講演情報

[R6P-07]インド ダールワールクラトンに産する先カンブリア時代苦鉄質岩脈の記載岩石学的特徴とテクトニック意義

*伊藤 祐紀1、AMMINI SASIDHARAN SILPA1 (1. 島根大学)

キーワード:

インドダルワールクラトン、先カンブリア、苦鉄質岩脈、鉱物化学

インド南部のダルワールクラトン(Dharwar Craton)は始生代や原生代の地質記録がよく保存されていることで知られている。先カンブリア時代の地殻進化の広範な記録を保持しており、複数回にわたるマグマ活動、変形作用、および変成作用の履歴によって特徴づけられる[1, 2]。ダールワールクラトンは、西ダールワールクラトン(WDC)、中央ダールワール地域(CDP)、および東ダールワール地域(EDP)に区分される。CDPは、3 Ga超の古い地殻からなるWDCと、2.7 Ga以前の地殻を欠くEDPとの間に発達した遷移帯として位置づけられる[3]。ダールワールクラトンの基盤は、トーナル岩–トロニエム岩–花崗閃緑岩(TTG)質片麻岩およびグリーンストーン帯から構成され、これらには太古代末期から原生代初期にかけての苦鉄質岩脈群と、後期原生代の花崗岩類が貫入している。WDCには、後期始生代の苦鉄質岩脈が産しており、これらはダルワールクラトンの前期原生代の大規模な火成活動やテクトニクスを解明する上で重要である。そのため、本研究では、ダールワールクラトンに産する先カンブリア時代の苦鉄質岩脈を対象として、岩石学的・鉱物学的特徴を明らかにするとともに、そのマグマ供給源、マグマ活動史、およびテクトニックな意義について検討する。ダールワールクラトンに分布する苦鉄質岩脈は主にドレライト岩脈とメタドレライト岩脈に区分される[4]。特にメタドレライト岩脈は、太古代末期から原生代初期にかけての地殻伸張およびマントル由来マグマ活動を記録する重要な地質指標である。

詳細な岩石学的および鉱物学的観察の結果、ダールワールクラトンに産するドレライト岩脈は主としてポイキリティック組織またはオフィティック組織を示すことが明らかとなった。ポイキリティック組織を示す試料は、長径2.5–3.0 mmの単斜輝石および斜方輝石、直径0.2–0.7 mmの円形~亜角礫状のかんらん石、斜長石および不透明鉱物から構成される。一方、サブオフィティック~グラノフィリック組織を示すドレライトは、長柱状の斜長石と輝石を主体とし、不透明鉱物を伴う。メタドレライト岩脈では、長径0.5–2.0 mmの輝石を取り囲むように針状の角閃石が発達し、結晶境界の不明瞭な斜長石とともにオフィティック組織の残存が認められる。また、不透明鉱物が普遍的に観察される。さらに、一部の試料ではグラノフィリック組織を示す板状斜長石が発達し、曹長石双晶を有する斜長石、単斜輝石および角閃石を主要構成鉱物として含む。変成再結晶作用を広く被っているにもかかわらず、斜長石と輝石の間にみられるオフィティック~サブオフィティック組織などの初生火成組織が局所的に良好に保存されている。これらの岩脈に保存された鉱物学的特徴は、インド楯状地の先カンブリア時代における形成・安定化過程を支配した地球動力学的プロセスの解明に重要な情報を提供する。さらに、その産状および岩石学的特徴は、クラトン内部の伸張場の発達、マントル部分溶融、および苦鉄質マグマの貫入が地殻の成長・改変に重要な役割を果たしたことを示唆する。また、苦鉄質岩脈は古テクトノマグマ活動を記録する重要な地質学的証拠であり、ダールワールクラトンの先カンブリア時代の進化史を復元するうえで重要な役割を担う。
参考文献: [1] Srivastava e al., 2015, International Geology Review, 57(11-12), 1462-1484. [2] French, J. E., & Heaman, L. M. 2010, Precambrian Research, 183(3), 416-441. [3] Peucat et al., 2013, Precambrian Research, 227, 4-28. [4] Silpa et al., 2023, Frontiers in Earth Science, 11, 1153003.