講演情報

[HDS11-P10]災害時の日本語と災害基礎知識の学習アプリケーションの開発

*越谷 信1、原田 宏子2、小笠原 敏記3、福留 邦洋1、山本 英和3、岡田 真介3、坂口 奈央1、ダグラス 昌子4、泉 ゆりか5、片岡 裕子4、増山 和恵6、村上 千智7、徳田 淳子8 (1.岩手大学地域防災研究センター、2.アラスカ大学アンカレッジ校、3.岩手大学理工学部、4.カリフォルニア州立大学ロングビーチ校、5.ユタ州立大学、6.カリフォルニア州立大学サクラメント校、7.アラスカ大学フェアバンクス校、8.カリフォルニア大学サンディエゴ校)

キーワード:

防災、自然災害、日本語学習、アプリケーション

1.はじめに
 日本では,様々な自然災害が頻繁に発生する.防災におけるソフト対策において重要のものの一つが,災害に関わる情報の伝達である.特に,地震や津波など,事前に予知することが難しく,突発的に生起する現象では,短時間で,正確な情報の取得とそれに基づく対応が必要となる.このような非常時において,日本語を母語としない外国人は,現場において日本語で発信される情報を,時間をかけず,より正しく理解しなければならないという問題に直面する.2011年の東日本大震災では、2名の米国出身の外国語指導助手ALTがなくなっている.
 英語話者を対象とした日本語を学習するアプリケーションは数多く公表されており,また,災害時の防災情報を多言語で通知するアプリケーションもある.しかしながら,災害発生という非常時に現場で使用される日本語の音声学習を行うアプリケーションは知られていない,そこで,災害時の日本語と災害の基礎知識を学ぶことのできるアプリケーションDisaster Preparedness Drill Book(以下,本アプリと称す)を開発した.

2.アプリの構成と内容
 本アプリは,ALTや日本に滞在する英語話者を対象として,災害時とるべき行動や状況の把握を適切に行うために,日本語という言語の障壁を少しでも取り除くこと,および災害の基礎的な知識を理解することを目的としている.
 本アプリは,6章から構成される.第1章は,本アプリの使い方を説明している.第2章では,日本の自然災害の概要と災害例を紹介している.第3章では,防災のための基本的な日本語の学習教材を提供する.本章は,4つのパートに分かれており,(1) 日本の主要災害の名称,(2) テレビ,ラジオ,防災行政無線などで発せられる言葉,(3) 災害時に周囲から発せられる指示に関する言葉,および(4) 否定語を用いた指示に関する言葉の項目から構成されている.(2)以降の項目内では,学習者は,言葉をイラスト入りの画面で音声を再生することで学習し,学習の理解度を,音声を聞き取りクイズ形式で確認する.これらは,馴染みやすいイラストを多く使用し,学習を体系化し,さらに繰り返し練習を行うという言語学習に基づいた構成になっている.第4・5章では,それぞれ地震と津波について,(1) 科学的な基礎知識,(2) 時系列的に起こる現象とその時の災害情報,および(3) 覚えておきたい言葉の例から構成される.(1) と(2) には,基礎知識と理解度を深めるクイズが含まれる.第6章は,地震・津波防災訓練の実際の音声や動画を提供している.

3.おわりに
 災害時に外国人がスムーズに避難行動などに移行できるためには,ストック情報とフロー情報の両方が機能することが重要であるとされている(田村,2017).ストック情報とは,事前に自分のいる地域での災害の特徴,地域の地理,避難方法や避難先などの事前に蓄えておく知識のことであり,フロー情報とは,災害発生時に発せられる危険情報や対応情報のことである.本アプリでは,フロー情報である災害時に発せられる日本語の理解力を向上させることを主な目的としていることから,ストック情報の提供は,必要最小限に留めている.しかしながら,ストック情報の外国語による提供は様々な機関の努力がなされてきているが,十分とはいえないところがある.今後,ALT等の外国人が,災害の地域性や個別性に対応できるように,ストック情報とフロー情報の両方を含む災害情報の整備が一層望まれる.
 本研究は,JSPS科研費21K04583およびトヨタ財団2022年度国内助成プログラム「いわて防人リーダーBANK(防災の学び・交流の場)プロジェクト」の助成を受けた.

文献:
田村太郎,2017,災害時における外国人への対応,自治体国際フォーラム,332,6,2-4.