講演情報
[S3-10]マントル遷移層最下部へ沈み込んだスラブの温度圧力環境下におけるカンラン石のその場観察変形実験
*松田 光平1、大内 智博1、井上 紗綾子1、肥後 祐司2、辻野 典秀2、柿澤 翔2 (1. 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、2. 高輝度光科学研究センター)
キーワード:
深発地震、カンラン石相転移、リングウッダイト、その場観察、キンクバンド
地震は海洋プレート(スラブ)がマントルへ沈み込む過程にて頻発する。一般的に、地震の発生頻度は深さとともに減少するが、これは摩擦すべりの圧力依存性(バヤリー則)によって説明される。ところが、マントル遷移層に相当する深さ400-600 kmへ沈み込んだスラブ内部にて発生する地震(深発地震)は、深さとともに発生頻度が上昇するといった特異性が知られている(Frohlich, 1989)。これは、マントル遷移層にて進行するカンラン石からワズレアイトやリングウッダイトといった高圧相への圧力誘起相転移が地震を誘発するためであると考えられてきた(Green and Burnley, 1989)。近年、マントル遷移層へ沈み込んだスラブの温度圧力環境下におけるマントルカンラン石(Fo90)の放射光X線その場観察変形実験とアコースティック・エミッション(AE)測定が可能となってきた(Ohuchi et al., 2022; Matsuda et al., 2026; Honda et al., 2026)。それらの実験結果より、沈み込んだスラブ中の低温部にあたるMetastable Olivine Wedge(MOW)にて準安定カンラン石の相転移が進行する際に局所的に潤滑層(ガウジ)が形成され、そこを起点として深発地震発生に至るといったモデルが提案されている。その一方で、深さ600 km以深では地震の発生頻度が急減少することが知られているが、この原因についての実験的検証はいまだ行われていない。これは、深さ600 km以深のような20 GPaを超える高圧力環境下での変形実験が、依然として技術的に困難であったためである。
そこで本研究では、放射光X線その場観察とアコースティック・エミッション(AE)測定を組み合わせた、マントル遷移層最下部へ沈み込んだスラブの温度圧力環境下におけるカンラン石の変形実験を行った。実験は大型放射光施設SPring-8のBL04B1に設置されているD-DIA型変形装置を用いて行い、温度970-1220 K、封圧22-25 GPa、D-ramストローク速度1-4 μm/min一定の条件にて試料を変形させた。封圧、差応力、歪は単色X線の回折パターンおよびラジオグラフ像より求めた。AEは2段目アンビルの側面に貼り付けた6つのセンサーを用いて測定し、初動時刻差より震源位置を決定した。実験の回収試料は、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて組織観察を行った。
いずれのその場観察実験においても、不安定すべりの進行は確認されなかった。温度1120 K、封圧約25 GPにて変形を行った実験では、変形中に弱いAEが断続的に発生し、回収試料全域にわたりカンラン石粒内にキンクバンドが形成されていた。TEM観察より、キンクバンド内ではカンラン石の粉砕によるナノ粒子化(粒径 ~ 10 nm)が進行していたが、カンラン石相転移の進行は見られなかった。一方、温度1220 K、封圧約24 GPaにて変形を行った実験では、カンラン石の粒界にリングウッダイトのナノ粒子(粒径 ~ 100 nm)からなる網目状ネットワークが形成されており、これが試料全体の“均質”な軟化を引き起こしたと考えられる。以上の結果より、マントル遷移層最下部(深さ~ 660 km、封圧 ~ 24 GPa)に位置するMOWでは、カンラン石のキンクバンド形成に伴う粉砕、およびその粒界におけるリングウッダイトのナノ粒子形成が卓越するため、剪断集中及び断層形成を伴う“不均質”な変形は抑制されると考えられる。
そこで本研究では、放射光X線その場観察とアコースティック・エミッション(AE)測定を組み合わせた、マントル遷移層最下部へ沈み込んだスラブの温度圧力環境下におけるカンラン石の変形実験を行った。実験は大型放射光施設SPring-8のBL04B1に設置されているD-DIA型変形装置を用いて行い、温度970-1220 K、封圧22-25 GPa、D-ramストローク速度1-4 μm/min一定の条件にて試料を変形させた。封圧、差応力、歪は単色X線の回折パターンおよびラジオグラフ像より求めた。AEは2段目アンビルの側面に貼り付けた6つのセンサーを用いて測定し、初動時刻差より震源位置を決定した。実験の回収試料は、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて組織観察を行った。
いずれのその場観察実験においても、不安定すべりの進行は確認されなかった。温度1120 K、封圧約25 GPにて変形を行った実験では、変形中に弱いAEが断続的に発生し、回収試料全域にわたりカンラン石粒内にキンクバンドが形成されていた。TEM観察より、キンクバンド内ではカンラン石の粉砕によるナノ粒子化(粒径 ~ 10 nm)が進行していたが、カンラン石相転移の進行は見られなかった。一方、温度1220 K、封圧約24 GPaにて変形を行った実験では、カンラン石の粒界にリングウッダイトのナノ粒子(粒径 ~ 100 nm)からなる網目状ネットワークが形成されており、これが試料全体の“均質”な軟化を引き起こしたと考えられる。以上の結果より、マントル遷移層最下部(深さ~ 660 km、封圧 ~ 24 GPa)に位置するMOWでは、カンラン石のキンクバンド形成に伴う粉砕、およびその粒界におけるリングウッダイトのナノ粒子形成が卓越するため、剪断集中及び断層形成を伴う“不均質”な変形は抑制されると考えられる。
