講演情報
[ACC45-P05]新潟県苗場山における雪氷藻類のツボカビ感染率の分布
*小田 遼太朗1、阿部 稜平2、小林 綺乃2、竹内 望3 (1.千葉大学理学部、2.千葉大学大学院融合理工学府、3.環境リモートセンシングセンター)
キーワード:
ツボカビ、雪氷藻類、寄生、感染率、アスタキサンチン
ツボカビとは,遊走子という運動性の細胞を形成する真菌類の総称である.ツボカビは湖沼や海洋,土壌等に生息し,多くの種は維管束植物,藻類,ミジンコ等の無脊椎動物,カエル等の脊椎動物など様々な分類群の生物に寄生する.寄生性のツボカビは,宿主の個体群の季節変動や種の絶滅を引き起こすことが報告されており,生態系に大きな影響力をもつ.近年ツボカビは氷河や積雪などの雪氷環境にも生息し,雪氷藻類と呼ばれる光合成微生物に寄生することがわかってきた.しかしながら,積雪中の藻類に対するツボカビ感染に関する情報は,まだ限られている.そこで本研究では,日本の高山帯の積雪中の雪氷藻類に寄生するツボカビの感染率の藻類タイプによる違いや積雪内分布を明らかにし,その感染率に影響を与える要因を考察することを目的とした.
新潟県苗場山で2025年7月2日から同年7月4日にかけて,異なる標高の3地点で採取したサンプルの分析を行った.顕微鏡観察の結果,積雪中には多様な雪氷藻類が含まれており,形態に基づいて7タイプ(A–G)に分類された.藻類群集の組成は,日本の山岳地帯で報告されている赤雪藻類群集と概ね一致しており,標高の異なる3サイト間に大きな違いはなかった.雪氷藻類に対するツボカビ感染率の全平均は2.20%であった.調査を行った3地点,および積雪内の深度による感染率には有意な違いはなかった.一般湖沼では水深によるツボカビ感染率の変化が報告されているが,積雪中では湖沼のような水の対流はなく,主に表層から深部への融解水の流下に伴う細胞の移動では,感染率に差が生じにくいためと考えられる.一方,アスタキサンチンを含む赤色藻類細胞は,緑色藻類細胞よりも感染率が有意に高かった.このことは,積雪内では特定の藻類種または色素条件を持つ細胞にツボカビが寄生することを示唆している.以上の結果から,日本の高山帯の積雪環境では,藻類に対するツボカビ感染率は,標高や深さに関わらずほぼ一定であること,藻類の種類によって感染率が異なことが明らかとなった.積雪のツボカビ感染の実態を明らかにするために,今後,季節や地域による感染率の違いをさらに調べる必要がある.
新潟県苗場山で2025年7月2日から同年7月4日にかけて,異なる標高の3地点で採取したサンプルの分析を行った.顕微鏡観察の結果,積雪中には多様な雪氷藻類が含まれており,形態に基づいて7タイプ(A–G)に分類された.藻類群集の組成は,日本の山岳地帯で報告されている赤雪藻類群集と概ね一致しており,標高の異なる3サイト間に大きな違いはなかった.雪氷藻類に対するツボカビ感染率の全平均は2.20%であった.調査を行った3地点,および積雪内の深度による感染率には有意な違いはなかった.一般湖沼では水深によるツボカビ感染率の変化が報告されているが,積雪中では湖沼のような水の対流はなく,主に表層から深部への融解水の流下に伴う細胞の移動では,感染率に差が生じにくいためと考えられる.一方,アスタキサンチンを含む赤色藻類細胞は,緑色藻類細胞よりも感染率が有意に高かった.このことは,積雪内では特定の藻類種または色素条件を持つ細胞にツボカビが寄生することを示唆している.以上の結果から,日本の高山帯の積雪環境では,藻類に対するツボカビ感染率は,標高や深さに関わらずほぼ一定であること,藻類の種類によって感染率が異なことが明らかとなった.積雪のツボカビ感染の実態を明らかにするために,今後,季節や地域による感染率の違いをさらに調べる必要がある.
