講演情報
[S2P-07]地震発生帯における石英脈分布とシリカ移動量の定量化
*平戸 佑汰1、志村 侑亮2、宇野 正起1 (1. 東京大・院理、2. 名古屋大・院環境)
キーワード:
石英脈、流体移動、地震発生帯、四万十付加体、三波川変成帯
沈み込み帯の地震発生帯における地震、特にスロー地震について、その再来周期にはシリカの流体による移動・沈殿が関与していると考えられている[1]。実際に、沈み込み帯起源の岩石中には石英脈が観察され、脈の組織から破壊とシリカによるシーリングが繰り返し起こっていることが示唆されている[2]。また、このようなシリカ移動の証拠として、付加体では低変成度岩に比べ高変成度岩においてSiO2を主とした質量増加が確認されている[3]。しかしながら、シリカ移動の記録となる石英脈が露頭に実際どのように分布するかは十分に明らかでなく、近年、三波川変成帯を対象にした元素移動量解析の結果から、低変成度側(緑泥石帯最下部)で顕著なシリカの付加が示された[4]が、より低温度の領域を含む広域での連続的な分布は未だわかっていない。そこで、本研究では低変成度の付加体から高変成度の変成帯が連続して露出する、紀伊半島中央部の五條-吉野地域を対象に泥質岩中の石英脈の分布と形態を調べ、地震発生帯からスロー地震発生帯におけるシリカシーリングの分布を検討する。
本研究では四万十付加体のパンペリー石-アクチノ閃石相から三波川変成帯の緑泥石帯およびざくろ石帯までの7露頭から泥質岩計35試料を採取した。これらの試料についてXRFによる全岩組成分析や、ドローン3D画像と機械学習による石英脈の分布の定量化によりシリカによるシーリングの存在とその分布を検討する。本発表ではその第一段階として、各露頭における石英脈の産状を記載し,石英脈の分布の傾向について議論する。
主調査地域である南阿田では、緑泥石帯-ざくろ石帯の境界付近から南部の緑泥石帯下部へ約1 kmの調査を行った。約10 km東方における緑泥石帯からざくろ石帯の最高被熱温度は約280℃~440℃であり[5]、地震発生帯最下部から深部スロー地震発生帯相当の温度である。地質体の片理面は、全体としてENE-WSW走向で北に高角で傾斜する。以下では、ザクロ石帯側から順に露頭をMAD01~05として特徴を述べていく。緑泥石帯-ざくろ石帯の境界からの南を正とした距離をXとしている。それぞれの露頭は15~20 mほどのスケールで、各露頭で5試料を3~5 m間隔で採取した。
調査した5露頭の中では高変成度側のざくろ石帯に位置するMAD01(X=-50 m)は主に泥質片岩からなり、片理面にほぼ平行な幅約1~2 mmの石英脈が卓越し、まれに幅数cmの石英脈も認められた。また、一部ではmmスケールの高角脈や褶曲した脈も観察された。MAD02(X=50 m)は緑泥石帯-ざくろ石帯境界の南側に位置し、泥質片岩中に苦鉄質片岩を伴う混在岩からなる。ここでは、片理にほぼ平行な幅1 mm~数cmの石英脈に加え、幅数mm~1 cm程度の高角脈や褐色脈が観察された。MAD03(X=350 m)では、泥質片岩と苦鉄質片岩がほぼ同程度に混在し、片理にほぼ平行な幅数mmの石英脈が多く見られたほか、片理平行脈および高角脈の一部は幅数cmに達した。また、褶曲を受けた脈や褐色脈も多く確認された。MAD04(X=550 m)は他露頭に比べて比較的単一な優黒質の泥質片岩からなり、石英脈は断続的または境界が不明瞭なものが多く、幅は主に約1 mm~1 cmであった。MAD05(X=800 m)は泥質片岩と苦鉄質片岩の混在岩からなり、幅数mmの片理平行脈に加え、MAD03と同様に幅数cmに達する石英脈や褐色脈が観察された。また、石英脈が褶曲により曲げられている産状も認められた。
以上の観察において、MAD01・04のような主に単一の岩相からなる露頭とMAD03・05のような泥質片岩と苦鉄質片岩が混在する露頭では、後者において石英脈が比較的多く認められた。すなわち泥質片岩における苦鉄質片岩の混在度が高いほど石英脈の量・太さが多い傾向にあった。このことは、岩相境界や岩相の不均質性が流体の移動に関与した可能性を示す。岩相の差異は透水性や力学的性質の違いを生じさせるため、流体が特定の境界部や弱面に集中し、割れ目形成およびシリカ沈殿を促進した可能性がある。また、ともに岩相が混在した露頭であるMAD02と05の露頭を比べると、後者、すなわちより低変成度側において石英脈の量が増加しているように観察された。このことは、低変成度側において石英が多く沈殿している可能性を示唆する。
今後は、緑泥石帯の最下部や四万十付加体でさらなるサンプルを採取し、露頭画像の機械学習での解析による石英脈の分布の定量化や、全岩化学組成分析によるシリカ付加量の解析などを組み合わせることで、石英脈の分布と流体移動過程の関係を検討する予定である。 引用文献:[1]: Audet and Burgman, 2014 Nature, 510, 389-392[2]: Ujiie et al., 2022 Geophysical Research Letters, 45, 5371–5379. [3]: Breeding and Ague, 2002 Geology, 30 (6), 499–502.[4]: Amari et al., in prep.[5]: Shimura et al., 2021 Journal of Asian Earth Sciences, 215, 104791.
本研究では四万十付加体のパンペリー石-アクチノ閃石相から三波川変成帯の緑泥石帯およびざくろ石帯までの7露頭から泥質岩計35試料を採取した。これらの試料についてXRFによる全岩組成分析や、ドローン3D画像と機械学習による石英脈の分布の定量化によりシリカによるシーリングの存在とその分布を検討する。本発表ではその第一段階として、各露頭における石英脈の産状を記載し,石英脈の分布の傾向について議論する。
主調査地域である南阿田では、緑泥石帯-ざくろ石帯の境界付近から南部の緑泥石帯下部へ約1 kmの調査を行った。約10 km東方における緑泥石帯からざくろ石帯の最高被熱温度は約280℃~440℃であり[5]、地震発生帯最下部から深部スロー地震発生帯相当の温度である。地質体の片理面は、全体としてENE-WSW走向で北に高角で傾斜する。以下では、ザクロ石帯側から順に露頭をMAD01~05として特徴を述べていく。緑泥石帯-ざくろ石帯の境界からの南を正とした距離をXとしている。それぞれの露頭は15~20 mほどのスケールで、各露頭で5試料を3~5 m間隔で採取した。
調査した5露頭の中では高変成度側のざくろ石帯に位置するMAD01(X=-50 m)は主に泥質片岩からなり、片理面にほぼ平行な幅約1~2 mmの石英脈が卓越し、まれに幅数cmの石英脈も認められた。また、一部ではmmスケールの高角脈や褶曲した脈も観察された。MAD02(X=50 m)は緑泥石帯-ざくろ石帯境界の南側に位置し、泥質片岩中に苦鉄質片岩を伴う混在岩からなる。ここでは、片理にほぼ平行な幅1 mm~数cmの石英脈に加え、幅数mm~1 cm程度の高角脈や褐色脈が観察された。MAD03(X=350 m)では、泥質片岩と苦鉄質片岩がほぼ同程度に混在し、片理にほぼ平行な幅数mmの石英脈が多く見られたほか、片理平行脈および高角脈の一部は幅数cmに達した。また、褶曲を受けた脈や褐色脈も多く確認された。MAD04(X=550 m)は他露頭に比べて比較的単一な優黒質の泥質片岩からなり、石英脈は断続的または境界が不明瞭なものが多く、幅は主に約1 mm~1 cmであった。MAD05(X=800 m)は泥質片岩と苦鉄質片岩の混在岩からなり、幅数mmの片理平行脈に加え、MAD03と同様に幅数cmに達する石英脈や褐色脈が観察された。また、石英脈が褶曲により曲げられている産状も認められた。
以上の観察において、MAD01・04のような主に単一の岩相からなる露頭とMAD03・05のような泥質片岩と苦鉄質片岩が混在する露頭では、後者において石英脈が比較的多く認められた。すなわち泥質片岩における苦鉄質片岩の混在度が高いほど石英脈の量・太さが多い傾向にあった。このことは、岩相境界や岩相の不均質性が流体の移動に関与した可能性を示す。岩相の差異は透水性や力学的性質の違いを生じさせるため、流体が特定の境界部や弱面に集中し、割れ目形成およびシリカ沈殿を促進した可能性がある。また、ともに岩相が混在した露頭であるMAD02と05の露頭を比べると、後者、すなわちより低変成度側において石英脈の量が増加しているように観察された。このことは、低変成度側において石英が多く沈殿している可能性を示唆する。
今後は、緑泥石帯の最下部や四万十付加体でさらなるサンプルを採取し、露頭画像の機械学習での解析による石英脈の分布の定量化や、全岩化学組成分析によるシリカ付加量の解析などを組み合わせることで、石英脈の分布と流体移動過程の関係を検討する予定である。 引用文献:[1]: Audet and Burgman, 2014 Nature, 510, 389-392[2]: Ujiie et al., 2022 Geophysical Research Letters, 45, 5371–5379. [3]: Breeding and Ague, 2002 Geology, 30 (6), 499–502.[4]: Amari et al., in prep.[5]: Shimura et al., 2021 Journal of Asian Earth Sciences, 215, 104791.
