鉄を含む珪酸塩鉱物は、SEM-EDSから推定される化学組成によって角閃石また単斜輝石と絞られたが、同定には至っていない。角閃石はOH基を有する含水鉱物に対し、単斜輝石はOH基を持たないため、OH基の有無を明らかにできる局所分析手法(例えばに顕微ラマン分光法)によりどちらの鉱物相が特定できる。また、珪酸塩鉱物の結晶構造に固有のスペクトルが取得可能なアルミニウムのK端のXANESを取得することで、微生物と共存する珪酸塩鉱物相を同定し、その結果について議論する。
