講演情報

[R7P-02]桜島火山灰を構成する斜長石の粒径と粉末X線回折実験により推定された構造状態の関係

*松井 智彰1 (1. 鹿児島大・教育)

キーワード:

火山灰、斜長石、粒度、桜島火山、構造状態

桜島火山では、2000年代前半に噴火回数が一時的に減少したものの、2006年に昭和火口が噴火活動を再開して以降、2010年代前半には年間 1000 回を超えるほど急増した。その後、昭和火口の噴火活動は一旦休止し、近年は多い年で年間 200~300 回程度で推移している。こうした状況を踏まえ、鹿児島大学教育学部鉱物学研究室では予備的調査を経て、2013 年度から鹿児島大学地域防災教育研究センターのプロジェクトとして、桜島から噴出する火山灰に含まれる斜長石の結晶構造の調査を開始した。その結果、火山灰中の斜長石の構造状態が火山活動(噴火規模・回数・降灰量など)に対して敏感に変動し、火山活動の推移を監視するための有力な指標となり得ることが明らかになっている。そこで本研究では、今後の調査研究の方向性を基礎データの充実を踏まえて検討するため、火山灰を構成する斜長石粒子の粒径と、粉末 X 線回折実験から推定される構造状態との関係を確認することを目的とした。今回は、桜島南岳山頂火口の東北東約 5 km に位置する鹿児島市立黒神小学校に協力を依頼し、2022 年 7 月 28 日~8 月 26 日に採取された火山灰試料を用いた。採取した火山灰は水洗後トレイに移して数日間乾燥させ、質量測定を行ったうえで 1 m² あたりの降灰量に換算した。電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)による化学組成分析、蛍光 X 線分析(全岩組成分析)、粉末 X 線回折実験に用いるため、各 2 g程度 の試料を縮分によって確保し、残部を粒度分析用とした。粒度分析はロータップ型フルイ振とう機を用いて各試料を 150 秒間処理し、62 μm 未満、62~120 μm、120~250 μm、250~500 μm、500 μm 以上の 5 区分に分けて行った。その後、62~120 μm、120~250 μm、250~500 μm の 3 粒度区分について斜長石の単離を実施した。まず磁石により磁性鉱物を除去し、続いて重液(ポリタングステン酸ナトリウム水溶液)を用いて比重 2.75~2.93 に調整した重液で斜長石より重い鉱物(主に輝石類)を除去し、さらに比重 2.36~2.62 に調整した重液で斜長石より軽い鉱物(クリストバライトなど)を除去して斜長石を単離した。単離した斜長石は粉末化し、X 線回折装置 Ultima IV Protectus(管電圧 40 kV、管電流 40 mA、モノクロメータ使用、発散スリット・散乱スリット 0.5°、受光スリット 0.30 mm、CuKα線)を用いて 21° ≤ 2θ ≤ 33° の範囲をスキャンスピード 0.100°/min、サンプリング幅 0.001°で測定した。得られた回折線の角度から、Scheidegger(1973)に従い、面指数 (1–11)、(–201)、(131)、(220)、(1–31) に対応する回折線を用いて、Β(= 2θ(1–11) – 2θ(–201))および Γ(= 2θ(131) + 2θ(220) – 2θ(1–31))を求めた。桜島火山灰中の斜長石の Β-Γ プロットから、粒径の大きい 250~500 μm の試料は、他の粒度区分(62~120 μm、120~250 μm)と比較して Al/Si 配列の秩序度がやや低い高温型であることが判明し、粒径の違いによって斜長石の構造状態が異なることが明らかとなった。ここで、火山灰を構成する斜長石粒子の粒径は、噴火により破砕される前の斑晶より必ず小さい点に留意する必要がある。すなわち、より細粒の試料には、もともと大きな斑晶の破片が混在している可能性がある。今後も火山灰を構成する斜長石の構造状態に関する基礎データを蓄積し、地球物理学的観測データの経時変化と照合することで、火山活動を監視する新たな視点を提供したい。