講演情報
[R8P-09]ザクロ石と単斜輝石のFe3+/ΣFe推定の妥当性の検証:石灰珪質グラニュライトの例
*阿部 こよみ1、Satish-Kumar Madhusoodhan1、篠田 圭司2、小林 康浩3 (1. 新潟大・院自然、2. 大公大・院理、3. 京都大・複合研)
キーワード:
石灰珪質グラニュライト、Fe3+/ΣFe、チャージバランス計算、ザクロ石
ザクロ石と単斜輝石は変成岩・火成岩に普遍的に産する鉱物である.これらの鉱物は二価鉄(Fe2+)と三価鉄(Fe3+)を取り込み,その量比は岩石の酸化還元状態の推定や鉄を含む鉱物反応を考えるうえで重要な意味を持つ.Fe2+とFe3+の量比の推定にはEPMAやEDS分析によって得られた鉱物化学組成に対してのストイキオメトリに基づくチャージバランス計算(e.g., Droop, 1987)を適用する手法がよく用いられる.近年,このような手法によって推定されるFe3+/ΣFeの妥当性は,メスバウアー分光法によるFe3+/ΣFeの直接定量値との比較によって再評価されている.しかし,それらは火成岩に産する鉄含有鉱物に関して行われることが多く,グラニュライトなどの高温変成岩に産する鉱物に関するチャージバランス計算の信頼性については十分に検討されていない.そこで本研究では,高温変成帯から産する石灰珪質グラニュライト中のザクロ石と単斜輝石を対象とし,化学組成分析値を用いたチャージバランス計算と,メスバウアー分光分析により定量されたFe3+/ΣFeの比較を行うことでFe3+/ΣFe推定の妥当性について検証した. 化学組成分析の結果,ピーク変成作用時に形成されたザクロ石はグロシュラーからアンドラダイトの固溶体組成を示し,Droop (1987)に基づくチャージバランス計算ではFe3+/ΣFe = 69–86%と見積もられた.単斜輝石はディオプサイドからヘデンバージャイトの固溶体組成(XFe = Fe2+/Fe2++Mg = 0.15–0.29)を持ち,チャージバランス計算によって推定されたFe3+/ΣFeは1–50%と幅広い値を示した.メスバウアー分光分析の結果,ザクロ石はFe3+/ΣFe = 70–76%であるのに対し,単斜輝石にはほとんどFe3+が含まれていない(~ 6%)ことが明らかになった.ザクロ石ではメスバウアー分光分析とチャージバランス計算に基づくFe3+/ΣFe推定値は,一部重複しおおむね整合的であるが,単斜輝石では両者におけるFe3+/ΣFe値に大きな差が認められ,チャージバランス計算ではFe3+/ΣFeを過大に評価してしまう場合があることが示唆される.この不一致は,化学組成分析に由来する不確かさがFe3+/ΣFe推定値に伝播することに起因している可能性がある.特にSi4+は主要カチオンであり高い電荷を保持するため,化学組成分析の不確実性がカチオン計算に大きく影響しうる(Quinn et al., 2016).さらにFeO(total)量が低い単斜輝石(FeO < 10 wt.%)では,チャージバランス計算によって幅広く,かつ高Fe3+/ΣFe推定値が得られた.低FeO(total)量がFe3+/ΣFe推定値に不確実性をもたらすことが示唆されており(Neave et al., 2024),本結果はその影響を反映している可能性がある.
