講演情報

[ACG68-P05]グリーンランド・カナック氷河におけるバンド状暗色表面の形成要因

*宮﨑 香歩1、小野 誠仁2、有江 賢志朗4、的場 澄人3、島田 利元4、西村 基志5、鈴木 拓海4、小林 綺乃1、竹内 望6 (1.千葉大学大学院 融合理工学府、2.京都大学 生態学研究センター、3.北海道大学 低温科学研究所 環オホーツク観測研究センター、4.国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター、5.信州大学 社会実装研究クラスター 山岳科学研究所、6.千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)
近年,氷河消耗域における裸氷表面の暗色化は,アルベド低下を通じて氷河融解を促進する要因として注目されている.グリーンランド氷床消耗域では,暗色域が流動方向と概ね直交する暗色と白色の縞模様(バンド状暗色表面)として出現するが,その形成要因についてははっきりとわかっていない.本研究は,グリーンランド北西部カナック氷河消耗域に分布するバンド状暗色表面の形成要因を明らかにすることを目的とした.2024年夏期に,カナック氷河消耗域のバンド状暗色表面および隣接した白色の表面において表面から深さ約90 cmまでのアイスコアを合計18本掘削し,黒色コア(暗色表面)と白色コア(白色表面)の成分を比較した.コア側面画像による層位観察とともに,コールターカウンタによる微粒子分析,顕微鏡観察による鉱物粒子,雪氷藻類細胞,クリオコナイト粒の濃度の定量,溶存化学成分分析,水の安定同位体比分析を行った.層位観察の結果,黒色コアと白色コアの間で層位構造に明瞭な違いはなかった.コールターカウンタ分析の結果,両者の微粒子濃度に有意な差が見られなかったが,顕微鏡による鉱物粒子の定量結果は,全深度および表層部において黒色コアで有意に高く,表層ほど濃度が高い傾向があった.雪氷藻類およびクリオコナイト粒濃度は,黒色コアの表層部で顕著に高濃度である一方,白色コアではほとんど含まれないことがわかった.化学分析の結果,下層部において黒色コアのNO₃⁻が有意に高いことがわかった.水同位体比の分析の結果,これらの氷は間氷期の降雪に由来することが示唆された.以上の結果から,カナック氷河のバンド状暗色表面は,黒色コアに保存されていたNO₃⁻が,融解とともに表面に現れて栄養塩として微生物の繁殖を促進し,また微生物によって鉱物粒子が結合することによって形成されたことがわかった.今後,より深いコアの分析,地形の分析,融解水の挙動の分析が必要だと考えられる.