講演情報

[ACG68-P14]モンゴル北部森林における10年スケールの乾湿変動にともなう水・炭素フラックス変動要因の変化

*小谷 亜由美1、石川 守2、檜山 哲哉3、宮崎 真4、Baatarbileg Nachin5、Dashtseren Avirmed6 (1.名古屋大学 生命農学研究科、2.北海道大学 地球環境科学研究院、3.名古屋大学 宇宙地球環境研究所、4.ソニック、5.モンゴル国立大学、6.地理学・地生態学研究所)

キーワード:

北方林、生態系応答、渦相関法、水・炭素循環

ユーラシア大陸の北方林および永久凍土分布の南限に位置するモンゴル北部の森林は、気候変動に対し高い感受性をもつ植生変遷帯を形成している。この地域の優占種である Larix sibiricaは,より高緯度に分布するL. cajanderiよりも高い炭素吸収能が示されているが、一方で干ばつや熱ストレスに対して脆弱な側面もある。過去数十年において、広域衛星データが示す降水増加に伴う「緑化」と年輪解析が示す乾燥ストレスによる「成長鈍化」が検出され、その気候応答には手法や時空間スケールのギャップが残されている。本研究では、モンゴルのUdleg Forest Research Stationにおける2期間(2010–2012、2023–2025年)のタワーフラックス観測を比較し、乾湿状態の違いとフラックスの気候応答因子の関係を検討した。これら2期間を含む2000年以降の水文気候(ERA5-Land)と衛星リモートセンシングに基づく地表面指数によると、2010年代半ばまでは降水量変動によらず蒸発散や乾燥指数が低下し続ける乾燥状態にあったが,2010年代後半から降水量と蒸発散が同調して増加した。この推移に数年遅れて,地表水分指数(LSWI)と正規化差植生指数(NDVI)が上昇した。タワーフラックスデータに基づく多変量回帰分析の結果、2010–2012年では夏季蒸発散の変動に対して土壌水分量(SWC)が主要因であった(標準化回帰係数 β≃1.0)。対照的に、2023– 2025年ではSWCの寄与は低下し、表層地温と日射量が支配的な要因となった。CO2フラックスについては、2023–2025年にLAIの寄与が増加し(β>1.0)、十分な水分条件下で植物が光合成応答性の向上に直接的に寄与したことが示唆された。このように,森林蒸発散やCO2フラックス変動に対する環境要因は10年スケールの乾湿変動に伴う土壌水分の利用可能性に依存して変化したと考えられる。