講演情報
[R5-15]プレソーラー珪酸塩の鉱物学的多様性とその形成, 進化過程
*橋爪 宏幸1、瀧川 晶1 (1. 東京大学・院地惑)
キーワード:
プレソーラー粒子、星周ダスト、珪酸塩、透過型電子顕微鏡、AGB星
プレソーラー粒子は, 始原的隕石や彗星塵中に保存された星周ダストの生き残りと推定されている. これらは恒星周囲におけるダストの形成, 進化について直接分析が可能な唯一の試料である[1]. 天文観測や星周モデルによると, 酸素に富む漸近巨星分枝(AGB)星の星周ダストは, 主に非晶質珪酸塩, コランダム, および準安定(遷移または非晶質)アルミナなどの多様な鉱物相から構成されていることが示唆されている[2]. 一方, 透過型電子顕微鏡(TEM)で微細構造分析されたプレソーラー珪酸塩のほぼ半数は結晶質でマグネシウムに富むのに対し, 非晶質粒子は幅広い組成を示す[3]. アルミニウムに富む酸化物については, 星周ダストとしてコランダムと準安定アルミナが主な鉱物相であると推定されている一方, プレソーラー酸化物はコランダムとスピネルが主体となっている[4]. これらの観測結果から, 星周ダストとプレソーラー粒子の鉱物相や化学組成の違いは, ガス相からの凝縮後のダストの進化を反映している可能性が示唆されている[5]. 本研究ではプレソーラー珪酸塩の鉱物相および化学組成の多様性に着目し,その形成・進化過程を明らかにすることを目的とし, 隕石マトリクスの同位体分析および同定したプレソーラー珪酸塩のTEMによる微細構造分析をおこなった.
炭素質コンドライトDominion range (DOM) 08006 (CO3.0) 薄片を用い, プレソーラー粒子存在度が高いと期待される, 空隙が少なく粒界のはっきりしないマトリクス領域について[5], CAMECA NanoSIMS50L (ARIM)を用いて同位体測定をおこなった. 1辺10 μmの領域にCs+ビーム(〜0.9 pA)を照射し二次イオン(12C-, 13C-, 16O-, 17O-, 18O-, 28Si-, 27Al16O-)像を同時に取得した. ピクセルごとに酸素同位体比(17O/16Oまたは18O/16O)を計算し, 太陽系物質と有意に異なる(ポアソン分布での4σ以上)ものをプレソーラー粒子とした. 同定したプレソーラ粒子のうちのいくつかを集束イオンビーム(FIB)法により切り出し(FEI Versa3D Dualbeam, TF Helios5 Dualbeam, 東京大学), TEM (JEOL JEM-2800, 東京大学)を用いて結晶構造と化学組成を分析した.
マトリクス領域 19,670 μm² に対する同位体分析の結果, 8個のプレソーラー酸化物および71個のプレソーラー珪酸塩 (Group E1が1個, Group 1が58個, Group 3が11個, Group 4が9個) を同定した. TEM解析した5粒子のうち1粒子(AREA06_20_Si_PG47)はGroup 3(低質量, 低金属量AGB星起源)に分類される, Mg/(Mg+Fe) ~ 0.9の約1400 nmの単結晶olivineであった. これはGroup 3に分類されるプレソーラー珪酸塩の, 隕石のその場分析による初めてのTEMの解析例である. 残る4粒子はいずれもGroup 1(低質量AGB星起源)に分類され,うち3粒子はMg/(Mg+Fe) > 0.7のolivineであった. 1粒子(LCM01b_Si_PG07)はFeに富みCaを含む, (Mg0.50Fe0.83Ca0.28)Al0.09SiO3.75の組成をもつ非晶質珪酸塩であった. 本粒子はFeおよびCaに富む一方でAlに乏しい組成を示した. CaはAlと同様に難揮発性元素であることから, FeおよびCaの同時濃集とAlの欠乏を単一の凝縮過程のみで説明することは容易ではなく,現在の組成はCaを含む珪酸塩の形成後にFeの取り込みを伴う化学変化など,複数段階の形成, 進化プロセスの可能性を示唆する. 発表では他の粒子のTEM解析結果も含め, プレソーラー珪酸塩の鉱物相・化学組成の多様性を比較し, その形成・進化過程との関係について議論する.
[1] Nittler, L. R. and Ciesla F. (2016) ARAA 54, 53., [2] Takigawa, A., et al. (2019) ApJL 878, L7., [3] Seifert et al. (2022) MAPS 57, 1119., [4] Takigawa, A., et al. (2014) GCA 124, 309., [5] Hashizume, H. (2026) M.Sc. thesis, U-Tokyo.
炭素質コンドライトDominion range (DOM) 08006 (CO3.0) 薄片を用い, プレソーラー粒子存在度が高いと期待される, 空隙が少なく粒界のはっきりしないマトリクス領域について[5], CAMECA NanoSIMS50L (ARIM)を用いて同位体測定をおこなった. 1辺10 μmの領域にCs+ビーム(〜0.9 pA)を照射し二次イオン(12C-, 13C-, 16O-, 17O-, 18O-, 28Si-, 27Al16O-)像を同時に取得した. ピクセルごとに酸素同位体比(17O/16Oまたは18O/16O)を計算し, 太陽系物質と有意に異なる(ポアソン分布での4σ以上)ものをプレソーラー粒子とした. 同定したプレソーラ粒子のうちのいくつかを集束イオンビーム(FIB)法により切り出し(FEI Versa3D Dualbeam, TF Helios5 Dualbeam, 東京大学), TEM (JEOL JEM-2800, 東京大学)を用いて結晶構造と化学組成を分析した.
マトリクス領域 19,670 μm² に対する同位体分析の結果, 8個のプレソーラー酸化物および71個のプレソーラー珪酸塩 (Group E1が1個, Group 1が58個, Group 3が11個, Group 4が9個) を同定した. TEM解析した5粒子のうち1粒子(AREA06_20_Si_PG47)はGroup 3(低質量, 低金属量AGB星起源)に分類される, Mg/(Mg+Fe) ~ 0.9の約1400 nmの単結晶olivineであった. これはGroup 3に分類されるプレソーラー珪酸塩の, 隕石のその場分析による初めてのTEMの解析例である. 残る4粒子はいずれもGroup 1(低質量AGB星起源)に分類され,うち3粒子はMg/(Mg+Fe) > 0.7のolivineであった. 1粒子(LCM01b_Si_PG07)はFeに富みCaを含む, (Mg0.50Fe0.83Ca0.28)Al0.09SiO3.75の組成をもつ非晶質珪酸塩であった. 本粒子はFeおよびCaに富む一方でAlに乏しい組成を示した. CaはAlと同様に難揮発性元素であることから, FeおよびCaの同時濃集とAlの欠乏を単一の凝縮過程のみで説明することは容易ではなく,現在の組成はCaを含む珪酸塩の形成後にFeの取り込みを伴う化学変化など,複数段階の形成, 進化プロセスの可能性を示唆する. 発表では他の粒子のTEM解析結果も含め, プレソーラー珪酸塩の鉱物相・化学組成の多様性を比較し, その形成・進化過程との関係について議論する.
[1] Nittler, L. R. and Ciesla F. (2016) ARAA 54, 53., [2] Takigawa, A., et al. (2019) ApJL 878, L7., [3] Seifert et al. (2022) MAPS 57, 1119., [4] Takigawa, A., et al. (2014) GCA 124, 309., [5] Hashizume, H. (2026) M.Sc. thesis, U-Tokyo.
