講演情報

[AAS08-P06]PandoraリモートセンシングNO2データの検証

*石井 澄伶1、北 和之1、藤縄 環2、猪俣 敏2、杉田 考史2、Müller Astrid2、塩見 慶3、谷本 浩志2 (1.茨城大学理学部、2.国立環境研究所、3.宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

キーワード:

Pandora、リモートセンシング、NO2、検証、GOSAT-GW

2025年6月29日に打ち上げられた温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)は、GOSAT、GOSAT-2の観測対象である二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)に加えて新たに二酸化窒素(NO2)が観測可能である。NO2は、化石燃料等の燃焼でCO2とともに排出されるが、CO2よりも大気中寿命が短く排出の影響を受けた気塊中での濃度増加が著しい。そこでNO2とCO2を同時に観測することで、CO2排出量の推定精度の向上が期待される。
GOSAT-GWのNO2データの検証には地上設置のPandora Sun Photometerおよびこの装置を用いた観測ネットワークPandonia Global NetworkによるNO2データが利用される。本研究ではGOSAT-GWの検証に先立ち、まずPandora NO2データの精度の検証を行うため、誤差の大きさとその変化要因を明らかにすることを目的としている。

Pandora(Cede, 2024)はNO2の鉛直カラム量(VCD)をDirect-sun(DS)モードとSky-scan(SS)モードの2つのモードで測定する。DSモードでは太陽直達光スペクトルを計測し差分吸光(DOAS)法によりNO2全量を測定する。衛星観測で求められたNO2成層圏VCD気候値を全量から差し引くことでNO2対流圏VCD(以下単に対流圏VCDと書く)も推定している。SSモードでは複数の仰角からの太陽散乱光スペクトルを計測し、多軸差分吸光(MAX-DOAS)法により対流圏VCDおよび地表NO2濃度を導出する。
本研究では、つくばの国立環境研(NIES)に設置されたPandora163および176(数字は製造番号)と、JAXA筑波宇宙センターに設置されたPandora193による観測データを用いて、①地表でのNO2直接観測データ(NIES設置のCAPS装置および周囲常時監視局4か所の中央値)とPandora地表NO2濃度データとの比較、②各PandoraのDSモードとSSモードで観測された対流圏VCDの比較、③3台のPandoraで観測された対流圏VCDの相互比較を行った。対象期間は3台のPandora装置データがそろっている2025年2月1日から2025年8月31日とした。

図1(左)は、Pandora176によりDSモードとSSモードで測定された対流圏VCDの1時間平均値を比較した散布図である。GOSAT-GWの観測時間である13~14時では、SS/DS=1.02±0.015 [10-3 mol/m2]とよく一致していた。ただし、図1(右)に示すように、両モードの対流圏VCD測定値とCAPSで測定した地表NO2濃度をそれぞれ比較すると、特にDSモードでの対流圏VCDは、地表NO2濃度が0に近いときに、約0.04×10-3mol/m2のオフセットを持つことが分かった。NO2対流圏VCDの大部分は地表に存在することを考慮すると、このオフセットは、有意なものである可能性が高く、SSモードでは観測データから地表からのNO2高度分布を推定しているのに対し、DSモードではNO2全量を測定し成層圏VCD気候値を差し引くことで対流圏VCDを推定しているために生じている可能性がある。
図2に、SSモード(左)およびDSモード(右)でPandora163, 176, 193の3台が同時に観測した対流圏VCDの各測定値と3台の平均値の差のヒストグラムを示す。SSモードでは明確な器差は見られなかった一方、DSモードでの平均値からの差は、平均でP163が-0.0004 [10-3mol/m2]、P176が0.0067、P193が-0.0062となり、標準偏差と同程度の大きさの器差があることを示している。SSモードとDSモードでの違いは、PandoraでSSモードのほうがVCDの標準偏差が大きいことやDSモードでは仰角が大きくSSモードよりも水平方向に狭い領域を見ているため、測定場所による違いが大きく現れることなどにもよるが、両モードともにPandora176が系統的に大きな値を示すことは装置関数の誤差などに起因する器差があることを示唆している。
さらに、ランダム誤差の主な原因について調べた。DSモードでは、太陽直達光路にかかる雲の影響を示す大気変動性の値がランダム誤差に有意な影響を与えているのに対し、SSモードでは主な誤差要因として考えられるスペクトルフィッティング誤差はランダム誤差にそれほど大きな影響を与えていなかった。