講演情報

[AAS08-P07]つくばFTIRで観測された大気微量成分の経年変化

*村田 功1、森野 勇2 (1.東北大学大学院環境科学研究科、2.国立環境研究所)

キーワード:

フーリエ変換型分光計、大気微量成分、経年変化

東北大学と国立環境研究所では、つくばでの Network for the Detection of Atmospheric Composition Change (NDACC) 観測規約に基づくフーリエ変換型分光計(FTIR)を用いた大気微量成分観測を1998年から行っている。この観測では広い波数領域のスペクトルを高波数分解能で取得できるため、様々な成分の解析が可能である。NDACCのInfraRed Working Group (IRWG)では各観測サイト間のデータの均質性および精度の確保を目的として、観測手法や解析パラメータの共通化を進めており、つくばでも現在14種程度の大気微量成分についてこれに従った解析を進めている。今回はこれらの成分の最近の経年変化についてまとめて報告する。
観測に用いているFTIRはドイツ・ブルッカー社の125HR(2010年3月までは120HR)で、観測波数分解能は0.0035 cm-1 である。太陽を光源として2-15 µmの赤外吸収スペクトルを観測することで大気中の各微量成分のカラム量を得られる。また、波数分解能が高いため吸収線の1本1本を独立して測定できることから、その吸収線の圧力広がりを利用して高度分布に関してもある程度の情報を得ることができる。解析にはIRWGで共通して用いられているスペクトルフィッティングプログラムSFIT4 v1.0.21を使用しており、定常的に解析している成分はO3, HNO3, HCl, HF, CO, N2O, CH4, HCN, C2H6, ClONO2, HCHO, OCS, NH3, C2H2, NO2である。解析期間は成分によって異なるが、長いものでは2001年以降ほぼ欠測期間なく解析を行っている。O3, HNO3等10 µm帯のスペクトルを用いる解析に関しては、観測の都合上2014年以降を中心に解析を行っている。
以下、カラム量の解析結果を中心に経年変化について概要を述べる。O3については、2014-2025のカラム量の経年変化は-0.2%/yr程度の若干の減少を示す。成層圏オゾンは全球的にはフロン規制の効果により増加トレンドが見られるが、衛星観測の結果でも地域によっては減少傾向が見られるところもあり、変動要因の解析が進められているところである。つくばではドブソン分光計によるオゾン全量観測の解析でも若干の減少傾向が見られており、我々の結果はこの傾向と一致している。また、O3については観測のdegrees of freedom for signal (DOFS)が4~5程度と高度分解可能なため、対流圏、下部成層圏、中部成層圏と部分カラムに分けて解析してみると、下部成層圏で有意な減少傾向が見られる。
フロン規制の効果が見られるものとして、HCl, HFもある。成層圏の塩素量は1990年代後半から緩やかな減少傾向となり、塩素の主なリザーバーであるHClも減少に転じることが期待されるが、2001-2025のカラム量の経年変化を見ると数年周期の増減が見られ、これは成層圏循環の変動によると考えられている。全期間の直線トレンドを引いてみるとほぼゼロで、明確な減少傾向はまだ見られない。HFもその主な発生源はフロン類であるが、フッ素は代替フロンにも多く含まれるためか、2001-2025の直線トレンドは+1%/yr弱の増加傾向である。なお、HFにもHCl同様の数年周期の増減が見られる。
温室効果気体であるCH4, N2Oを見てみると、2010年以降でCH4が+0.6%/yr程度、N2Oが+0.3%/yr程度と、いずれも地上付近の濃度の増加率と同程度の増加傾向が観測されている。
COについては日々の変動が大きいものの、2010年以降で-1%/yrを超える減少傾向が見られ、これも地上付近の観測結果と傾向は一致する。
講演ではその他の成分についても経年変化の傾向やその要因について報告する。