講演情報

[R5-17]CP AMMsに含まれるGEMSの化学組成と珪酸塩鉱物に残された太陽フレアトラックとの関係

*野口 高明1、松本 里佳子2,3、高瀬 美菜子2,4、富永 崇仁2,5、光成 拓也6,7、大橋 憲昭6,8、北村 悠樹1,9、山口 亮10 (1. 京都大学、2. 九州大学、3. 伊根町役場、4. 福岡市科学館、5. 貝印株式会社、6. 茨城大学、7. 三菱電気ソフトウエア株式会社、8. NECネッツエスアイ株式会社、9. 日本分光株式会社、10. 国立極地研究所)

キーワード:

CP AMMs、GEMS、太陽フレアトラック

成層圏で回収されるchondritic porous (CP) IDPsは,sub-µmのlow-Ca pyroxene,olivine,pyrrhotite,GEMS(Glass with embedded metal and sulfide)を豊富に含む [1]。南極の雪にはCP IDPsが地表に到達したCP Antarctic micrometeorites(CP AMMs)が含まれる [2]。CP IDPsは高いプレソーラー粒子数密度(>数百ppm)や,低温領域で形成された有機物に起因するδDやδ15Nのホットスポットを持つことから,彗星起源の塵または,低温のため水質変成が起きなかった小惑星起源の塵と考えられている[1]。
CP IDPsは約5〜15µmしかなく,主要構成物質の鉱物学的特徴や化学組成について十分なデータがあるとはいえない。このような状況で,GEMSの起源(e.g., [3, 4])や,弱い熱変成・水質変成作用を受けたコンドライトが含むGEMS様非晶質珪酸塩とGEMSの関係(e.g., [5], [6])が議論されている。
そこで,我々は多数のCP AMMsを分析し,上記の問題を解決することにした。大気圏突入時に顕著な加熱を受けたCP AMMsは測定せず,約30個のCP AMMs(2個のクラスターIDPsを含む)についてTEM観察・分析を行った。試料観察・分析はFEI Tecnai F20、金属鉄を含むGEMSの確認にはJEOL ARM-200Fを用いた。2000以上の分析値から得たGEMSのSi-Mg-Fe元素比から,2つのことが明らかになった。ひとつは,かなり均質な組成を持つMg-rich GEMSのみを含むCP AMMsが存在することである。GEMSの大多数は,Mg-rich GEMSより様々な程度にMgが欠乏している。以下,この大多数を占めるGEMSのことをMg-poor GEMSと呼ぶ。そして,CP AMMs/IDPsは,Mg-rich GEMSを多く含むものとMg-poor GEMSを多く含むものの2群に分かれる。
Mgの欠乏の原因として宇宙線照射が挙げられる [7]。宇宙線照射ではSiに比べてMg, S, Ca, Feが欠乏する。しかし,Mg-poor GEMSでSiに対してSは明らかに欠乏しておらず,照射がMg欠乏の原因とは考えにくい。また,Mg-poor GEMSを多く含むCP AMMsでは,olivineやlow-Ca pyroxeneが>1010本/cm2の太陽フレアトラックを含む。この数密度は月レゴリスで約25万年の曝露期間に相当する[8]。すなわち,Mg-poor GEMSを多く含むCP AMMsは,太陽活動に長期間曝露され地球に到達したことを示す。このことは,太陽から遠い天体から放出された塵がMg-poor GEMSを多く含むことを示唆する。一方,Mg-rich GEMSを多く含むCP AMMsにはトラックはほぼ見出されず,短い曝露期間で地球に到達したと考えられる。
JWSTやSSTによる原始惑星系円盤の観測は,円盤の中間領域に非晶質珪酸塩が多く,円盤外縁部に結晶質珪酸塩が多いことを示している。これは,結晶質塵が原始星近傍で形成され,円盤外縁に運搬されたことを示唆する [9]。原始太陽系円盤でも同様のことが起き,かつ,Mg-rich GEMSが星間塵であると仮定すると,上述の結果は以下のように解釈できる。(1)原始太陽にガスと共に落下していったMg-rich GEMSが原始太陽近傍で部分的に結晶化しolivineを晶出しMg-poor GEMSとなった。(2)両者の一部は原始星のアウトフロー等によって原始太陽系外縁部に運搬され,揮発性物質の氷や低温領域で形成された有機物等の太陽系外縁部の物質とともに集積し太陽系外縁天体を形成した。(3)太陽系外縁天体やそれらを起源とする天体である短周期彗星から放出された塵は長期間太陽活動に曝露されて地球に到達した。
References[1]Bradley 2012 In Treat. on Geochem., Vol. 1, 287. [2]Noguchi+ 2015 EPSL 410, 1. [3]Keller & Messenger 2011 GCA 75, 5336. [4] Bradley+ 2022 GCA 335, 323. [5]Nittler+ 2019 Nat. Astron. 3, 659. [6]Ohtaki+ 2023 GCA 310, 320. [7]Jäger+ 2016 ApJ 831 66. [8] Keller+ 2022 MAPS 56, 1685. [9]Sameshima+ 2026 MNRAS 548, 1.