講演情報

[S2-03]流体圧振動下における石英CL累帯構造形成プロセス

*西村 波鷹1、岡本 敦1、吉田 健太2 (1. 東北大・院環、2. JAMSTEC)

キーワード:

石英

間隙流体圧は断層強度や地震サイクルを支配する重要な要因であり、特に地震発生帯に存在する豊富な石英脈の存在から、シリカの析出は断層強度回復や浸透率の低下を引き起こすと考えられている(Sibson et al., 1992)。このような脈中の石英にはしばしば明瞭なカソードルミネッセンス(CL)累帯構造が観察され、CL発光強度と微量元素(Al)濃度との間に相関があること、また流体包有物の密度との関係から、石英のCL累帯構造は地震に関連した流体圧振動を記録している可能性が示唆されている(Raimbourg et al., 2022)。しかし、流体圧振動によりどのようにCL累帯構造を呈するかのメカニズムはよくわかっていない。本研究では、人為的に制御した流体圧振動条件下でシリカ析出実験を行い、石英CL累帯構造が形成するメカニズムを検討した。流通式水熱反応装置のメインの反応容器は2重構造を有し、そのアルミナ製内管に花崗岩ブロックを設置した。出発溶液(Si = 292 mg/kg H2O, Al = 5-6 mg/kgH2O)は、花崗岩を亜臨界条件で水に溶解させて作成し、流量0.2 mL/minの一定流量で流通させた。温度は、上流280°C、下流440°Cの温度勾配を与え、背圧弁で流体圧を (1) 25 MPa一定(Ex1)、(2) 25-20 MPaの間で周期4時間の矩形波で振動(Ex2)、(3) 25-20 MPaの間で周期8時間の正弦波と矩形波を組み合わせた条件(Ex3)の3種類の析出実験を実施した。この条件では反応管の内部で亜臨界から超臨界、亜臨界から気相へと変化してシリカの析出が起こる。析出物については、光学顕微鏡、SEM-CL観察、EPMAによる微量元素分析、また、放射光施設でのナノスケールのX線CT撮影により流体包有物の解析を行った。全ての実験において、高過飽和度(Si濃度が高い溶液)な上流ではアモルファスシリカや細粒な石英粒子が堆積したような組織を形成し、低過飽和な下流域では基盤からの自形の石英結晶の成長が支配的であった。流体圧が25MPa一定条件(Ex1)では、下流で成長した石英結晶内部に弱い不規則なCL累帯構造が観察された。一方、振動条件での実験(Ex2, Ex3)では、上流の細粒粒子堆積物に縞状構造が、下流の石英結晶内部は明瞭な周期的CL累帯構造が形成され、石英結晶のCL縞の数は流体圧の振動回数とほぼ一致し、CL暗部の方の幅が1.7-2.0倍程度広い。また、石英結晶内部のCL明部はAlやK・Naに富み、CL暗部は低濃度であることから、CL明部は[AlO4/K+]0の欠陥によるものと考えられる。また、EPMAマッピング後のBSE像においてCL明部が選択的に凹んでおり、不純物の多いCL明部では電子線に対する強度が弱まるほど格子欠陥が形成されていたと考えられる。また、石英結晶中の一次流体包有物がCL明部に沿って並んでおり、X線CTから得られた気相と液相の体積比に基づく密度推定から捕獲時の流体圧は25 MPa相当であることがわかった。本実験での観察事実は、流体圧の変化によってシリカの過飽和度が変化し、20MPaでは低過飽和で古典的な結晶成長が起こりCL暗部を形成するのに対して、25MPaでは高過飽和条件で生成したナノ結晶・アモルファス粒子が石英結晶に付着して成長することでCL明部が形成されたことを示唆する。今後、天然石英脈中のCL累帯構造・微量元素の関係と実験生成物を比較することで、地震に起因する流体圧振動・過飽和度の変化・流体移動と石英のCL累帯構造の発達過程の関係を検討する予定である。