講演情報
[S2P-09]水流体から晶出した固溶体の化学組成は何で決まるか?
*福島 諒1 (1. JAMSTEC・高知コア研)
キーワード:
固溶体の晶出、ざくろ石、組成累帯
高圧変成岩中に産する鉱物の主要元素組成は、変成作用の温度圧力条件を推定し交代作用を記述するための基礎データである。高圧下で再結晶した鉱物群および共存していたであろう超臨界流体の熱力学的平衡を仮定することで、地質温度圧力計の適用やシュードセクションモデリングによる考察が可能となる。その一方で、高圧変成岩中には超臨界流体から晶出したとみられる鉱物が脈状に産出することがある。流体相から晶出した鉱物が固溶体である場合にその主要元素組成をどのように解釈すべきかについては、通常深く議論されない。本発表では、流体相から晶出した固溶体の主要元素組成がどのように決まるかに関する既存の理論研究を紹介する。その上で、実際の高圧変成岩試料に見られる脈状の鉱物組織と比較し、高圧下での流体–岩石相互作用に関する研究の可能性を吟味したい。
本発表では特に、二成分固溶体の核形成と成長をシミュレーションしたNoguera et al. (2010) (理想固溶体)およびNoguera et al. (2016)(非理想固溶体)の内容を紹介する。これらの研究では、閉鎖系を仮定し、ある固溶体に対し過飽和な流体から粒子が晶出する様子を古典的核形成理論と粒子サイズに依存した成長速度論を組み合わせて再現している。なお晶出した粒子内の元素拡散は考慮されていない。(Ba, Sr)CO3固溶体を想定した計算の結果、粒子のコアからリム付近にかけての大部分の晶出が初期段階(数日間)のうちに完了し、その組成が平衡組成とは異なることが示された。また、各端成分の相対的な流体への溶けやすさ(溶解度積の比)および固溶体の非理想性の強さが組成累帯のパターンを決定づけるとみられ、場合によってはフラットな主要元素パターンの結合から成るコア–シェル型(階段状)の累帯構造が自発的に形成する可能性が示唆された。すなわち、ある鉱物が再結晶によってではなく流体から直接晶出した場合、その鉱物に対する地質温度圧力計の適用は不適切であると考えられる。また、仮に流体から晶出した鉱物が階段状の累帯構造を呈する場合に、必ずしも不連続な環境の変化や外的な流体流入があったとは限らない可能性がある。
実際に、天然の高圧変成岩には階段状の累帯構造を呈するざくろ石が脈状に産する例が報告されており(e.g., Cruz-Uribe et al., 2021)、累帯構造の詳細な解析とざくろ石の各端成分の溶解度の情報を組み合わせることで、流体組成に関する部分的な逆解析が可能となるかもしれない。しかし厳密には、鉱物脈が複数相で構成されている場合や、鉱物の晶出が別の鉱物の溶解を伴う場合の取り扱いを考慮する必要がある。加えて、三成分系以上への拡張手法や、ある鉱物に過飽和な水流体の存在可能性に関する詳細な理解が求められるため、現状では既存の理論モデルを天然の高圧変成岩試料に直接適用できる段階には至っていないと考えられる。
Cruz-Uribe A.M. et al. (2021) Contrib. Mineral. Petrol. 176, 41.
Noguera C. et al. (2010) Chem. Geol. 269, 89–99.
Noguera C. et al. (2016) Chem. Geol. 431, 20–35.
本発表では特に、二成分固溶体の核形成と成長をシミュレーションしたNoguera et al. (2010) (理想固溶体)およびNoguera et al. (2016)(非理想固溶体)の内容を紹介する。これらの研究では、閉鎖系を仮定し、ある固溶体に対し過飽和な流体から粒子が晶出する様子を古典的核形成理論と粒子サイズに依存した成長速度論を組み合わせて再現している。なお晶出した粒子内の元素拡散は考慮されていない。(Ba, Sr)CO3固溶体を想定した計算の結果、粒子のコアからリム付近にかけての大部分の晶出が初期段階(数日間)のうちに完了し、その組成が平衡組成とは異なることが示された。また、各端成分の相対的な流体への溶けやすさ(溶解度積の比)および固溶体の非理想性の強さが組成累帯のパターンを決定づけるとみられ、場合によってはフラットな主要元素パターンの結合から成るコア–シェル型(階段状)の累帯構造が自発的に形成する可能性が示唆された。すなわち、ある鉱物が再結晶によってではなく流体から直接晶出した場合、その鉱物に対する地質温度圧力計の適用は不適切であると考えられる。また、仮に流体から晶出した鉱物が階段状の累帯構造を呈する場合に、必ずしも不連続な環境の変化や外的な流体流入があったとは限らない可能性がある。
実際に、天然の高圧変成岩には階段状の累帯構造を呈するざくろ石が脈状に産する例が報告されており(e.g., Cruz-Uribe et al., 2021)、累帯構造の詳細な解析とざくろ石の各端成分の溶解度の情報を組み合わせることで、流体組成に関する部分的な逆解析が可能となるかもしれない。しかし厳密には、鉱物脈が複数相で構成されている場合や、鉱物の晶出が別の鉱物の溶解を伴う場合の取り扱いを考慮する必要がある。加えて、三成分系以上への拡張手法や、ある鉱物に過飽和な水流体の存在可能性に関する詳細な理解が求められるため、現状では既存の理論モデルを天然の高圧変成岩試料に直接適用できる段階には至っていないと考えられる。
Cruz-Uribe A.M. et al. (2021) Contrib. Mineral. Petrol. 176, 41.
Noguera C. et al. (2010) Chem. Geol. 269, 89–99.
Noguera C. et al. (2016) Chem. Geol. 431, 20–35.
