講演情報

[R5-19]ドミスタインベルグ石からアノーサイトへの相転移実験:CAIの熱史の制約に向けて

*鶴岡 靖朗1、橘 省吾1 (1. 東京大・院理)

キーワード:

難揮発性包有物、多形、相転移、熱史、原始太陽系円盤

隕石中の難揮発性包有物 (CAI) は,原始太陽系円盤で形成された最古の物質であり,原始太陽系円盤の初期進化の過程が記録されている.タイプB CAIは主にスピネル,メリライト,輝石,アノーサイトからなる火成組織を示し,溶融・結晶化を経験したと考えられている [e.g., 1].安定相のアノーサイトと同じ組成 (CaAl2Si2O8) を持つ準安定な多形の一つとしてドミスタインベルグ石が知られており,火成及び水質変成により形成されたドミスタインベルグ石が一部の天然CAIからも見つかっている [e.g., 2, 3].また,ドミスタインベルグ石はCaAl2Si2O8組成に富むメルトやCAI組成メルトから結晶化することも確認されており [4, 5, 6],ドミスタインベルグ石からアノーサイトへの相転移条件を決定することでCAIの熱史に制約を与えられる可能性がある.しかし,ドミスタインベルグ石の安定性を検証した先行研究 [7, 8] では,CAIメルト中のCaAl2Si2O8のリキダス (~1260°C [1]) に近い高温での長時間の加熱は行われておらず,アノーサイトへの溶融を伴わない相転移について十分に理解されていない.本研究では,ドミスタインベルグ石の加熱実験を行い,アノーサイトへの相転移条件とCAIの熱史について議論した.
ドミスタインベルグ石の加熱実験をマッフル炉を用いて大気圧下で行った.天然のドミスタインベルグ石(東京大学総合研究博物館)をめのう乳鉢で粉末にしたものを出発物質とした.出発物質3–5 mgを白金皿に入れ,1000, 1100, 1200°Cで15時間加熱した.出発物質と実験後の試料について,X線回折装置 (XRD) を用いて,相同定を行った.
出発物質にはドミスタインベルグ石とワイラカイト (CaAl2Si4O12•2H2O) が含まれていたが (図1),ワイラカイトは微量であり,実験には大きく影響しないと考えられる.1000°Cで15時間加熱した試料のXRDスペクトルにはドミスタインベルグ石とアノーサイトのピークが見られ,ドミスタインベルグ石の一部がアノーサイトに相転移したと考えられる.一方,1100°Cと1200°Cで15時間加熱した試料ではアノーサイトのピークのみが見られ,ドミスタインベルグ石が全て相転移したと考えられる.
本実験で相転移が確認された1000–1200°Cは,タイプB CAIの冷却速度が低速 (~0.1–0.5°C hr–1 [9]) であったと制約されているほか,CAIの周囲に形成されるWark-Lovering rimやaccretionary rimに含まれるフォルステライト (Mg2SiO4) の凝縮温度 (~1050–1200°C [10]) と同程度であり,タイプB CAI形成場の背景温度に近いと考えられる.そのため,タイプB CAIの冷却過程で,メルトからドミスタインベルグ石が結晶化しても,CAI形成場の滞在中にアノーサイトへの相転移が起こる可能性が高い.一方,火成のドミスタインベルグ石を含むCAI [2] は,背景温度の低い領域で加熱を経験した可能性が考えられる.
今回,1000°C以上での長時間の加熱によりドミスタインベルグ石からアノーサイトへの相転移が生じることを明らかにした.今後は,温度・時間を系統的に変化させた実験を行い,相転移条件を決定することで,原始太陽系円盤でのCAIの熱史の制約を目指す.

[1] Stolper, E. (1982) GCA 46, 2159–2180. [2] Ma, C. et al. (2013) Am. Min. 98, 1368–1371. [3] Fintor, K. et al. (2014) MaPS 49, 812–823. [4] Abe, T. et al. (1991) Phys. Chem. Miner. 17, 473–484. [5] Abe, T. & Sunagawa, I. (1995) Mineral. Jour. 17, 257–281. [6] Tsuruoka, Y. et al. under review. [7] Borglum, B. P. et al. (1993) J. Am. Ceram. Soc. 76, 1354–1356. [8] Gorelova, L. A. et al. (2023) GSF 14, 101458. [9] Yamamoto, D. et al. (2021) GCA 314, 108–120. [10] Ebel, D. S. (2006) In Meteorites and the early solar system II, pp. 253–277.