講演情報
[AAS08-P04]グリーンランドSE-Dome IIコアから復元した産業革命以降のCH4濃度変動
*鈴木 舞生1、大藪 幾美2,1、川村 賢二2,1、菅原 敏3、梅澤 拓4、飯塚 芳徳5 (1.総合研究大学院大学、2.国立極地研究所、3.宮城教育大学、4.東北大学大学院理学研究科、5.北海道大学低温科学研究所)
キーワード:
アイスコア、メタン、フィルン、グリーンランド
メタン(CH4)は水蒸気と二酸化炭素に次ぐ重要な温室効果ガスであり,その放出源は人為起源と自然起源の両者である.大気CH4の直接観測は北極,南極ともに1980年代から始まったため,これより前のCH4濃度はアイスコアから復元する必要がある.南極では,高涵養量域で掘削されたLaw Domeコアから高精度かつ高分解能なデータが得られている (Rubino et al., 2019).一方グリーンランドにおいては,不純物による氷床内生成CH4や,密度が異なる冬層と夏層で形成した気泡の年代逆転,Law Domeに匹敵する高涵養量域で掘削されたアイスコアが存在しなかったことなどにより,1800年代以降の正確な濃度データが得られていない(Rhodes et al., 2013; Umezawa et al., 2022).そこで本研究では,グリーンランド南東部の高涵養量域 (1.04 ± 0.20 m w.e. year-1; Kawakami et al., 2023) で掘削された全長250 mのSE-Dome IIコア (67°19’17” N, 36°47’03” W, 3,161m a.s.l; Iizuka et al., 2021) を用い,19世紀以降の北極域のCH4濃度を復元した.1回の分析に1年分の長さの試料(約1 m)を用いることにより,フィルン底部での不均一な空気の取り込み過程による空気年代の逆転や不連続性を最小限に抑えつつ,約1年の時間分解能による連続的な復元を行った.
空気はフィルン(氷床上部の通気性がある層:その厚さは本研究の掘削地点で約90m)の底部で気泡として閉じ込められるため,同深度の氷と空気には年代差が生じる(Δage).
Gas age = Ice age - Δage
SE-Dome IIアイスコアの氷年代は西暦1799−2020年であり,H2O2濃度プロファイルを用いてKawakami et al (2023) により半年以内の誤差で決められている.本研究では,①大気の直接観測データ (Lan et al., 2025) とSE-Dome IIアイスコアデータを比較して直接観測と重複している期間の平均のΔageを求め,②フィルンの圧密モデル (Herron and Langway, 1980)とフィルン空気の輸送モデル (Sugawara et al., 2003),フィルン空気の年代推定式 (Buizert et al., 2013) を用いてΔageの時間変化を計算することにより,空気年代を推定した.
その結果,1840年代のCH4濃度は約830 ppbであったが,1940年代後半以降急増し,2000年代には1800 ppbを超えたことが明らかになった.従来のグリーンランドコアの結果から報告されたスパイク状の異常値は,SE-Dome IIコアの結果には見られなかった.その理由として,高涵養量域で掘削されたSE-Dome IIコア中の不純物濃度は他のコアより低いため,氷床内でのCH4生成が抑えられたことが考えられる.
北極域のCH4濃度の年増加率は1940年代まで10 ppb yr-1以下であったが,1940年代後半に大きく増加し始め,直接観測が始まる前の1970年代に20 ppb yr-1を超え,過去200年間で最大の増加率を示した.
SE-Dome IIコアとLaw Domeコアデータから,1840年代から1980年代までの北極と南極の濃度差を計算した.Mitchell et al. (2013) によれば1600年から1800年までの濃度差は約40 ppbであった.本研究により1840年代までに濃度差は約50 ppbまで増大し,1940年代には80 ppbに達したことが明らかとなった.CH4濃度の急激な増加が見られた1940年代後半以降において,濃度差は大きな変動を伴いながら増大し,1980年(直接観測が始まる直前)には160 ppbを超えた.CH4濃度の年増加率および南北差が1940年代以降に大きく増加したことから,この時期に北半球のCH4放出源強度が強まったことが示唆された.
空気はフィルン(氷床上部の通気性がある層:その厚さは本研究の掘削地点で約90m)の底部で気泡として閉じ込められるため,同深度の氷と空気には年代差が生じる(Δage).
Gas age = Ice age - Δage
SE-Dome IIアイスコアの氷年代は西暦1799−2020年であり,H2O2濃度プロファイルを用いてKawakami et al (2023) により半年以内の誤差で決められている.本研究では,①大気の直接観測データ (Lan et al., 2025) とSE-Dome IIアイスコアデータを比較して直接観測と重複している期間の平均のΔageを求め,②フィルンの圧密モデル (Herron and Langway, 1980)とフィルン空気の輸送モデル (Sugawara et al., 2003),フィルン空気の年代推定式 (Buizert et al., 2013) を用いてΔageの時間変化を計算することにより,空気年代を推定した.
その結果,1840年代のCH4濃度は約830 ppbであったが,1940年代後半以降急増し,2000年代には1800 ppbを超えたことが明らかになった.従来のグリーンランドコアの結果から報告されたスパイク状の異常値は,SE-Dome IIコアの結果には見られなかった.その理由として,高涵養量域で掘削されたSE-Dome IIコア中の不純物濃度は他のコアより低いため,氷床内でのCH4生成が抑えられたことが考えられる.
北極域のCH4濃度の年増加率は1940年代まで10 ppb yr-1以下であったが,1940年代後半に大きく増加し始め,直接観測が始まる前の1970年代に20 ppb yr-1を超え,過去200年間で最大の増加率を示した.
SE-Dome IIコアとLaw Domeコアデータから,1840年代から1980年代までの北極と南極の濃度差を計算した.Mitchell et al. (2013) によれば1600年から1800年までの濃度差は約40 ppbであった.本研究により1840年代までに濃度差は約50 ppbまで増大し,1940年代には80 ppbに達したことが明らかとなった.CH4濃度の急激な増加が見られた1940年代後半以降において,濃度差は大きな変動を伴いながら増大し,1980年(直接観測が始まる直前)には160 ppbを超えた.CH4濃度の年増加率および南北差が1940年代以降に大きく増加したことから,この時期に北半球のCH4放出源強度が強まったことが示唆された.
