講演情報
[S2-04]オパール構造体を用いた圧電物質ナノ多孔体の合成と特性評価
*松野 敬成1 (1. 早大・高等研)
キーワード:
オパール構造体、シリカナノ粒子、石英、圧電物質、ナノ多孔体
オパールは非晶質のシリカからなる準鉱物であり、球状のシリカナノ粒子が規則的に集積した構造をもつコロイド結晶であることが知られている[1]。そのナノスケールでの周期的な構造変調によって虹色の遊色効果が現れる、天然のフォトニック結晶である。その構造が明らかになった後、塩基性触媒を用いた水溶液中のゾル-ゲル反応によって均一なサイズのシリカナノ粒子が合成できるようになり[2,3]、人工的なコロイド結晶の作製が可能となった。また、球状粒子の間隙に物質を充填し、粒子を除去することで、規則的なナノ構造を転写したナノ多孔体を作製できる[4]。このような人工のコロイド結晶やナノ多孔体は、光学素子や触媒、電極材料など、幅広い分野での応用が期待される。我々は、粒径数十nmのシリカナノ粒子からなるコロイド結晶を用いて、石英やLiNbO3などの圧電物質からなるナノ多孔体の合成および機能開拓に取り組んでおり、本発表では最近の成果を紹介する。
実験の概要を図1に示した。まず、テトラエトキシシランを触媒存在下で加水分解・重縮合することで、粒径の均一な球状シリカナノ粒子の水分散液を調製した。この溶液を乾燥させ、焼成することでコロイド結晶を得た。コロイド結晶を炭素に埋没させて熱処理することで非晶質シリカを結晶化させ、コロイド結晶と同様のナノ構造をもつ結晶性シリカを作製した。また、作製したコロイド結晶の粒子間隙に金属塩水溶液を含浸させ、乾燥後に焼成することで金属酸化物を析出させた。その後、塩基性水溶液でシリカを溶解除去して金属酸化物のナノ多孔体を得た。
電子顕微鏡や小角X線散乱、窒素吸脱着測定などの分析から、コロイド結晶は球状の非晶質シリカナノ粒子が面心立方構造に最密充填していることを確認した。この非晶質シリカを、ナノ構造を保ったまま結晶化させることで、石英[5]やクリストバライト[6]からなるナノ多孔体の合成に成功した。アルカリ金属を用いて結晶化温度を低下させることがナノ構造の保持に重要であった。コロイド結晶の構造を転写した金属酸化物ナノ多孔体の合成では、代表的な圧電物質であるLiNbO3をナノ多孔質化し、分極電荷を酸化還元反応に利用する圧電触媒として特性を評価したところ、従来材料よりも小さい圧力で酸化還元反応が進行することが分かった。また、金属酸化物ナノ多孔体の構造を制御する新しい方法として、金属塩化物を前駆体に用いることで結晶子サイズが数百nm以上のナノ多孔体(単結晶性ナノ多孔体)が合成できることを見出した[7]。一般的なナノ多孔体は数nm–十数nm程度の微結晶から構成されるが、結晶子サイズが大きい多孔体では粒界の減少によって電子輸送特性が向上するため、有用な機能性材料として期待されている。このように結晶が成長した理由として、蒸気圧の高い金属塩化物が気体となって連続的に供給されたことが考えられる。
参考文献
[1] J. V. Sanders, Nature 1964, 204, 1151. [2] W. Stöber et al., J. Colloid Interface Sci. 1968, 26, 62. [3] T. Yokoi et al., J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 13664. [4] B. T. Holland et al., Science 1998, 281, 538. [5] T. Matsuno et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 6008. [6] T. Matsuno et al., Chem. Asian J. 2021, 16, 207. [7] D. Oka et al., Chem. Mater. 2025, 37, 5005.
実験の概要を図1に示した。まず、テトラエトキシシランを触媒存在下で加水分解・重縮合することで、粒径の均一な球状シリカナノ粒子の水分散液を調製した。この溶液を乾燥させ、焼成することでコロイド結晶を得た。コロイド結晶を炭素に埋没させて熱処理することで非晶質シリカを結晶化させ、コロイド結晶と同様のナノ構造をもつ結晶性シリカを作製した。また、作製したコロイド結晶の粒子間隙に金属塩水溶液を含浸させ、乾燥後に焼成することで金属酸化物を析出させた。その後、塩基性水溶液でシリカを溶解除去して金属酸化物のナノ多孔体を得た。
電子顕微鏡や小角X線散乱、窒素吸脱着測定などの分析から、コロイド結晶は球状の非晶質シリカナノ粒子が面心立方構造に最密充填していることを確認した。この非晶質シリカを、ナノ構造を保ったまま結晶化させることで、石英[5]やクリストバライト[6]からなるナノ多孔体の合成に成功した。アルカリ金属を用いて結晶化温度を低下させることがナノ構造の保持に重要であった。コロイド結晶の構造を転写した金属酸化物ナノ多孔体の合成では、代表的な圧電物質であるLiNbO3をナノ多孔質化し、分極電荷を酸化還元反応に利用する圧電触媒として特性を評価したところ、従来材料よりも小さい圧力で酸化還元反応が進行することが分かった。また、金属酸化物ナノ多孔体の構造を制御する新しい方法として、金属塩化物を前駆体に用いることで結晶子サイズが数百nm以上のナノ多孔体(単結晶性ナノ多孔体)が合成できることを見出した[7]。一般的なナノ多孔体は数nm–十数nm程度の微結晶から構成されるが、結晶子サイズが大きい多孔体では粒界の減少によって電子輸送特性が向上するため、有用な機能性材料として期待されている。このように結晶が成長した理由として、蒸気圧の高い金属塩化物が気体となって連続的に供給されたことが考えられる。
参考文献
[1] J. V. Sanders, Nature 1964, 204, 1151. [2] W. Stöber et al., J. Colloid Interface Sci. 1968, 26, 62. [3] T. Yokoi et al., J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 13664. [4] B. T. Holland et al., Science 1998, 281, 538. [5] T. Matsuno et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 6008. [6] T. Matsuno et al., Chem. Asian J. 2021, 16, 207. [7] D. Oka et al., Chem. Mater. 2025, 37, 5005.

