講演情報
[O01-01]同位体で読み解く「食べる」の科学:食物連鎖から人類の進化まで★招待講演
*大河内 直彦1 (1.海洋研究開発機構)
キーワード:
同位体、食物網、食性復元
地球の表面に届く太陽エネルギーの一部は、光合成を通じて生物のエネルギーへと変換される。植物を出発点に、それを食べる動物、さらにそれらを捕食する生物へと、エネルギーは「食べる」という営みを通じて受け渡されていく。この生き物たちの活動は、地球表層の環境を大きく形づくっている。しかし、生物が何を食べ、どのようにつながっているのかを、私たちはどのように知ることができるのだろうか? 本講演では、原子のわずかな質量の違いである「同位体」に注目し、とくに窒素同位体比(15N/14N比)を用いて食物連鎖の構造を定量的に読み解く方法を紹介する。窒素同位体比は栄養段階(植物から動物へと上がっていく食物連鎖の位置)を示す指標となり,その基本原理と応用例を紹介する。この手法を用いることで、海洋や湖沼における食物連鎖の構造,富栄養化が魚類の食性に与える影響、魚の回遊経路の推定、さらには現代人や古人類の食性の復元まで可能となる。そして実は、私たち一人ひとりの体の中にも、これまで何を食べてきたのかという「原子の記録」が刻まれている。食性の違いは生態系の構造だけでなく、人類の進化とも深く関わっている。原子レベルの違いが生物の生き様やその歴史を語ってくれる。本講演では、「食べる」という身近な営みを通して、生物・環境・人間社会をつなぐ科学の面白さを紹介する。
