講演情報
[AOS24-P05]海洋細菌表面性状の細胞内および分裂時変動に関する予察的測定
*山田 洋輔1 (1.海洋研究開発機構)
キーワード:
細菌表面性状、ナノ粒子、物質循環
海洋において細菌外膜は生物が有する最大の反応表面であり、そこでは細胞外酵素により様々な粒子やポリマーの分解が行われている (Azam and Malfatti 2007)。ナノ粒子(直径: 1‒1000 nm)は海水中に多量に存在し、植物プランクトン由来の細胞小器官やその破片に加え、その他生物起源の放出物質など多様なものから構成されている (Koike et al. 1990; Santschi 2018; Wells 2002)。これらのナノ粒子は、低分子有機物、マイクロゲル、マリンスノーなどと同様に、細菌にとって重要な栄養源と考えられている。ナノ粒子利用の最初のステップは、ナノ粒子の細菌細胞表面への付着である。一般的に硬さ・粘着性・粗さといった表面性状は粒子付着を制御する主要なパラメータとされており、付着効率や有効表面積に影響を与えることが知られている。また、大腸菌などの単離株を用いた培養実験により、細菌の種類や環境中の化学物質、細胞外膜構造や表層ポリマー量の違いによって細菌表面性状が変化することが明らかになっている。先行研究(Yamada et al. 2023; 2025)にて、海洋細菌の表面性状が細胞ごとに大きく異なること、特に粗さや硬さがナノ粒子付着を制御していることが明らかになった。この結果は、効率的な有機物利用やウイルス感染回避といった生存戦略として、細菌が表面性状を変化させている可能性を示唆するとともに、こうした表面性状の不均一性が海洋物質循環に影響を及ぼす可能性を示している。しかし、海洋細菌の表面性状の変動については、時間的変動や細胞内スケールでの理解が十分に進んでいない。本発表では、原子間力顕微鏡を用いて、海洋細菌の単一細胞内および細胞分裂過程における硬さ・粘着性・粗さといった表面性状の変動を測定した予察的データを紹介する。将来的にはデータ数を増やし、細菌表面性状がどのようなタイムスケール、生理状態、環境条件によって制御されているのかを明らかにすることで、海洋物質循環の細菌による制御機構の理解深化につなげていく予定である。
