講演情報
[R7-03]海洋コアコンプレックス斑れい岩に含まれるかんらん石の変形組織とシンプレクタイト包有物の観察
*小倉 正義1、伊神 洋平1、三宅 亮1、野坂 俊夫2 (1. 京都大、2. 岡山大)
キーワード:
かんらん石、包有物、EBSD、斑れい岩、変形組織
【はじめに】
かんらん石中のシンプレクタイト包有物は、地球のほか月や火星隕石など様々な産地から報告され、その特徴に基づき母相のかんらん石の熱履歴や、流体活動、変形の履歴などが議論されている(Khisina et al., 2013、Basch et al., 2021など)。
西村・野坂(2022)は海洋コアコンプレックスのAtlantis Bank(以下A. Bank)とAtlantis Massif(以下A. Massif)で得られた斑れい岩中のかんらん石から、ディオプサイド(Di)、磁鉄鉱(Mgt)、チタン鉄鉱(Ilm)からなるシンプレクタイト包有物を報告した。ここで、A. Bankはメルトの上方への輸送に伴う強い結晶塑性変形を受けているのに対し、A. Massifはメルトの輸送が限定的で、あまり結晶塑性変形を受けていない(Dick et al., 2019)。このような変形作用は包有物の生成に関わっていると考えられるが、かんらん石の変形度合いと包有物の形成に関する十分な研究は行われていない。そのため本研究では、後方散乱電子回折(electron backscatter diffraction;EBSD)マッピングを用いてかんらん石の変形と包有物の関係を調べた。
【手法】
本研究ではA. Bankで得られた試料の薄片(U1473A30R-3)とA. Massifで得られた試料の薄片(U1309D277R-3)を用いた。A. Bankの薄片には、包有物が含まれているかんらん石と、含まれていないかんらん石が存在しており、A. Massifの薄片には、包有物が含まれているかんらん石のみ存在していた。それぞれの試料に対してかんらん石の亜粒界と包有物の関係を明らかにするため、各かんらん石粒子全体のEBSDマッピングを約5 μm 間隔で行った。また、かんらん石と包有物の方位関係を明らかにするため、より高分解能でのマッピングも行った。
走査型電子顕微鏡(SEM)はThermo Fischer scientific, Helios NanoLab G3 CXを、EBSDにはOxford Instruments, Nordlys, HKL Channel 5を用いた。SEMのビーム条件は加速電圧15 kV、照射電流1.4 nAで行った。取得したEBSDパターンはEMsoft(Singh et al., 2017)とkikuchipy(Ånes et al., 2026)を用いてDictionary Index法(De Graef, 2019)により指数付けした。指数付けが完了したデータをOxford Instruments, AZtecCrystalで組織解析した。特に、隣接ピクセル間で1°以上の角度差を持つ境界を亜粒界と推定して可視化した。また、Weighted Burgers Vector (WBV, Wheeler et al., 2009)マップも作成した。かんらん石と各包有物構成鉱物の結晶方位は極点図上にプロットして方位関係を決定した。
【結果・考察】
A. Bankの薄片では、MgtとDiからなる包有物とMgtかIlmのみの包有物が存在し、方位関係は、[001]ol // [010]Di // <110>Mgt、(100)ol // {111}Mgtであった。A. Massifの薄片では、MgtとDi、Ilmで構成された包有物とチタン鉄鉱のみの包有物が存在した。包有物とかんらん石の方位関係は、[001]ol or <011>ol // [010]Di // <110>Mgt // <100>Ilm、(100)ol // {111}Mgt // (001)Ilmであった。先行研究(Khisina et al., 2013)と比較すると、かんらん石-Mgt間の方位関係は一致するが、カンラン石-Di間の関係は一致しない。いずれにせよ、特定の方位関係があることは包有物形成の際にかんらん石との界面の影響を受けていたことを示唆する。
A. Bankの薄片では、包有物が存在する場合は包有物と平行に亜粒界が多く認められ、包有物は亜粒界上に存在した。WBV解析によるとこれらの亜粒界を構成する転位のバーガースベクトルは[100]olである。一方、包有物が存在しない場合は亜粒界もほとんど認められなかった。また、A. Massifの薄片では、本EBSD測定で明瞭に定義できた亜粒界は少なく、かんらん石はより連続的な方位変化を示した。
A. Bankの薄片で亜粒界上に包有物が存在することは、A. Bankで起こったメルトの上方への輸送やそれと関連した変形が包有物の形成と関連する可能性を示す。一方、A. Massifで得られた試料では変形とは無関係にかんらん石中に存在する包有物が多く見られる。それゆえ、A. BankとA. Massifで包有物の形成過程が異なっていた可能性がある。
かんらん石中のシンプレクタイト包有物は、地球のほか月や火星隕石など様々な産地から報告され、その特徴に基づき母相のかんらん石の熱履歴や、流体活動、変形の履歴などが議論されている(Khisina et al., 2013、Basch et al., 2021など)。
西村・野坂(2022)は海洋コアコンプレックスのAtlantis Bank(以下A. Bank)とAtlantis Massif(以下A. Massif)で得られた斑れい岩中のかんらん石から、ディオプサイド(Di)、磁鉄鉱(Mgt)、チタン鉄鉱(Ilm)からなるシンプレクタイト包有物を報告した。ここで、A. Bankはメルトの上方への輸送に伴う強い結晶塑性変形を受けているのに対し、A. Massifはメルトの輸送が限定的で、あまり結晶塑性変形を受けていない(Dick et al., 2019)。このような変形作用は包有物の生成に関わっていると考えられるが、かんらん石の変形度合いと包有物の形成に関する十分な研究は行われていない。そのため本研究では、後方散乱電子回折(electron backscatter diffraction;EBSD)マッピングを用いてかんらん石の変形と包有物の関係を調べた。
【手法】
本研究ではA. Bankで得られた試料の薄片(U1473A30R-3)とA. Massifで得られた試料の薄片(U1309D277R-3)を用いた。A. Bankの薄片には、包有物が含まれているかんらん石と、含まれていないかんらん石が存在しており、A. Massifの薄片には、包有物が含まれているかんらん石のみ存在していた。それぞれの試料に対してかんらん石の亜粒界と包有物の関係を明らかにするため、各かんらん石粒子全体のEBSDマッピングを約5 μm 間隔で行った。また、かんらん石と包有物の方位関係を明らかにするため、より高分解能でのマッピングも行った。
走査型電子顕微鏡(SEM)はThermo Fischer scientific, Helios NanoLab G3 CXを、EBSDにはOxford Instruments, Nordlys, HKL Channel 5を用いた。SEMのビーム条件は加速電圧15 kV、照射電流1.4 nAで行った。取得したEBSDパターンはEMsoft(Singh et al., 2017)とkikuchipy(Ånes et al., 2026)を用いてDictionary Index法(De Graef, 2019)により指数付けした。指数付けが完了したデータをOxford Instruments, AZtecCrystalで組織解析した。特に、隣接ピクセル間で1°以上の角度差を持つ境界を亜粒界と推定して可視化した。また、Weighted Burgers Vector (WBV, Wheeler et al., 2009)マップも作成した。かんらん石と各包有物構成鉱物の結晶方位は極点図上にプロットして方位関係を決定した。
【結果・考察】
A. Bankの薄片では、MgtとDiからなる包有物とMgtかIlmのみの包有物が存在し、方位関係は、[001]ol // [010]Di // <110>Mgt、(100)ol // {111}Mgtであった。A. Massifの薄片では、MgtとDi、Ilmで構成された包有物とチタン鉄鉱のみの包有物が存在した。包有物とかんらん石の方位関係は、[001]ol or <011>ol // [010]Di // <110>Mgt // <100>Ilm、(100)ol // {111}Mgt // (001)Ilmであった。先行研究(Khisina et al., 2013)と比較すると、かんらん石-Mgt間の方位関係は一致するが、カンラン石-Di間の関係は一致しない。いずれにせよ、特定の方位関係があることは包有物形成の際にかんらん石との界面の影響を受けていたことを示唆する。
A. Bankの薄片では、包有物が存在する場合は包有物と平行に亜粒界が多く認められ、包有物は亜粒界上に存在した。WBV解析によるとこれらの亜粒界を構成する転位のバーガースベクトルは[100]olである。一方、包有物が存在しない場合は亜粒界もほとんど認められなかった。また、A. Massifの薄片では、本EBSD測定で明瞭に定義できた亜粒界は少なく、かんらん石はより連続的な方位変化を示した。
A. Bankの薄片で亜粒界上に包有物が存在することは、A. Bankで起こったメルトの上方への輸送やそれと関連した変形が包有物の形成と関連する可能性を示す。一方、A. Massifで得られた試料では変形とは無関係にかんらん石中に存在する包有物が多く見られる。それゆえ、A. BankとA. Massifで包有物の形成過程が異なっていた可能性がある。
