講演情報

[AAS15-P02]Environmental fields associated with tornadoes relative to their genesis points★招待講演

*三田 優里1、神山 翼1、栃本 英伍3、新野 宏2 (1.お茶の水女子大学、2.東京大学、3.気象庁気象研究所)

キーワード:

竜巻

日本における竜巻の発生および維持に関わる環境要因の理解を深めるため,本研究では,熱力学的・力学的指標によって特徴づけられる竜巻好適環境場の統計的解析を行う。これまでの研究では,台風(Sueki and Niino 2016)や温帯低気圧(Tochimoto et al. 2019)に伴う大規模環境場に着目した解析が行われてきたが,竜巻発生の時刻・位置を基準とした環境指標の統計的検討は限定的であった。本研究では,竜巻発生地点を中心としたコンポジット解析を適用することで,この課題に取り組む。

本研究で用いる竜巻の環境指標には,熱力学的不安定を表すCAPEおよび,鉛直風シアに伴う回転強度を示すStorm-Relative Helicity(SReH)が含まれる。さらに,条件付不安定度および対流圏中層の水蒸気量を考慮し、豪雨向けにK指数を改良したKT-indexについても,竜巻環境への適用可能性を検討する。

気象庁の「竜巻等突風データベース」に基づく1961~2023年の竜巻事例を対象とし,竜巻発生時刻および発生位置を基準として,CAPE,SReH,KT-indexおよび関連する環境場のコンポジット解析を行う。指標計算には,水平解像度0.25°,時間解像度1時間のERA5再解析データを用いる。その結果,SReHおよびKT-indexは竜巻発生位置付近で顕著な極大を示し,竜巻好適環境の特徴づけに有効であることが示された。また,各事例に対して全竜巻の気候平均を差し引いた上でコンポジットを作成すると,CAPEを含む各指標の極大がより明瞭に強調された。

これらの指標の有効性は季節や総観場が異なっても概ね維持されるものの,コンポジットの空間構造は背景環境によって大きく異なる。さらに,ラグコンポジット解析により竜巻発生前後の時間発展を調べることで,竜巻好適環境がどのように形成されるか,および竜巻が発生した場合としなかった場合の環境の違いを明らかにする。本研究は,日本における竜巻環境の統計的理解を深化させ,今後の監視・予測手法の高度化に資する基盤を提供する。