講演情報

[R8P-02]愛知県新城地域の中央構造線(MTL)から産する領家帯マイロナイトの年代とその意義について

*丹羽 美春1、谷 健一郎2、道林 克禎3 (1. 豊橋市自然史博物館、2. 国立科学博物館、3. 名古屋大学大学院環境学研究科(岩鉱))

キーワード:

マイロナイト、中央構造線、領家帯、断層岩、ジルコンU-Pb 年代

愛知県東三河新城地域には日本を代表する中央構造線(MTL)が走り,領家帯花崗岩起源の断層岩と三波川変成帯の黒色片岩が直接接する様子を観察できる露頭が存在している.しかし,本地域におけるMTLの断層岩の形成時期や変形条件に着目した構造岩石学的研究は十分進んでいなかった.筆者らは今までに新城市桜淵公園付近でマイロナイトの露頭を確認し,偏光顕微鏡による微細構造観察及びSEM‒EBSDシステムによる石英の結晶方位測定の結果,Y軸集中を示す石英のc軸ファブリック,降温期の変形を示す斜長石―石英の残晶組織などから,350–450℃の降温期に右ずれの剪断センスを示す塑性剪断変形したと推定されることを明らかにしてきた(Niwa et al., 2025).これらは他の地域の領家帯の延性剪断帯の変形様式と整合的である.本研究では,複数地点から採取したマイロナイトについてジルコンU-Pb年代測定を実施し,その結果から原岩の形成年代と岩体の特定を試みた.
田町川沿いの複数露頭から採取したマイロナイトのうち下流から上流までの複数箇所のジルコンについてU-Pb年代を測定した.CL像において明瞭な反射累帯構造を示し,結晶内クラックや包有物が見られない粒子リムの測定を行った.測定は国立科学博物館に設置されているLA-ICPMSを用いて行った.
その結果,マイロナイトに含まれるジルコンの結晶化年代として下流の3試料から約80 Maのコンコーディア上にのる年代が得られた.これらは結晶化年代と解釈される.しかし,MTLの直ぐ北側に位置する新城トーナル岩の約75Maとは一致せず,新城地域では約80Maを示す領家花崗岩類は報告されていない.一方,近年のTakatsuka et al. (2018)などにより,三河地域の花崗岩類のジルコンU-Pb年代は従来知られていた2つのステージではなく,3つのステージがあったとの報告があり,本マイロナイトの原岩が既知の貫入岩類とは異なる起源を持ち,約80Maを示す領家花崗岩類の存在を示唆している可能性がある.
さらに上流で採取したマイロナイトから得られた年代測定の結果と合わせ,田町川沿いに分布するマイロナイトの原岩が単一の岩体に由来するのか,あるいは複数の花崗岩類に由来するのかを検討する.得られた年代と新城地域の花崗岩類の分布及びMTLの活動史を合わせて考察する.