講演情報
[R7-08]丹沢トーナル岩体の全岩化学組成とマグマ進化における銅の挙動
*天谷 宇志1、金丸 龍夫2、山本 伸次3、昆 慶明1 (1. 産業技術総合研究所、2. 日本大学、3. 横浜国立大学)
キーワード:
丹沢トーナル岩体、Mタイプ花崗岩、熱水性銅鉱床、全岩化学組成
熱水性金属鉱床のタイプや規模は,花崗岩質マグマの化学的特徴と密接に関連している.斑岩銅鉱床の形成では,花崗岩質マグマの起源物質が,鉱床形成能力を制御する要因の一つとして議論されてきた.海洋地殻玄武岩の部分溶融を起源とする花崗岩の中で,マントル由来の苦鉄質物質の寄与が大きいMタイプ花崗岩(White, 1979)は,時折,斑岩銅鉱床を伴い,全岩銅濃度が高いことから,斑岩銅鉱床の金属供給源となる可能性が指摘されてきた(Pitcher, 1983).しかし,Mタイプ花崗岩を含め,岩体全体における系統的な化学組成変化やマグマ進化に伴う銅の挙動は,十分に明らかになっていない.
南部フォッサマグナ地域の丹沢トーナル岩は,新第三紀に形成した日本における典型的なMタイプ花崗岩で,フィリピン海プレートに由来する玄武岩質下部地殻の含水部分溶融により形成されたと推定されている (Nakajima & Arima, 1998).そのため,銅に富む起源物質をマグマの化学組成に反映していると期待される.実際に,丹沢トーナル岩体の流体包有物には,斑岩銅鉱床に匹敵する銅に富む熱水流体が保存されている(Kurosawa et al., 2014).丹沢トーナル岩体は,斑レイ岩,トーナル岩,花崗閃緑岩などから構成されており,これらは親マグマからの苦鉄質鉱物の集積と結晶分化により形成されたと考えられている.加えて,暗色包有岩も認められる.これらのマグマ進化による深成岩体の形成や苦鉄質マグマの貫入は,鉱床形成において,元素の濃集や揮発性成分の供給といった重要な要因である.本研究では,高橋ほか(2004)で採集された丹沢トーナル岩体ほぼ全域の斑レイ岩,トーナル岩,トーナル岩ポーフィリー,アプライト及びトーナル岩に貫入する暗色包有岩(全140試料)を再分析した.今回は,主成分組成,微量成分組成,Fe2+/Fe3+,硫黄含有量,含水量(H2O+, H2O-)に基づき,丹沢トーナル岩質マグマの進化に伴う銅の挙動を検討した.
深成岩類の主成分組成は,約40~77 wt% SiO2の範囲であり,ハーカー図においては,主要酸化物組成は,SiO2の増加に伴い系統的な増減傾向を示した.一方,微量元素組成においては,SiO2-Sr図で約60 wt%より低SiO2側でSr含有量のばらつきが大きくなることから,斜長石を含む鉱物集積過程の影響が示唆される.REEパターンは,斑レイ岩~トーナル岩でやや軽希土に乏しいフラットなパターンを示すものの,トーナル岩ポーフィリーでは,重希土に乏しいやや右下がりのパターンを示した.銅含有量は,深成岩類で1 ppm以下~450 ppmと幅広いが,大部分は100 ppm以下である.暗色包有岩(約50~55 wt% SiO2)では,15 ppm以上と一貫して高い.SiO2-Cu図では,トーナル岩の結晶分化に伴い銅含有量のばらつきが大きくなり,55 wt% SiO2以降,全体的に減少した.箱ひげ図では,斑レイ岩の銅含有量のほとんどばらつきがないのに対し,約50~60 wt% SiO2のトーナル岩において,既にそのばらつきが大きい.加えて,暗色包有岩近傍のトーナル岩でも優位にCu濃度が高い傾向はみられなかった.Cu-H2O+図では,銅に富むトーナル岩は約1.5wt% H2O+で,含水量の低下に伴い銅含有量が低下した.
これらの結果は,丹沢トーナル岩体において,銅が分化したメルトに単純に濃集するのではなく,マグマがほとんど結晶分化せず,かつ水に富む定置後すぐの段階で,既に銅が熱水流体で移動を開始した可能性を示唆する.今後は,丹沢トーナル岩中の硫化物相の同定を行い,マグマ進化に伴う銅の挙動を硫化物飽和や析出のタイミングから検討する予定である.
南部フォッサマグナ地域の丹沢トーナル岩は,新第三紀に形成した日本における典型的なMタイプ花崗岩で,フィリピン海プレートに由来する玄武岩質下部地殻の含水部分溶融により形成されたと推定されている (Nakajima & Arima, 1998).そのため,銅に富む起源物質をマグマの化学組成に反映していると期待される.実際に,丹沢トーナル岩体の流体包有物には,斑岩銅鉱床に匹敵する銅に富む熱水流体が保存されている(Kurosawa et al., 2014).丹沢トーナル岩体は,斑レイ岩,トーナル岩,花崗閃緑岩などから構成されており,これらは親マグマからの苦鉄質鉱物の集積と結晶分化により形成されたと考えられている.加えて,暗色包有岩も認められる.これらのマグマ進化による深成岩体の形成や苦鉄質マグマの貫入は,鉱床形成において,元素の濃集や揮発性成分の供給といった重要な要因である.本研究では,高橋ほか(2004)で採集された丹沢トーナル岩体ほぼ全域の斑レイ岩,トーナル岩,トーナル岩ポーフィリー,アプライト及びトーナル岩に貫入する暗色包有岩(全140試料)を再分析した.今回は,主成分組成,微量成分組成,Fe2+/Fe3+,硫黄含有量,含水量(H2O+, H2O-)に基づき,丹沢トーナル岩質マグマの進化に伴う銅の挙動を検討した.
深成岩類の主成分組成は,約40~77 wt% SiO2の範囲であり,ハーカー図においては,主要酸化物組成は,SiO2の増加に伴い系統的な増減傾向を示した.一方,微量元素組成においては,SiO2-Sr図で約60 wt%より低SiO2側でSr含有量のばらつきが大きくなることから,斜長石を含む鉱物集積過程の影響が示唆される.REEパターンは,斑レイ岩~トーナル岩でやや軽希土に乏しいフラットなパターンを示すものの,トーナル岩ポーフィリーでは,重希土に乏しいやや右下がりのパターンを示した.銅含有量は,深成岩類で1 ppm以下~450 ppmと幅広いが,大部分は100 ppm以下である.暗色包有岩(約50~55 wt% SiO2)では,15 ppm以上と一貫して高い.SiO2-Cu図では,トーナル岩の結晶分化に伴い銅含有量のばらつきが大きくなり,55 wt% SiO2以降,全体的に減少した.箱ひげ図では,斑レイ岩の銅含有量のほとんどばらつきがないのに対し,約50~60 wt% SiO2のトーナル岩において,既にそのばらつきが大きい.加えて,暗色包有岩近傍のトーナル岩でも優位にCu濃度が高い傾向はみられなかった.Cu-H2O+図では,銅に富むトーナル岩は約1.5wt% H2O+で,含水量の低下に伴い銅含有量が低下した.
これらの結果は,丹沢トーナル岩体において,銅が分化したメルトに単純に濃集するのではなく,マグマがほとんど結晶分化せず,かつ水に富む定置後すぐの段階で,既に銅が熱水流体で移動を開始した可能性を示唆する.今後は,丹沢トーナル岩中の硫化物相の同定を行い,マグマ進化に伴う銅の挙動を硫化物飽和や析出のタイミングから検討する予定である.
