講演情報
[AAS08-P38]風の場に基づく局所化を導入した LETKF による関東大都市圏の人為起源 CO₂ 排出量推定
*新井 豊1、今須 良一2、王 乔2、近藤 裕昭3 (1.東京大学 大学院 博士課程 新領域創成科学研究科 自然環境学専攻、2.東京大学 大気海洋研究所、3.国立研究開発法人 産業技術総合研究所)
キーワード:
二酸化炭素、排出量推定、領域モデル、衛星観測データ、データ同化、局所化半径
地球の大気中に存在する二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化に強い影響を及ぼす主要な温室効果ガス(GHGs)の一つである。温暖化の影響評価には地球規模の炭素循環の理解が不可欠であり、その鍵となるのが大気中のCO2濃度の挙動である。大気中のCO2濃度は産業革命以降急速に増加しており、その主要因は化石燃料の大量消費に起因する人為起源排出である。これらの多くは地球表面のごく一部に過ぎない都市域から放出されているため、炭素循環研究の対象として都市域が重要視されている。
都市部における詳細なCO2排出量データセットが整備されつつあるものの、作成手法に一貫性がなく、排出源の多様性や統計基盤情報の不統一といった課題が残されており、都市域の排出量データには依然として大きな不確実性が存在する。そのため、都市域におけるCO2排出量推定のさらなる精度向上が求められている。
近年、モデル計算の高精度化と観測技術の著しい向上により、CO2排出量を推定するためにデータ同化と呼ばれる計算手法が広く用いられるようになってきた。データ同化とはベイズ推定に基づく統計手法であり、観測値・モデル計算値・それぞれの誤差を考慮して最適な推定値を導く手法である。
そこで本研究では、この不確実性を低減し、都市域におけるCO2排出の実態把握を改善することを目的とし、領域モデル AIST-MM(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology–Mesoscale Model)と衛星観測データ OCO-3(Orbiting Carbon Observatory-3)を用いたデータ同化によりCO2排出量の推定を行った。
AIST-MMは、関東大都市圏を含む外側領域を約10km格子で計算し、その結果を用いて内側領域(関東大都市圏)を約2km格子で詳細に計算する1-way ネスティングモデルである。外側領域の気象場にMSM-GPV(MesoScale Model Grid Point Value)をナッジングデータとして用いた。また、海洋表面温度にはNOAAのOISST v2.1(Daily Optimum Interpolation Sea Surface Temperature)を用いた。人為起源CO2排出量にはEAGrid2000-Japanを基盤とし、Greenhouse Gas Inventory Officeの『日本の温室効果ガス排出量データ1990-2023(確報値)』を用いて年間排出量を調整したデータを使用した。植物呼吸・光合成および土壌呼吸によるCO2フラックスには、BEAMSdiurnal-V2fの計算結果を用いた。
また、関東大都市圏のような人口密集地域では、人間の呼吸によるCO2排出も無視できないため、本研究では国土数値情報の「500 mメッシュ別将来推計人口データ(H30国政局推計、shape形式版)」(国土交通省、https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html) を加工して人口分布データセットを作成し、モデルに組み込んだ。人間1人当たり1日の平均的な呼吸量は1 kg CO2 person-1 day-1 とされている。この値を基準値とし、睡眠時の安静状態から日中の活動状態までの人の一般的な1日の生活サイクルを反映した時間別排出係数を作成した。最終的に、各格子における人の呼吸由来CO2排出量は、この時間別排出係数を人口分布データに乗じることで算出した。
データ同化手法としては、CO2排出量を推定するために変数を拡張したLETKF(Local Ensemble Transform Kalman Filter)を用いた。これまで一般的に距離に基づく円形の局所化が用いられてきたが、本研究では移流に関わる風の場に基づいて局所化範囲を設定することで、同化の安定性と精度の向上を図る。
現在は、風向・風速に応じて局所化範囲を動的に変化させる手法の実装を進めている。今後は、本手法を同化システムに組み込んだ運用を目指している。
都市部における詳細なCO2排出量データセットが整備されつつあるものの、作成手法に一貫性がなく、排出源の多様性や統計基盤情報の不統一といった課題が残されており、都市域の排出量データには依然として大きな不確実性が存在する。そのため、都市域におけるCO2排出量推定のさらなる精度向上が求められている。
近年、モデル計算の高精度化と観測技術の著しい向上により、CO2排出量を推定するためにデータ同化と呼ばれる計算手法が広く用いられるようになってきた。データ同化とはベイズ推定に基づく統計手法であり、観測値・モデル計算値・それぞれの誤差を考慮して最適な推定値を導く手法である。
そこで本研究では、この不確実性を低減し、都市域におけるCO2排出の実態把握を改善することを目的とし、領域モデル AIST-MM(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology–Mesoscale Model)と衛星観測データ OCO-3(Orbiting Carbon Observatory-3)を用いたデータ同化によりCO2排出量の推定を行った。
AIST-MMは、関東大都市圏を含む外側領域を約10km格子で計算し、その結果を用いて内側領域(関東大都市圏)を約2km格子で詳細に計算する1-way ネスティングモデルである。外側領域の気象場にMSM-GPV(MesoScale Model Grid Point Value)をナッジングデータとして用いた。また、海洋表面温度にはNOAAのOISST v2.1(Daily Optimum Interpolation Sea Surface Temperature)を用いた。人為起源CO2排出量にはEAGrid2000-Japanを基盤とし、Greenhouse Gas Inventory Officeの『日本の温室効果ガス排出量データ1990-2023(確報値)』を用いて年間排出量を調整したデータを使用した。植物呼吸・光合成および土壌呼吸によるCO2フラックスには、BEAMSdiurnal-V2fの計算結果を用いた。
また、関東大都市圏のような人口密集地域では、人間の呼吸によるCO2排出も無視できないため、本研究では国土数値情報の「500 mメッシュ別将来推計人口データ(H30国政局推計、shape形式版)」(国土交通省、https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html) を加工して人口分布データセットを作成し、モデルに組み込んだ。人間1人当たり1日の平均的な呼吸量は1 kg CO2 person-1 day-1 とされている。この値を基準値とし、睡眠時の安静状態から日中の活動状態までの人の一般的な1日の生活サイクルを反映した時間別排出係数を作成した。最終的に、各格子における人の呼吸由来CO2排出量は、この時間別排出係数を人口分布データに乗じることで算出した。
データ同化手法としては、CO2排出量を推定するために変数を拡張したLETKF(Local Ensemble Transform Kalman Filter)を用いた。これまで一般的に距離に基づく円形の局所化が用いられてきたが、本研究では移流に関わる風の場に基づいて局所化範囲を設定することで、同化の安定性と精度の向上を図る。
現在は、風向・風速に応じて局所化範囲を動的に変化させる手法の実装を進めている。今後は、本手法を同化システムに組み込んだ運用を目指している。
