講演情報
[AAS08-P45]衛星画像を用いた森林火災におけるSO2の移流高度に関する解析
*大島 七海1、徳植 啓康2,8、定講 ささら8、松崎 絹佳8、橋本 朝陽3,8、柴田 眞子4,8、川俣 大志5,8、成瀬 延康6、高橋 幸弘7,8 (1.市立札幌開成中等教育学校、2.名古屋大学 宇宙地球環境研究所、3.北海道立総合研究機構 林業試験場、4.エディンバラ大学、5.北海道大学 大学院 教育推進機構、6.滋賀医科大学 医学部医学科、7.北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻、8.NPO法人 スーパーサイエンティストプログラムプラス)
キーワード:
森林火災、二酸化硫黄、衛星リモートセンシング
森林火災は年々増加しており、Alexandra Tyukavina et al. (2022)は2001年から2019年までの期間では全世界で平均302,400 ha/年増加していると推定している。大規模森林火災の増加に伴い、大気中へ放出される二酸化硫黄(SO2)の広域輸送とその気候影響が注目されている。SO2は酸化過程を経て硫酸塩エアロゾルを形成し、放射収支および雲微物理特性を変化させ得る。さらに、強い対流活動を伴う場合には、火災起源成分が上部対流圏や成層圏下部へ輸送され、高い高度まで大気に影響を与える。したがって、SO2の鉛直分布を含む三次元的な時空間挙動の把握は、森林火災の大気影響評価において本質的に重要である。
Gautam et al. (2023)は、森林火災時の地表面でのSO2濃度の実測と後方流跡線解析、火災発火地点の衛星画像を組み合わせることで、SO2の移流経路を推定した。しかしこの方法は代表高度の仮定に基づく解析に依存しており、SO2の実際の鉛直分布は直接的に考慮されていない。またMike Burton et al. (2024)は火山を対象に、後方流跡線解析とSO2濃度の衛星観測を利用することで噴火後のSO2の高度の時系列変化を推定した。しかし、森林火災におけるSO2排出量は火山噴火と比較して低く、検出感度の制約から高度依存輸送の評価は依然として十分な解明がなされていないのが現状である。
本研究では、森林火災で排出されたSO2が移流している高度を明らかにすることを目的に、高度ごとの流跡線解析の結果と衛星画像のSO2分布を比較した。48時間後のSO2分布と空気塊の位置を比較するため、前方流跡線解析を用いた。衛星画像は、Sentinel-5Pによって撮影された2020年9月9日から11日までのアメリカ・カルフォルニア州付近の画像(計6枚, Sentinel-5 Precursor Level 2 Sulphur Dioxide)を用いた。Sentinel-5PにおけるSO2の検出下限が1.0×10-4 mol/m2であるのに対し、この森林火災では最高値で約2.0×10-3 mol/m2が観測されており、解析に十分な濃度だと判断した。流跡線解析には、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)により推定された再解析データ(ERA5)の水平風を使用した。SO2分布のうち濃度の高い20地点を開始点とし、100 hPaから900 hPaまで16段階の気圧面ごとに空気塊の経路を求めた。流跡線の終着点の周囲半径30 km以内にSO2濃度の高い領域が含まれている場合、SO2濃度の高い領域と流跡線の終着点が一致したとみなした。
衛星画像によると、9月11日の主なSO2濃度の高い領域は、発火地点から南東に位置していた。48時間前方流跡線解析の結果、主に450-550 hPaの終着点はSO2濃度が高い領域の北西から南西部に、400 hPaの終着点は濃度が高い領域の中央部に到達していた。このことから衛星によって観測されたSO₂濃度の高い分布は主に400-550 hPaの連続的な範囲の気圧面での移流によって形成されたと考えられる。また、同一の開始点から計算された流跡線は、複数の気圧面で終着点がSO2濃度の高い領域に到達したことから、同じ地点から連続した気圧面で移流したと考えられる。これらの結果から、衛星画像のSO2分布と気圧面ごとの流跡線解析により、森林火災におけるSO2濃度の高い領域が、連続した高度分布で移流することが示された。
本研究の一部は、公益財団法人電気通信普及財団による「ICTとハンズオンを併用したSDGs課題解決能力を 有する人材育成法の開発(滋賀医科大学、2024年度)」の助成および、NPO法人スーパーサイエンティストプログラムプラスによる支援を受けた。
Gautam et al. (2023)は、森林火災時の地表面でのSO2濃度の実測と後方流跡線解析、火災発火地点の衛星画像を組み合わせることで、SO2の移流経路を推定した。しかしこの方法は代表高度の仮定に基づく解析に依存しており、SO2の実際の鉛直分布は直接的に考慮されていない。またMike Burton et al. (2024)は火山を対象に、後方流跡線解析とSO2濃度の衛星観測を利用することで噴火後のSO2の高度の時系列変化を推定した。しかし、森林火災におけるSO2排出量は火山噴火と比較して低く、検出感度の制約から高度依存輸送の評価は依然として十分な解明がなされていないのが現状である。
本研究では、森林火災で排出されたSO2が移流している高度を明らかにすることを目的に、高度ごとの流跡線解析の結果と衛星画像のSO2分布を比較した。48時間後のSO2分布と空気塊の位置を比較するため、前方流跡線解析を用いた。衛星画像は、Sentinel-5Pによって撮影された2020年9月9日から11日までのアメリカ・カルフォルニア州付近の画像(計6枚, Sentinel-5 Precursor Level 2 Sulphur Dioxide)を用いた。Sentinel-5PにおけるSO2の検出下限が1.0×10-4 mol/m2であるのに対し、この森林火災では最高値で約2.0×10-3 mol/m2が観測されており、解析に十分な濃度だと判断した。流跡線解析には、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)により推定された再解析データ(ERA5)の水平風を使用した。SO2分布のうち濃度の高い20地点を開始点とし、100 hPaから900 hPaまで16段階の気圧面ごとに空気塊の経路を求めた。流跡線の終着点の周囲半径30 km以内にSO2濃度の高い領域が含まれている場合、SO2濃度の高い領域と流跡線の終着点が一致したとみなした。
衛星画像によると、9月11日の主なSO2濃度の高い領域は、発火地点から南東に位置していた。48時間前方流跡線解析の結果、主に450-550 hPaの終着点はSO2濃度が高い領域の北西から南西部に、400 hPaの終着点は濃度が高い領域の中央部に到達していた。このことから衛星によって観測されたSO₂濃度の高い分布は主に400-550 hPaの連続的な範囲の気圧面での移流によって形成されたと考えられる。また、同一の開始点から計算された流跡線は、複数の気圧面で終着点がSO2濃度の高い領域に到達したことから、同じ地点から連続した気圧面で移流したと考えられる。これらの結果から、衛星画像のSO2分布と気圧面ごとの流跡線解析により、森林火災におけるSO2濃度の高い領域が、連続した高度分布で移流することが示された。
本研究の一部は、公益財団法人電気通信普及財団による「ICTとハンズオンを併用したSDGs課題解決能力を 有する人材育成法の開発(滋賀医科大学、2024年度)」の助成および、NPO法人スーパーサイエンティストプログラムプラスによる支援を受けた。
