講演情報

[R5P-06]Allende隕石中の暗色包有物に見られる鉱物粒子のEBSD解析

*藤田 智也1、小島 知子2、瀬戸 雄介3 (1. 東北大・院理、2. 熊本大・院理、3. 大阪公立大・院理)

キーワード:

Allende隕石、暗色包有物、EBSD

岩石学的に最も始原的とされるAllende CV3コンドライトには主にFeに富むカンラン石微粒子からなるゼノリスが含まれており,暗色包有物と呼ばれている。暗色包有物中にはコンドリュールに類似した球状の物体が含まれるが,これらもFeに富むカンラン石微粒子で構成されており,Allende母岩中のコンドリュールとは組成,組織が明らかに異なる。Kurat et al. (1989) はこの球状の集合体について,Allende 母岩のマトリックス同様にFeに富むカンラン石微粒子で構成されていることから,太陽系星雲ガスから凝縮してきた始原的な粒子が凝集したものと解釈した。一方,Kojima and Tomeoka(1996)は,脈状組織など,暗色包有物が母天体上で水質変成を経験した証拠を示し,暗色包有物は強い水質変成の後に熱変成を受けたものであり,球状集合体は変成したコンドリュールの仮像であるとした。この解釈では,Feに富むカンラン石微粒子は,水質変成により生成した層状ケイ酸塩がその後の熱変成により脱水,相転移したものとされる。この仮説はCV3コンドライトの始原性に一石を投じ,現在広く受け入れられているものの,直接支持するような証拠はまだ示されていない。本研究では,Allende隕石中の暗色包有物に見られる鉱物粒子の結晶学的方位を電子線後方散乱回折法(EBSD法)を用いて解析し,Kojima and Tomeoka (1996) の解釈について検討した。EBSD法とは,SEMを用いて試料表面の各測定点における結晶学的方位を定量的に測定し,マッピングできる手法であり,微粒子の結晶方位を評価するのに有効である。調べた暗色包有物にはFeに富むカンラン石微粒子でできた球状集合体が多数見られ,そのうちの一部には,比較的粗粒(〜300µm)でMg に富むカンラン石粒子が複数個含まれていた。そのような集合体をEBSDで分析したところ,比較的粗粒なカンラン石はいずれも同じ結晶学的方位を示し,その周囲に位置するFeに富むカンラン石微粒子も一部,同じ結晶学的方位を示すものがあった。このことは,球状集合体に含まれる複数の比較的粗粒なカンラン石は,コンドリュールの斑晶が割れ目に沿って変成し,細分化された残存物質であることを示唆する。さらに,これらの残存物質の周囲に存在する一部のカンラン石微粒子も同じ結晶学的方位を示すことから,それらは斑晶から結晶学的方位を部分的に保持しつつ,交代変成したものと考えられる。このような残存物質を含む球状集合体の存在は,Kojima and Tomeoka (1996) の解釈を支持するものであり,暗色包有物中の球状集合体がコンドリュールの仮像であることを裏付ける。一方,別の球状集合体では,ほとんどがFeに富むカンラン石微粒子で構成されており,比較的ランダムな結晶学的方位を示した。このような球状集合体は,残存物質を含むものに比べて変成が進み,コンドリュールの斑晶が全て層状ケイ酸塩に置き換えられたうえに結晶学的方位が保たれなかったものと考えられる。さらに,暗色包有物に隣接する母岩部分に見られるコンドリュールを調べたところ,暗色包有物中の球状集合体と同様に,ランダムな結晶学的方位を示すカンラン石微粒子で構成されていた。このようなコンドリュールは,暗色包有物中の球状集合体と同様の過程を経たと考えられ,Allende母岩中でも水質変成とその後の熱変成があったことを示唆している。