講演情報

[AAS15-P01]四国における線状降水帯の発生・非発生事例の比較

*原 清貴1、村田 文絵1 (1.高知大学)

キーワード:

線状降水帯、四国、環境パラメータ、発生条件

日本で発生する土砂災害の半数以上は線状降水帯に起因するが,その予測は困難である.本研究は,線状降水帯の発生頻度の高い四国において,線状降水帯が発生する可能性はあったが,実際には発生しなかった事例を非発生事例として抽出し,発生事例との比較を通じて,線状降水帯の発生・維持に関わる環境場を明らかにすることを目的とする.非発生事例は発生事例の環境場の特徴を基にして抽出した.
線状降水帯の事例抽出には1kmメッシュ全国合成レーダーGPVを用いた.環境場の解析はメソ数値予報モデルGPV,総観場の判断には地上天気図を使用した.解析期間は2006年~2024年の5月~10月である.線状降水帯の発生事例は,3時間積算雨量80mmの領域面積が500km2以上で長軸短軸比≧2.5,その領域内に3時間積算雨量150mm以上を含むことを条件として抽出した.その結果,65事例が得られた.これらの線状降水帯は,発生場所ごとに特有の走向を示したため,発生場所と走向に基づき事例を9つに分類した.
分類ごとに,Kato(2020)が示した線状降水帯が発生しやすい6条件のうち,鉛直流を除いた5条件(以下,Katoの5条件)と,風を解析した.その結果,ほとんどの発生事例において,発生場所周辺でKatoの5条件が満たされ,また抽出された線状降水帯の走向は,600hPaの風と最も良い一致を示したため,本研究ではこの高度の風を中層風として定義した.多くの発生事例では線状降水帯の走向と中層風の風向は一致していた.さらに,分類された線状降水帯は発生場所ごとに特定の下層風・中層風の風向が存在することが明らかになった.これらの結果は,下層風および中層風の風向が,線状降水帯の発生や発生場所を示す有用な指標となり得ることを示唆している.一方で,走向と中層風が一致しない事例では台風等が付近に存在しており,発生場所の地形が関係した地形性降雨の可能性がある.
上記の結果を用いて,線状降水帯の発生事例が特に多い高知西部沿岸および室戸東部沿岸〜徳島県南部沿岸(以下,徳島域)に着目した.これら2地域で,Katoの5条件を満たし,下層風が南東風,中層風が南西風と発生事例と同様の風向を示した事例を「非発生事例」として抽出した.その結果,Katoの5条件のみを満たす事例数は,高知西部沿岸で2,280事例,徳島域で2,184事例であったが,風向条件を加えることで,それぞれ334事例,330事例まで絞り込まれた.さらに,非発生事例を精選するためKatoの5条件に加え,CAPE,E-CAPE,KT-indexの計8つの環境指標を用いた解析を行った.その結果,発生事例では700hPaの相対湿度,KT-indexが非発生事例より有意に大きいことが明らかとなった.そこで,発生事例におけるKT-indexの最小値であるKT-index ≧ −7Kを追加条件とした結果,高知西部沿岸で241事例,徳島域で251事例まで減少した.以上の結果から,Katoの5条件に加え,風向条件およびKT-indexを組み合わせると,線状降水帯の発生条件の判別に有効である可能性が示された.