講演情報
[HDS11-P03]カムチャツカ半島地震による津波避難の行動選択プロセスの検討
*大友 章司1,2、木村 玲欧3 (1.関東学院大学、2.中央大学、3.兵庫県立大学)
キーワード:
津波、避難行動、地震
災害時に警報を受けても、多くの人が十分な安全確保行動を取らないことが問題になっている。本研究では、2025年7月に発生したロシアのカムチャツカ半島地震に伴う津波への避難行動における人々の選択プロセスを検討することを目的とする。カムチャツカ半島地震による津波現象は、遠地災害の事例として、1)地震などの他の自然災害が国内で同時に発生していない、2)津波到達までに一定のリードタイムがあったこと、3)津波による直接の被災者がいないことから、人々の避難行動の選択プロセスを検討する上で干渉要因の影響が少ない貴重な研究事例となる。その一方で、過剰な避難所避難や熱中症の問題など、現実的な課題も指摘された。本研究では、当日の人々の避難行動の実態とその選択プロセスを検討することで、災害場面で人々を適切な行動へ導くための防災リテラシーの構築に役立てることを目的とする。
2025年7月30日に発生したカムチャツカ半島地震による津波注意報および警報の発令エリアの住民を対象にした調査を実施した。具体的には、調査会社の登録モニターの情報から、津波警報の対象エリアの沿岸から4km以内にいた20歳以上の人を対象にした。調査は2025年9月25日から10月2日の期間に実施した。最終的に1155名を分析サンプルとした。
回答者のデモグラフィックをTable 1に示す。災害のリスク認知に関して、地震災害では88%の人が「30年以内に災害が発生しそうだ」と認識しているのに対し、津波災害では36%にとどまり、地震と津波でリスク評価が大きく異なっていた(Figure 1; χ2(16) = 1035.379, p < .001)。次に、ハザードマップを認識に関しては、地震では79%、津波は71%認識しており、若干の差はあったものの大きな違いはみられなかった(Figure 2; χ2(16) = 1148.026, p < .001)。
津波注意報時の避難行動については、積極的にその場所にとどまった人が31%で、避難場所やその他へ避難した人が23%であった。その一方で、避難行動として何もしていない人が46%であった(Figure 3)。避難行動別の選択理由について比較をしたところ、3つの行動に共通して、「そこにいる方が安全だと思ったから」が主要な理由の1つとなっていた。積極的にとどまった人では、建物に被害がなかったことに加えて、ライフラインが使用可能であったことを選択理由に挙げている人が多かった。避難した人では、津波の危険性を選択理由に挙げている人が多かった。何も行動していない人では、建物に被害がなかったことに加えて、「今回は大丈夫と思った」を理由に挙げている人が多かった。
津波警報時の避難行動については、積極的にその場所にとどまった人が41%で、避難場所やその他へ避難した人が17%であった。その一方で、避難行動として何もしていない人が41%であった(Figure 3)。津波注意報時と比較すると、積極的にその場所にとどまった人の割合が増加していた(χ2(2) = 34.726, p < .001)。避難行動別の選択理由について比較をしたところ、津波注意報時とほぼ同様の結果であった。3つの行動に共通して「そこにいる方が安全だと思ったから」が主要な理由の1つになっていた。積極的にとどまった人では、建物に被害がなかったことやライフラインが使用可能であったことを理由に挙げている人が多かった。避難した人では、津波の危険性を選択理由に挙げる人が多かった。何も行動していない人の選択理由として、「今回は大丈夫だと思った」が多かった。
本研究の結果から、津波注意報から警報に切り替わっても、何も行動をしない人が一定数存在することが示唆された。その一方で、津波注意報や警報時に、安全確保行動として避難行動に加え、積極的にその場にとどまる選択をした人も存在した。そのため、過剰な避難所避難は一定程度抑制されていた可能性がある。何も行動をしない、積極的にとどまる、避難するという3つの行動に共通する選択理由として、その場が安全であるという認識が挙げられていた。現在取っている行動を正当化する現状維持バイアスが行動選択に影響を及ぼしている可能性がある。また、何も行動をしなかった人は、「今回は大丈夫だと思った」を理由に挙げており、楽観バイアスによる行動決定の側面が強いことが示唆された。さらに、今回の津波避難において問題となっていた熱中症の懸念を行動選択の理由に挙げた人はほとんどいなかった。そのため、津波以外のリスク要因に対する注意が十分に払われていない可能性がある。これまでの避難行動の先行研究と異なり、他者の行動による避難行動選択への関連が見られなかった。遠地災害という状況において、個人の状況判断に基づく側面がより強く作用したと考えられる。
以上、カムチャツカ半島地震の津波避難の行動選択プロセスの特徴として、積極的に行動するのではなく、現状を維持する方向への判断がされやすい傾向が示された。今後は、このような選択プロセスを踏襲した防災リテラシーの構築が求められる。
2025年7月30日に発生したカムチャツカ半島地震による津波注意報および警報の発令エリアの住民を対象にした調査を実施した。具体的には、調査会社の登録モニターの情報から、津波警報の対象エリアの沿岸から4km以内にいた20歳以上の人を対象にした。調査は2025年9月25日から10月2日の期間に実施した。最終的に1155名を分析サンプルとした。
回答者のデモグラフィックをTable 1に示す。災害のリスク認知に関して、地震災害では88%の人が「30年以内に災害が発生しそうだ」と認識しているのに対し、津波災害では36%にとどまり、地震と津波でリスク評価が大きく異なっていた(Figure 1; χ2(16) = 1035.379, p < .001)。次に、ハザードマップを認識に関しては、地震では79%、津波は71%認識しており、若干の差はあったものの大きな違いはみられなかった(Figure 2; χ2(16) = 1148.026, p < .001)。
津波注意報時の避難行動については、積極的にその場所にとどまった人が31%で、避難場所やその他へ避難した人が23%であった。その一方で、避難行動として何もしていない人が46%であった(Figure 3)。避難行動別の選択理由について比較をしたところ、3つの行動に共通して、「そこにいる方が安全だと思ったから」が主要な理由の1つとなっていた。積極的にとどまった人では、建物に被害がなかったことに加えて、ライフラインが使用可能であったことを選択理由に挙げている人が多かった。避難した人では、津波の危険性を選択理由に挙げている人が多かった。何も行動していない人では、建物に被害がなかったことに加えて、「今回は大丈夫と思った」を理由に挙げている人が多かった。
津波警報時の避難行動については、積極的にその場所にとどまった人が41%で、避難場所やその他へ避難した人が17%であった。その一方で、避難行動として何もしていない人が41%であった(Figure 3)。津波注意報時と比較すると、積極的にその場所にとどまった人の割合が増加していた(χ2(2) = 34.726, p < .001)。避難行動別の選択理由について比較をしたところ、津波注意報時とほぼ同様の結果であった。3つの行動に共通して「そこにいる方が安全だと思ったから」が主要な理由の1つになっていた。積極的にとどまった人では、建物に被害がなかったことやライフラインが使用可能であったことを理由に挙げている人が多かった。避難した人では、津波の危険性を選択理由に挙げる人が多かった。何も行動していない人の選択理由として、「今回は大丈夫だと思った」が多かった。
本研究の結果から、津波注意報から警報に切り替わっても、何も行動をしない人が一定数存在することが示唆された。その一方で、津波注意報や警報時に、安全確保行動として避難行動に加え、積極的にその場にとどまる選択をした人も存在した。そのため、過剰な避難所避難は一定程度抑制されていた可能性がある。何も行動をしない、積極的にとどまる、避難するという3つの行動に共通する選択理由として、その場が安全であるという認識が挙げられていた。現在取っている行動を正当化する現状維持バイアスが行動選択に影響を及ぼしている可能性がある。また、何も行動をしなかった人は、「今回は大丈夫だと思った」を理由に挙げており、楽観バイアスによる行動決定の側面が強いことが示唆された。さらに、今回の津波避難において問題となっていた熱中症の懸念を行動選択の理由に挙げた人はほとんどいなかった。そのため、津波以外のリスク要因に対する注意が十分に払われていない可能性がある。これまでの避難行動の先行研究と異なり、他者の行動による避難行動選択への関連が見られなかった。遠地災害という状況において、個人の状況判断に基づく側面がより強く作用したと考えられる。
以上、カムチャツカ半島地震の津波避難の行動選択プロセスの特徴として、積極的に行動するのではなく、現状を維持する方向への判断がされやすい傾向が示された。今後は、このような選択プロセスを踏襲した防災リテラシーの構築が求められる。
