講演情報

[AAS08-P46]雲仙岳から撮影したカメラ画像解析による霧発生状況およびエアロゾル濃度の推定

*住吉 七海1、大橋 勝文1、中山 智喜2 (1.国立大学法人鹿児島大学大学院理工学研究科、2.国立大学法人長崎大学環境科学部)

キーワード:

エアロゾル、霧、画像処理、タイムラプスカメラ

エアロゾル粒子の吸湿成長および雲・霧粒子の生成は、水循環において重要な役割を果たしており、エアロゾル粒子の動態や霧の発生状況の理解が求められている。山岳域における霧粒子のその場観測は、時間分解能が高いデータを連続的に取得できる利点があるが、コストや技術的制約により、高精度な計測機器を用いた霧の発生過程や特性に関する長期観測を実施している地点は極めて限られている。一方、定点カメラによる画像の取得は、多地点で低コストかつ簡便に実施可能である。また、遠方の望む定点カメラの画像は、広範囲のエアロゾル濃度の情報を含んでいると考えられる。近年、画像解析技術が進歩しており、その技術をカメラ画像の解析に応用することで、大気科学的に有益な情報が得られると期待できる。そこで本研究では、画像解析技術を用いて、長崎県の雲仙岳で定点カメラにより取得した画像の画像劣化度を推定し、雲仙岳における雲粒子数密度や、山麓のエアロゾル濃度データと比較することで、霧の発生状況およびエアロゾル濃度の推定手法の開発を目指した。

長崎県雲仙市にある雲仙・妙見岳の展望所(標高1300 m)においてタイムラプスカメラを用いて、10分毎に画像を取得した。また、同地点に雲粒子測定器(CPS)を設置し、数密度などの観測を実施した。本研究では、2022年3月~2024年3月のデータを解析に使用した。撮影画像のうち、展望所の手すり付近以外は見えない画像(以下霧画像とする)ではカメラ付近の環境情報しか得られない一方で、対岸の天草まで見える画像(以下霧なし画像とする)では、見える対象物までのエアロゾルの積算量の影響を受ける。そこで、RGB画素値の合計値を用いて霧画像と霧なし画像を選別し、霧画像の解析結果と雲仙岳における雲粒子の観測データと比較した。

霧画像では、雲仙・妙見岳の展望所に設けられた手すりの輪郭の見え方に着目し、画像劣化を定量化する。本研究では、画像内の手すり領域に対して、ガウシアンフィルタのサイズを5×5ピクセルに設定したCanny法を適用し、得られた画像のエッジ量から画像の劣化度を数値化した。その数値とCPSにより測定した雲粒数密度と相関をとったところ、春と秋に0.7以上の高い相関を得た。

次に、霧なし画像を用いて、天草などの熊本の地形の画像が、エアロゾルの影響でどの程度劣化するかを数値化した。画像の劣化度は、画像中の指定範囲における Sobel 勾配強度の平均値を用いて数値化した。展望所(長崎県)に近い島原局(長崎県)および天草局(熊本県)の2箇所について、環境省大気汚染物質広域監視システムによる大気汚染常時監視データの1時間平均のSPM濃度を取得し、比較に用いた。SPM濃度と画像の劣化度(Sobel 勾配強度平均)との相関解析の結果、島原では季節別に0.41~0.78の相関係数が得られたのに対し、天草では0.31~0.41の範囲にとどまった。島原局で測定されたSPM濃度が、天草局に比べて、展望所から視界対象までの積算濃度の変動を反映していたと考えられる。