講演情報

[AOS26-P08]酒匂川―相模湾流域における溶存有機物(DOM)の動態

*柴田 陽1、千賀 有希子1、土屋 健司2 (1.東邦大学、2.国立環境研究所)

キーワード:

溶存有機物(DOM)、蛍光性DOM成分(FDOM)、腐植化、河川ー海洋連続体

背景
溶存有機物(DOM)は、水域環境における主要な炭素貯蔵庫である。DOMの成分には、易分解性のタンパク質や糖類などの他に、難分解性と考えられている植物遺骸由来の高分子物質である水系腐植物質(AHS)などがある。これらのDOMは、海域の炭素循環プロセスに重要な役目を果たす。DOMは河川から海域に流入する際に、塩分凝集や光および微生物による分解などの変性をうけると予測されるが、沿岸域でDOMがどのように変性し、海域へ流入するか詳細は分かっていない。本研究ではDOMが河川を経て海域にどの様に流入するのか明らかにすることを目的とする。研究対象地として、酒匂川から相模湾を選択し、酒匂川―相模湾におけるDOMの量と質の測定を行った。また、DOMが沿岸域でどの様に変性を受けるか明らかにするために、室内実験で酒匂川の河川水と相模湾の海水を用いた混合実験を行い、DOMとバクテリアの量と質の動態を追った。

材料と方法
サンプルは、2025年4月から2026年1月にかけて、酒匂川および相模湾(0〜700 m)で採水を行った。混合実験は、ろ過した河川水と海水(各500 mL)を密封三角フラスコに入れて混合し、暗所下、25℃で100日間静置した。
DOC濃度はTOC計を用いて測定した。AHSの量の指標であるAbsは254 nmにおける吸光度で測定した。AHSの含有率の指標であるSUVAは254nmの吸光度/試料水のDOM炭素濃度から算出した。DOMの質として蛍光性DOM成分を三次元励起蛍光スペクトル(EEM)-多変量解析PARAFAC法で検出した。蛍光性DOM成分はEEM–PARAFAC法を用いて検出した。また、懸濁物量(SS)およびバクテリアの生産、量、サイズも解析した。

結果と考察
酒匂川では、DOC、Abs、およびSUVAは夏に高く、河口で高かった。相模湾では、DOCとAbsは沖合で減少する傾向がみられた。EEM–PARAFAC法によって、酒匂川および相模湾で陸域由来AHS様およびタンパク質様成分が検出された。陸域由来成分の1つは相模湾では確認されなかった。先行研究からこの成分は塩分凝集し消失する成分であることが分かっている。陸域由来成分の相対蛍光強度は沖合で減少したのに対し、タンパク質様成分は河口で高かった。トリプトファン様成分は10月に酒匂川から相模湾にかけて顕著に高かった。混合実験では、DOCおよびAbs、SUVAは変化がみられなかった。しかしながら、蛍光性DOM成分の相対蛍光強度は増加傾向にあった。バクテリア生産および数は実験前半に減少し、後半で増加した。バクテリアサイズは後半に減少がみられた。これらの結果は、実験前半と後半におけるバクテリア相の変化を示していると考えられた。実験前半では、バクテリアの基質が易分解性DOMであったのに対し、後半では難分解性DOMであったと推察された。蛍光性DOM成分の増加は、バクテリアの活性および腐植化を示唆していると考えられた。