講演情報
[ACC45-P06]山形県月山のセッケイカワゲラの木登り行動
*瓜生 瞳1、竹内 望2 (1.千葉大学大学院融合理工学府、2.千葉大学環境リモートセンシングセンター)
キーワード:
セッケイカワゲラ、月山、積雪
セッケイカワゲラとは,日本の積雪上で活動する昆虫の一つで,クロカワゲラ科に属する翅のない水生昆虫である.セッケイカワゲラは,幼虫期を過ごした渓流で羽化した後,積雪上に上陸し産卵のために上流へ移動する遡上行動を行うことが知られている.樹林帯ではセッケイカワゲラがしばしば樹幹表面で活動することが観察されているが,なぜこの木登り行動をするのか,詳しいことはわかっていない.本研究では,山形県月山の樹林帯でセッケイカワゲラの調査を行い,木登り行動を行う理由を明らかにすることを目的とした.2025年3月19日~21日と4月25日~27日の期間に,山形県月山の石跳川および四ツ谷川周辺の標高約750 m~1100 mのブナとカラマツの混合林で調査を行い,加えて2020年3月22日に撮影されたセッケイカワゲラの映像の解析を行った.調査では,樹幹表面のタイムラプス撮影,表面温度および根開きの大きさ測定,カワゲラの分布の観察と個体の採取を行った.4月の調査の結果,セッケイカワゲラはカラマツには観察されず,地衣類やコケ類に富むブナの木のみで木登り行動をしていることが明らかになった.タイムラプス映像解析の結果,セッケイカワゲラの個体密度は,積雪上では午前中に最も高くなるのに対し,樹幹では夕方に最大となることがわかった.また,樹幹では長時間停止する個体が多いことがわかった.同時に観測した気温は,12:00ころに最も高くなり樹幹のカワゲラの個体密度の変化とは関係がないことがわかった.樹幹表面温度の測定の結果,セッケイカワゲラの木登り行動はおおむね7~11 ℃の範囲で観察されることがわかった.樹幹表面のカワゲラの方位分布を調べたところ,太陽の方角と反対側に分布する傾向があった.以上の結果から,セッケイカワゲラの木登り行動は,ブナ表面の地衣類の採餌,または熱的ストレスの低い温度域にとどまることを目的に行っている可能性があることがわかった.
