講演情報

[S3-11]リングウッダイトの変形実験

チェン ジユアン1、*山崎 大輔1 (1. 岡山大学)

キーワード:

リングウッダイト、粘性率

地球型惑星のダイナミクスを理解する上で、マントルを構成している岩石のレオロジーを解明することは本質的に重要である。とくに、オリビンとその高圧多形は地球型惑星において主要な鉱物相であり、その粘性率はマントルの流動の規模や速度などの推定に不可欠な物性である。これまで、実験的制約から、ワズレアイトやリングウッダイトなどの高圧鉱物に関しては粘性率の実験的研究は、きわめて限定的であった。粘性率の鉄依存性に至っては全く研究されていない。地球マントルは鉄含有量としてMg#=90程度と考えられるが、他の惑星、例えば火星では、Mg#は75~80程度と考えられている。そこで、地球のみならず他の惑星のマントル流動に新たな制約を与えるために、本研究では、ここ10年で開発されたD-111型高圧変形装置を用いてリングウッダイトの変形実験を行い粘性率に対する鉄依存性を調査した。D-111装置では川井型高圧セルを用いることができる。このセル内に変形軸方向に2つ試料を挿入し相対的な変形挙動を観察する試料急冷法と放射光X線その場観察により応力を測定し絶対的に変形挙動を測定するその場観察法の2種類の実験を行った。前者では、試料にMg#を40~90程度まで広く変化させた2つの試料の回収後に得られる相対的な変形量から粘性差を見積もった。後者では、リングウッダイト自体あるいは応力測定標準物質として試料と変形軸直列方向に挿入したアルミナのデバイ環の偏差から弾性定数にもとづき応力を算出し、またラジオグラフィで得られる変形量から粘性率を見積もった。実験に用いた試料は予め川井型マルチアンビル装置で合成・焼結したリングウッダイト多結晶であり、粒径は5-10 μmである。実験の圧力は16-22 GPaで温度は1200-1300℃である。歪み量は最大で20 %程度であり、歪み速度は、10E-4 /s~10E-5 /sとなる。回収した試料の微細構造観察から、波打っている粒界をもつ扁平した粒子の存在が確認され、転位クリープが支配的な変形機構であるとことが示唆される。この結果は、その場観察による応力-歪み速度関係から予測される結果と一致する。また、実験条件を鑑みると先行研究とも調和的な結果と言える。変形量に着目すると、鉄の量を変化させても、大きな相違がなく鉄の粘性率への影響が小さいことがこれまでのところ判明している。一方で、ガス圧変形試験によるオリビンの先行研究では、本実験での鉄濃度変化に対して一桁以上の粘性差を報告しており、シリコン欠陥が変形を律速していると仮定すると、それぞれの実験での、鉄の濃度に対するシリコン欠陥の依存性が異なっていることが推定できる。近年火星のマントルについて、地球よりも1-2桁高い粘性率が推定されている。粘性率は低温では高くなり、高温で低くなる。本研究のリングウッダイトについての結果は、鉄の含有量に対する粘性率低下が非常に小さいため、推定されている粘性率を説明できる可能性がある。しかしながら、現在のところ、十分なデータが取得されているとはいえず、今後、追試とその場観察実験の詳細なデータ解析を進めていく。