講演情報

[ACC42-03]Present and Future Mountain Permafrost Distribution in Japan Derived from a Land Surface Model and Observations: Impacts of Soil Physical Properties

*横畠 徳太1、岩花 剛2、斉藤 和之3、末吉 哲雄4、荒川 隆5、新田 友子6、大沼 友貴彦9、メルニコワ イリーナ1、渡辺 泰士1、石崎 紀子1、大久保 遥斗7、澤 悠夏7、長根 汐南7、高田 久美子8 (1.国立環境研究所、2.アラスカ大学フェアバンクス校、3. 海洋研究開発機構、4.国立極地研究所、5.株式会社 CliMTech、6.中央大学、7.筑波大学、8.麻布大学、9.気象研究所)

キーワード:

気候変動、永久凍土、陸面物理過程モデル

2年以上連続して0℃を下回る地中を永久凍土と呼び、主に北半球高緯度のツンドラ・タイガ域に広く分布している。現在の日本は、全球的な永久凍土分布の南限に位置している。このため、緯度と標高が高く非常に寒冷な山岳域のごく限られた地点でしか、永久凍土の存在が確認されていない。永久凍土の融解は地中において生じるため、観測することが難しく、特に山岳地帯はアクセスが難しいこともあり、その全体像は十分に把握されていない。これまでの研究では、ヨーロッパやチベット高原において永久凍土の現状評価や将来予測がなされてきたが、日本を含む東アジア地域では、特に将来予測に関してはほとんど研究がなされてこなかった。私たちはこれまでの研究で、日本域における 1km 解像度の最新の気温予測情報と経験的な関係式を利用することにより、永久凍土を維持する気温環境にある領域を「永久凍土領域」として、その現状評価と将来予測を行った (Yokohata et al. 2022, PEPS)。しかしながらこれらの推定結果は、日本とは異なる環境における永久凍土分布から構築した経験式を利用しているため、永久凍土分布を過大評価する可能性がある。そこでこの研究では、地中の温度を高解像度で陽に計算することにより、日本域の永久凍土分布の推定を行った。

日本域における 1km 気温予測情報を陸面物理過程モデル ILS (Integrated Land Simulator) に与えることにより、日本域の地中の温度を推定した。ILS では、気温・降水・放射・風速・湿度などの地表における大気物理量を利用し、地表付近の物理過程を計算することで、地温・土壌水分・河川流量・流出量などを求めることが可能である。また今回利用した日本1km気温予測情報は、自治体や企業などの様々な主体が気候変動適応策を実施することを支援するため、最新の気候予測とバイアス補正技術により作成されたものである。本研究では、産業革命前から現在までの気温予測情報を ILS に与えることにより、日本域における永久凍土分布を推定した。

陸面物理過程モデルによる日本域1km解像度シミュレーションによって永久凍土分布を推定したところ、気温予測情報と経験的関係式から推定した分布と比べて、より狭い範囲にしか永久凍土が存在しないことがわかった。これは前述の通り、これまでの研究で利用している経験式は、アラスカやシベリアなど、日本とは異なる環境で構築した経験関数であることが原因の一つと考えられる。また、これまでの研究から、大雪山などの永久凍土は、冬季に風が強く積雪が残りにくい場所(風衝地)に存在することが知られている。このため本研究では、モデルパラメータを変化させることにより、モデルにおける積雪量を変化させる数値実験を行った。その結果、モデルにおける積雪量を減らす(風衝地を表現する)ことにより、永久凍土分布がより広い領域に存在することがわかった。観測から分かっている永久凍土分布を再現するモデルパラメータを利用し、過去再現実験と将来予測実験を行うことにより、現在の日本における永久凍土分布と将来変化の予測を行った。

私たちの推定結果によると、現在日高山脈にも広域的に永久凍土が存在することがわかった。そこで私たちは、2024年6月から、北海道日高山脈幌尻岳山頂付近において地温観測を行っている。2年以上連続して0℃以下となる領域が存在することが、永久凍土の存在条件である。ところが、私たちの観測によると、日高山脈幌尻岳山頂付近では、地下10mまでの領域で、年間を通して0℃以下になる領域は存在しなかった。表層付近は冬から春にかけて0℃以下になるが、6m以下の領域では、年間を通して0℃を超えていた。日髙山幌尻岳山頂付近において、陸面物理過程モデルによる推定では永久凍土が存在すると判定されたにも関わらず、実際には永久凍土が存在しなかった理由の一つは、モデルで考慮している土壌物理特性が、日高山脈幌尻岳の土壌物理特性とは異なるためだと考えられる。このため、私たちは陸面物理過程モデルにおける土壌物理特性を変化させ、北海道山岳域における永久凍土分布を分析した。その結果、土壌の熱伝導度が永久凍土分布に与える影響が重要であることがわかった。