講演情報

[ACG68-P10]極地研における北極海全域を対象とする短期海氷予測サービス

*丹羽 淑博1、大山 元夢2、杉村 剛1、矢吹 裕伯1 (1.国立極地研究所、2.工学院大学 大学院 工学研究科)

キーワード:

海氷、北極海、短期予測、北極航路

地球温暖化に伴い北極海における夏季の海氷面積は急速に減少しており,海氷分布の正確な予測の重要性は,科学的・社会的観点からますます高まっている.短期海氷予測は,数日から10日先までの海氷縁の位置を,高解像度の海氷・海洋結合モデルを用いて予測するものである.こうした短期海氷予測は,海氷減少に伴って利用が拡大する北極海の船舶航行において,安全かつ経済的に最適な航路情報の提供に必要不可欠である.国立極地研究所・海氷情報室では、2024年8月から,北極海全域を対象とし,通年で実施する短期海氷予測を開始した.

本研究で用いた海氷・海洋結合モデルは,水平格子間隔は約5km,鉛直方向は33レベルで構成されている(なお、現在の格子間隔は暫定的なものであり,今後改良を予定している).予測における海氷分布や海水温分布の初期値は,カナダ気象庁のRIOPS(Regional Ice Ocean Prediction System)の解析データを同化させて設定している.そのうえで,ヨーロッパ中期予報センターECMWFの大気予測データを用いて大気強制を与え,10日先までの予測を行っている.この予測計算を毎日1回の頻度で実施している.測結果は,極地研の北極域データアーカイブシステムADSのウェブサービス”VENUS for Mirai” (https://ads.nipr.ac.jp/ venus.mirai)を通じて一般にも公開されている(図1).

短期海氷予測の精度を検証するため,海氷縁位置の予測誤差を評価した結果,5日先の予測では10~20km, 10日先の予測では20~40kmの誤差が見積もられた.ただし,10日先の予測では,大気強制データの誤差の影響により,予測精度が一時的に大きく低下することが確認された.これは,海氷分布の予測そのものに加えて,予測誤差の推定と,そのリアルタイムでの提供が必要であることを示唆している.