講演情報
[S3-07]変形構造の進化を介した強度の速度依存性:断層アナログ物質のオペランド剪断実験からの知見
*高橋 美紀1、武藤 潤2、澤 燦道2、星野 真人3、上杉 健太朗3 (1. (国)産総研・GSJ、2. 東北大・院理、3. JASRI)
キーワード:
X線CTイメージング、脆性ー塑性遷移領域、強度の速度依存性
地震は,断層岩の強度を超える応力が作用し,亀裂の生成・進展を経て不安定すべりに至ることで発生する.地下深部の高温・高圧環境では,転位クリープや圧力溶解クリープなど,低すべり速度で卓越する安定な流動変形が支配的であり,このメカニズム単独では地震を発生させにくい.しかし実際には,流動変形が現れ始める脆性―塑性遷移領域の深度で大地震が発生している.これは,流動変形によって支えられる断層強度に限界があり,その限界を超える応力が断層に作用し得ることを示す.すなわち,脆性―塑性遷移領域の断層岩には最大強度を示すすべり速度が存在し,その速度を境に低速側では速度強化,高速側では速度弱化が生じると考えられる.断層が大地震を発生させる不安定な状態へどのように進化するのかを解明するには,この遷移領域における流動から破壊への変形プロセスを理解することが不可欠である.
本研究では,脆性―塑性遷移領域における変形を再現し,流動から破壊へ向かう変形組織の変遷を直接観察するため,断層アナログ物質を用いたオペランド剪断実験を行った.試料には,飽和塩水に浸した岩塩と白雲母の混合物(重量比80:20)を用いた.この物質は,常温・垂直応力5 MPaのもとで,すべり速度1 μm/sにおいて最大強度を示し,低速側では圧力溶解クリープによる速度強化,高速側ではダイラタンシーをともなう摩擦すべりによる速度弱化を示す(Niemeijer and Spiers, 2007; Takahashi et al., 2017).回収試料の観察から,速度強化域でマイロナイト様構造の形成が,速度弱化域で顕著な歪局所化が確認されている.実験では,小型回転式剪断試験機を大型放射光施設SPring-8のBL20B2に持ち込み,フォトンエネルギー40 keVでX線CT撮影を行った.垂直応力5 MPaで試料を保持した後,すべり速度を0.1 μm/sから1 mm/sへ段階的に増加させ,力学データと同期したX線CT像から試料内部組織の時間発展を取得した.得られたすべり速度と強度の関係はおおむね先行研究と一致し,1 μm/sを境に低速側で速度強化,高速側で速度弱化を示した.初期には圧密が進行し,その後,回転駆動ピストン側でリーデル剪断面のR1面およびP面が発達し,続いてY面が形成された.速度強化領域の低速側では,剪断帯全体に比較的分散した変形が認められたが,1 μm/s付近では回転駆動ピストン側に孔隙の配列としてR1面が現れた.速度弱化領域に入り,2 μm/sでは多数のR1面が駆動ピストン側から伸長し,3 μm/s付近では駆動ピストンと試料の境界に亀裂が生成・進展して,剪断が境界に集中した.この局所化と同時に弱化が顕著になり,さらに剪断帯幅の増加,すなわちダイラタンシーによる孔隙生成が観測された.ダイラタンシーは速度増加直後の強度の瞬間的上昇時ではなく,速度弱化領域で進行するevolutionの段階で顕著であり,空隙率を状態変数として扱うmicrophysicalモデル(Noda, 2016)と整合的である.
以上より,すべり速度に依存して変化する支配的変形機構が変形構造を形成し,その構造を介して強度が規定されることが示唆される.また,すべりの不安定化には,亀裂生成,剪断の局所化,ダイラタンシーの相互作用が関与すると考えられる.今後,これら因果関係を明らかにするべく,X線CT像をもちいた詳細な解析(たとえばひずみや亀裂の時空間変化)を行う予定である.また,新たに応力制御下での実験を実施し,自発的不安定に至る際の構造変化をその場でとらえることで,変形構造の変化と発達が断層不安定をもたらす過程を明らかにしていく予定である.
本研究では,脆性―塑性遷移領域における変形を再現し,流動から破壊へ向かう変形組織の変遷を直接観察するため,断層アナログ物質を用いたオペランド剪断実験を行った.試料には,飽和塩水に浸した岩塩と白雲母の混合物(重量比80:20)を用いた.この物質は,常温・垂直応力5 MPaのもとで,すべり速度1 μm/sにおいて最大強度を示し,低速側では圧力溶解クリープによる速度強化,高速側ではダイラタンシーをともなう摩擦すべりによる速度弱化を示す(Niemeijer and Spiers, 2007; Takahashi et al., 2017).回収試料の観察から,速度強化域でマイロナイト様構造の形成が,速度弱化域で顕著な歪局所化が確認されている.実験では,小型回転式剪断試験機を大型放射光施設SPring-8のBL20B2に持ち込み,フォトンエネルギー40 keVでX線CT撮影を行った.垂直応力5 MPaで試料を保持した後,すべり速度を0.1 μm/sから1 mm/sへ段階的に増加させ,力学データと同期したX線CT像から試料内部組織の時間発展を取得した.得られたすべり速度と強度の関係はおおむね先行研究と一致し,1 μm/sを境に低速側で速度強化,高速側で速度弱化を示した.初期には圧密が進行し,その後,回転駆動ピストン側でリーデル剪断面のR1面およびP面が発達し,続いてY面が形成された.速度強化領域の低速側では,剪断帯全体に比較的分散した変形が認められたが,1 μm/s付近では回転駆動ピストン側に孔隙の配列としてR1面が現れた.速度弱化領域に入り,2 μm/sでは多数のR1面が駆動ピストン側から伸長し,3 μm/s付近では駆動ピストンと試料の境界に亀裂が生成・進展して,剪断が境界に集中した.この局所化と同時に弱化が顕著になり,さらに剪断帯幅の増加,すなわちダイラタンシーによる孔隙生成が観測された.ダイラタンシーは速度増加直後の強度の瞬間的上昇時ではなく,速度弱化領域で進行するevolutionの段階で顕著であり,空隙率を状態変数として扱うmicrophysicalモデル(Noda, 2016)と整合的である.
以上より,すべり速度に依存して変化する支配的変形機構が変形構造を形成し,その構造を介して強度が規定されることが示唆される.また,すべりの不安定化には,亀裂生成,剪断の局所化,ダイラタンシーの相互作用が関与すると考えられる.今後,これら因果関係を明らかにするべく,X線CT像をもちいた詳細な解析(たとえばひずみや亀裂の時空間変化)を行う予定である.また,新たに応力制御下での実験を実施し,自発的不安定に至る際の構造変化をその場でとらえることで,変形構造の変化と発達が断層不安定をもたらす過程を明らかにしていく予定である.
