講演情報
[R4P-01]金魚 (Carassius auratus) およびメダカ(Oryzias latipes)耳石中心部の微細構造
*髙橋 玄1、小暮 敏博1、鈴木 道生2、奥村 大河1 (1. 早大・教育、2. 東大・院農)
キーワード:
バイオミネラル、炭酸カルシウム、結晶多形、vaterite、TEM
魚類の内耳に形成される耳石は炭酸カルシウム(CaCO₃)からなる生体鉱物であり、体の傾き、加速度、音の知覚に関与する。一般的な硬骨魚類には礫石、扁平石、星状石と呼ばれる3種類の耳石があり、礫石と扁平石はaragonite、星状石はvateriteからなる。このようにCaCO3多形が選択的に形成されることは硬骨魚類に広く共通する特徴であるが、その選択機構は十分に明らかになっていない。本研究では、金魚(Carassius auratus)およびメダカ(Oryzias latipes)の稚魚耳石を採取し、結晶成長の起点となる耳石中心部の構造および化学組成を、主に透過電子顕微鏡法によって解析・比較した。
試料として、金魚およびメダカの稚魚から直径20–50 μm程度の礫石、扁平石、星状石を採取し、集束イオンビーム装置によって中心部を含む薄膜試料を作製した。透過電子顕微鏡によって観察した結果、両種の礫石と扁平石の中心部には、複数の球状calciteが凝集した構造が見られ、その周囲からは微細なaragoniteが成長していた(図1 ,2)。これに対して、星状石の中心部では両種ともに、電子密度の低い物質(おそらく有機物)と複雑に入り組んだvateriteが認められた(図3 ,4)。また、このvateriteは周囲に成長する結晶と概ね同じ方位をもち、一つのモザイク状結晶として連続的に成長していた。さらに、走査透過電子顕微鏡に装着したエネルギー分散型X線検出器によって元素分布を調べたところ、礫石と扁平石では、球状calciteにMnとMgが濃集し、その周囲にFが局在していた。一方、星状石ではMnやMgの濃集は確認できず、Fの局在が金魚星状石の中心部でのみ認められた。
以上の結果から、aragoniteからなる礫石・扁平石とvateriteからなる星状石の間では中心部の構造と化学組成は大きく異なっていた。一方、金魚とメダカの間で耳石中心部の基本的な構造に大きな違いはなく、結晶サイズや元素分布に一部の差異が認められるにとどまった。したがって、硬骨魚類の耳石中心部には、CaCO3多形に対応した異なる初期構造が存在することが示された。これらの中心部構造の違いは、耳石形成初期における結晶成長開始位置の制御や、CaCO3多形の選択に関係している可能性がある。
試料として、金魚およびメダカの稚魚から直径20–50 μm程度の礫石、扁平石、星状石を採取し、集束イオンビーム装置によって中心部を含む薄膜試料を作製した。透過電子顕微鏡によって観察した結果、両種の礫石と扁平石の中心部には、複数の球状calciteが凝集した構造が見られ、その周囲からは微細なaragoniteが成長していた(図1 ,2)。これに対して、星状石の中心部では両種ともに、電子密度の低い物質(おそらく有機物)と複雑に入り組んだvateriteが認められた(図3 ,4)。また、このvateriteは周囲に成長する結晶と概ね同じ方位をもち、一つのモザイク状結晶として連続的に成長していた。さらに、走査透過電子顕微鏡に装着したエネルギー分散型X線検出器によって元素分布を調べたところ、礫石と扁平石では、球状calciteにMnとMgが濃集し、その周囲にFが局在していた。一方、星状石ではMnやMgの濃集は確認できず、Fの局在が金魚星状石の中心部でのみ認められた。
以上の結果から、aragoniteからなる礫石・扁平石とvateriteからなる星状石の間では中心部の構造と化学組成は大きく異なっていた。一方、金魚とメダカの間で耳石中心部の基本的な構造に大きな違いはなく、結晶サイズや元素分布に一部の差異が認められるにとどまった。したがって、硬骨魚類の耳石中心部には、CaCO3多形に対応した異なる初期構造が存在することが示された。これらの中心部構造の違いは、耳石形成初期における結晶成長開始位置の制御や、CaCO3多形の選択に関係している可能性がある。

