講演情報
[AOS27-P02]旧水面貯木場・折戸湾における四季観測結果速報
*篠崎 友花1、折田 まりな1、小林 高士1、久田 正樹1 (1.NTT株式会社)
キーワード:
折戸湾、係留観測、水質、底質、四季観測、生態系モデル
我々は観測データを用いて構築した生態系モデルを活用し、生物種の相互依存を反映した生態系の時空間変動を予測する海洋生態系未来予測技術[1]の構築をめざしている。流動モデルと生物化学モデルの結合による生態系モデル構築に必要な観測データを取得するため、日本の静岡県にあるかつて水面貯木場として利用されており、環境改善が望まれている折戸湾を対象として四季を通じた様々な観測を行ったので、その結果の概要を報告する。
観測は係留したブイによる連続観測と、人の手によるスポット観測の大きく分けて2通りである。以下に観測項目、観測時期、観測地点を示す。観測地点はFig.1に示すとおり、巴川河口の対岸寄りのO地点、折戸湾を大きく区切る防波堤開口部で折戸湾北部に位置するN地点、北部から防波堤をはさんで東部に位置するM, J, F地点、東部から防波堤をはさんで西部に位置するL, K, D地点としている。なお北部と西部は防波堤にて完全に区切られており、北部と西部は東部を介して繋がっている。
係留ブイによる連続観測は、2024年11月21日から2025年1月21日まで(秋から冬にかけて)と2025年6月16日から2025年8月20日(春から夏にかけて)行った。秋から冬にかけてはO地点とN地点にICTブイを設置した。春から夏にかけてはその2地点のICTブイに加えてL地点M地点に1つずつ底層観測用の底層係留系を設置した。
ICTブイには秋から冬にかけてはO地点N地点ともに、表層と中層に流向流速センサー(Currents)、中層のみにクロロフィル・濁度センサー(Chl/Turb)を取り付けた。春から夏にかけてはO地点には表層に流向流速センサーとクロロフィル・濁度センサーと塩分・水温・深度計(CTD)を、底層に流向流速センサーとCTDを取り付けた。N地点には表層に流向流速センサーとクロロフィル・濁度センサーを、底層に流向流速センサーとCTDを取り付けた。
底層係留系にはL地点M地点とも溶存酸素濃度計(DO)、CTD、クロロフィル・濁度センサーを取り付けた。
スポット観測では採水による水質(WQ)(O, N, J, F, K, D)・動物プランクトン分析(Zoo)(O, N, J, K, D)と多項目水質計による鉛直水質観測(AAQ-VP)(O, N, J, F, K, D)を11月、1月、5月、8月に、環境DNA分析(eDNA)(N, J, K)を11月、5月、8月に、採泥(Sed)による泥質観測(N, J, F, K, D)を11月と7月に、底泥中のベントス分析(Benthos)(N, J, F, K, D)を7月に、潜水士もしくはROV(遠隔操作型無人潜水機)による生物観測(Bio Obs.)(N, J, F, K, D)と植物プランクトン分析(Phyto)(O, N, J, K, D)を11月、5月、8月に行った。観測項目と観測地点および観測季節の対応はFig. 2にまとめた。
観測結果の概要を以下に示す。
限定的な海水交換及びそれに伴って様々な指標において北部(N地点)、東部(M, J, F地点)、西部(L,K,D地点)の順に徐々に環境が悪化する様子が観察された。特に西部では夏に部分的な貧酸素状態が確認され、底層は貯木場由来と思われる有機物と栄養塩が大量に含まれた黒いヘドロ状の泥となっており、船上でもはっきり感じられる硫黄臭が存在する等、生物にとって一般的には厳しい環境であった。
しかしながら護岸や防杭では、フジツボ類・カキ類・ホヤ類・イガイ類などの付着生物が高い被度で観察されており、魚類がそれらの周りを遊泳していることが確認されるなど、折戸湾の環境に適応できる生物によって生態系が構築されていた。また、クロホシマンジュウダイやツバメウオ等の暖流系魚類の季節をこえた確認により、黒潮系暖水や水温上昇の影響が示唆された。
現在これらの観測結果の詳細な分析を進めるとともに、折戸湾生態系モデルを構築中である。今後このモデルを活用して環境改善施策の検討等を行っていく予定である。
謝辞
今回の観測の実施にあたり、静岡県、静岡市、株式会社アイ・テック、清水漁業協同組合、山本釣船店、有限会社ふじや釣舟店、有限会社原金つり船ならびに折戸湾関係者の皆様には多大なるご支援とご協力を賜りました。ここに記して深く感謝申し上げます。
参考文献
[1] 生物多様性の回復に向けた海洋生態系未来予測技術, NTT R&D Website, https://www.rd.ntt/se/technology/biodiversity.html
観測は係留したブイによる連続観測と、人の手によるスポット観測の大きく分けて2通りである。以下に観測項目、観測時期、観測地点を示す。観測地点はFig.1に示すとおり、巴川河口の対岸寄りのO地点、折戸湾を大きく区切る防波堤開口部で折戸湾北部に位置するN地点、北部から防波堤をはさんで東部に位置するM, J, F地点、東部から防波堤をはさんで西部に位置するL, K, D地点としている。なお北部と西部は防波堤にて完全に区切られており、北部と西部は東部を介して繋がっている。
係留ブイによる連続観測は、2024年11月21日から2025年1月21日まで(秋から冬にかけて)と2025年6月16日から2025年8月20日(春から夏にかけて)行った。秋から冬にかけてはO地点とN地点にICTブイを設置した。春から夏にかけてはその2地点のICTブイに加えてL地点M地点に1つずつ底層観測用の底層係留系を設置した。
ICTブイには秋から冬にかけてはO地点N地点ともに、表層と中層に流向流速センサー(Currents)、中層のみにクロロフィル・濁度センサー(Chl/Turb)を取り付けた。春から夏にかけてはO地点には表層に流向流速センサーとクロロフィル・濁度センサーと塩分・水温・深度計(CTD)を、底層に流向流速センサーとCTDを取り付けた。N地点には表層に流向流速センサーとクロロフィル・濁度センサーを、底層に流向流速センサーとCTDを取り付けた。
底層係留系にはL地点M地点とも溶存酸素濃度計(DO)、CTD、クロロフィル・濁度センサーを取り付けた。
スポット観測では採水による水質(WQ)(O, N, J, F, K, D)・動物プランクトン分析(Zoo)(O, N, J, K, D)と多項目水質計による鉛直水質観測(AAQ-VP)(O, N, J, F, K, D)を11月、1月、5月、8月に、環境DNA分析(eDNA)(N, J, K)を11月、5月、8月に、採泥(Sed)による泥質観測(N, J, F, K, D)を11月と7月に、底泥中のベントス分析(Benthos)(N, J, F, K, D)を7月に、潜水士もしくはROV(遠隔操作型無人潜水機)による生物観測(Bio Obs.)(N, J, F, K, D)と植物プランクトン分析(Phyto)(O, N, J, K, D)を11月、5月、8月に行った。観測項目と観測地点および観測季節の対応はFig. 2にまとめた。
観測結果の概要を以下に示す。
限定的な海水交換及びそれに伴って様々な指標において北部(N地点)、東部(M, J, F地点)、西部(L,K,D地点)の順に徐々に環境が悪化する様子が観察された。特に西部では夏に部分的な貧酸素状態が確認され、底層は貯木場由来と思われる有機物と栄養塩が大量に含まれた黒いヘドロ状の泥となっており、船上でもはっきり感じられる硫黄臭が存在する等、生物にとって一般的には厳しい環境であった。
しかしながら護岸や防杭では、フジツボ類・カキ類・ホヤ類・イガイ類などの付着生物が高い被度で観察されており、魚類がそれらの周りを遊泳していることが確認されるなど、折戸湾の環境に適応できる生物によって生態系が構築されていた。また、クロホシマンジュウダイやツバメウオ等の暖流系魚類の季節をこえた確認により、黒潮系暖水や水温上昇の影響が示唆された。
現在これらの観測結果の詳細な分析を進めるとともに、折戸湾生態系モデルを構築中である。今後このモデルを活用して環境改善施策の検討等を行っていく予定である。
謝辞
今回の観測の実施にあたり、静岡県、静岡市、株式会社アイ・テック、清水漁業協同組合、山本釣船店、有限会社ふじや釣舟店、有限会社原金つり船ならびに折戸湾関係者の皆様には多大なるご支援とご協力を賜りました。ここに記して深く感謝申し上げます。
参考文献
[1] 生物多様性の回復に向けた海洋生態系未来予測技術, NTT R&D Website, https://www.rd.ntt/se/technology/biodiversity.html
