講演情報

[R7P-06]丹沢トーナル岩体のジルコンの成長過程:中部地殻のマグマ溜りプロセスの解明

*小北 康弘1,5、松浦 心咲2、坂田 周平3、大野 剛4、井村 匠5、竹内 真司6、湯口 貴史2 (1. 原子力機構、2. 熊本大学、3. 東京大学地震研究所、4. 学習院大学、5. 山形大学、6. 日本大学)

キーワード:

マグマ溜りプロセス、カソードルミネッセンスパターン、ジルコン、丹沢トーナル岩体

花崗岩は大陸地殻の主要構成要素であり,大陸地殻の進化史の解明に重要なピースである.本研究では中部日本に位置する丹沢トーナル岩体に着目する.丹沢トーナル岩体が位置する丹沢ブロックは伊豆衝突帯内に存在し,フィリピン海プレートの北上に伴っておよそ6~4 Maに本州弧に衝突・付加したものと推定されている (例えば,Amano, 1991).Tani et al. (2010) はジルコンU-Pb年代より,丹沢トーナル岩体は伊豆・小笠原・マリアナ弧が本州弧に衝突した後の5~4Maのマグマ活動によって形成されたことを示し,島弧同士の衝突によってマグマが発生して新たに丹沢トーナル岩体が形成されたことを結論づけた.また,丹沢トーナル岩体を形成したマグマは5~10 kmの深さの中部地殻への貫入・定置したことが論じられている(Suzuki et al., 2014).このため,丹沢トーナル岩体は島弧の衝突に伴うマグマ活動と中部地殻のマグマ溜りの冷却過程を知る手がかりとなる.そこで,本研究ではジルコン成長に焦点を当て,それらの解析から丹沢トーナル岩体を形成した貫入・定置・冷却プロセス(マグマ溜りプロセス)の解明を研究目的とした.
 ジルコンのカソードルミネッセンス(CL)パターンに基づく成長構造とU-Pb年代(結晶化年代),Ti濃度(結晶化温度),Th/U(分別結晶の指標)を併せて議論することでマグマ溜りプロセスの解明が可能になる.本研究では山形大学理学部のSEM-CL(JEOL IT100A+Gatan Mini CL)を用いてCLパターンの観察を行い,学習院大学理学部のLA-ICP-MS (Agilent 8800 Triple Quadrupole ICP-MS+NWR-213 Nd: YAG Laser Ablation System) を用いてU-Pb年代,Ti濃度,Th/Uの同時定量分析を実施した.なお,分析手法はYuguchi et al. (2020)を踏襲した.CL像解析により,丹沢トーナル岩体のジルコンは,コアからリムに向けて低輝度帯と高輝度帯が繰り返すオシラトリゾーニング,低輝度かつ均質なコア領域,局所的高輝度領域(RHLP)の3つの組織に分類される.
 ジルコンU-Pb年代は6~3 Maの分布幅を有しており,その加重平均は4.27 ± 0.14 Ma(MSWD=4.4,Probability=0.000)である.本研究で得られた年代はTani et al. (2010)で得られた年代と整合的である.
 ジルコンは6-3 Maの比較的長期間において,約800℃から650℃までの温度条件で結晶化しており,マグマ溜りが6-3 Maの期間に約800℃から650℃まで冷却したことを示唆する.また,Th/Uの減少に対して温度条件の変化は乏しく,このことはマグマ溜りが徐冷する中で結晶分別が進み,ジルコンが結晶化していることが解釈される.以上より,中部地殻に貫入・定置したマグマ溜りが300万年間の徐冷を経験したことが推定される.
 本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597) (地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部を使用している.