講演情報
[O02-02]地方自治体における”再生可能エネルギー熱”研究の取り組み ―埼玉県における地中熱・太陽熱評価と実証―★招待講演
*濱元 栄起1,2、石山 高1、柿本 貴志1、大和 広明1、嶋田 知英1、冨樫 聡3 (1.埼玉県環境科学国際センター、2.埼玉大学大学院理工学研究科、3.産業技術総合研究所)
キーワード:
再生可能エネルギー熱、地中熱ヒートポンプ、太陽熱エネルギー、ポテンシャル評価、地方自治体
1. はじめに
脱炭素社会の実現に向け、従来型化石燃料から再生可能エネルギーへの転換は喫緊の課題である。最終エネルギー消費の観点から民生家庭部門を見ると、給湯・暖房・冷房・厨房などの「熱需要」が全エネルギー消費の約7割を占めている。太陽光発電のように電気エネルギーを熱に変換して利用するよりも、熱を熱として直接利用する「再生可能エネルギー熱」の活用は、エネルギー変換損失を最小化できる合理的かつ有望なアプローチである。
再生可能エネルギー熱の代表である地中熱や太陽熱は、世界的に見ても莫大な導入ポテンシャルを有している。しかしながら、日本の導入状況は欧米や中国などの先行国と比較して著しく遅れているのが現状である。例えば、地中熱ヒートポンプ(GSHP)システムの設備容量を比較すると、米国や中国が20,000 MWtを超過しているのに対し、日本国内の導入量は226 MWtに留まる。人口規模が日本より小さいドイツにおいてさえ5,000 MWtに達しており、我が国における普及拡大の余地は極めて大きい。
こうした背景のもと、地方自治体においても地域特性に応じた再生可能エネルギー熱の普及促進策が求められている。本発表では、埼玉県環境科学国際センターにおける地中熱および太陽熱利用に関する研究成果について報告する。
2. 地中熱利用に関する研究
2.1 地中熱ポテンシャル評価とGIS公開
当センターでは、県内の地下環境情報に基づき、地域ごとの地中熱利用ポテンシャルを評価し、GIS(地理情報システム)を用いた公開を行っている。 評価手法としては、県内約4,800本のボーリング柱状図データを収集・解析し、深度100mまでの地層構成を特定した。これに対し、典型的な地質(岩種・土質)ごとの単位長さあたりの経験的な採熱量(比採熱量)を適用し、各地点における深度方向の加重平均を算出することで、標準的なボアホール熱交換器1本あたりの期待採熱量を推定・評価した。
2.2 ヒートポンプシステムの実証試験
県内5地点のモデル施設において、クローズド型地中熱ヒートポンプシステムと空気熱源ヒートポンプ(ASHP)を並列設置し、比較実証試験を実施した。実測データの解析結果、地中熱ヒートポンプは空気熱源と比較して、期間平均成績係数(COP)で約1.5倍以上の高効率を示すことが確認された。 また、農業分野への応用として、熊谷市(イチゴ栽培)および久喜市(ハーブ栽培)の協力農家において、地下水を直接熱源とするオープン型地中熱システムの実証試験を行った。その結果、従来の化石燃料利用と比較して地中熱の有効性が確認されたほか、温度管理の高度化による農作物の高品質化や、収穫期間の拡大といった栽培面での副次効果も得られることが示唆された。
3. 太陽熱利用に関する研究
太陽熱利用に関しては、当センター内に設置した真空管式太陽熱集熱システムを用いて長期モニタリングを実施した。真空管式は外気との温度差による熱損失が少ないため、外気温の影響を受けにくく、冬季においても高温集熱が可能であることが実証された。システム全体のエネルギー変換効率としても50%を超える高い値が得られ、高効率な熱利用が可能であることが確認された。
一方で、太陽熱エネルギーは気象条件や地理的条件に依存する変動性のエネルギーとしての側面を持つ。地域内での効率的な利用計画には、全天日射量等の高時空分解能データが不可欠であるため、現在は県内の日射量分布に関する面的解析(空間補間等の手法を用いた詳細マッピング)を進めている。
謝辞 本研究成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものである。
脱炭素社会の実現に向け、従来型化石燃料から再生可能エネルギーへの転換は喫緊の課題である。最終エネルギー消費の観点から民生家庭部門を見ると、給湯・暖房・冷房・厨房などの「熱需要」が全エネルギー消費の約7割を占めている。太陽光発電のように電気エネルギーを熱に変換して利用するよりも、熱を熱として直接利用する「再生可能エネルギー熱」の活用は、エネルギー変換損失を最小化できる合理的かつ有望なアプローチである。
再生可能エネルギー熱の代表である地中熱や太陽熱は、世界的に見ても莫大な導入ポテンシャルを有している。しかしながら、日本の導入状況は欧米や中国などの先行国と比較して著しく遅れているのが現状である。例えば、地中熱ヒートポンプ(GSHP)システムの設備容量を比較すると、米国や中国が20,000 MWtを超過しているのに対し、日本国内の導入量は226 MWtに留まる。人口規模が日本より小さいドイツにおいてさえ5,000 MWtに達しており、我が国における普及拡大の余地は極めて大きい。
こうした背景のもと、地方自治体においても地域特性に応じた再生可能エネルギー熱の普及促進策が求められている。本発表では、埼玉県環境科学国際センターにおける地中熱および太陽熱利用に関する研究成果について報告する。
2. 地中熱利用に関する研究
2.1 地中熱ポテンシャル評価とGIS公開
当センターでは、県内の地下環境情報に基づき、地域ごとの地中熱利用ポテンシャルを評価し、GIS(地理情報システム)を用いた公開を行っている。 評価手法としては、県内約4,800本のボーリング柱状図データを収集・解析し、深度100mまでの地層構成を特定した。これに対し、典型的な地質(岩種・土質)ごとの単位長さあたりの経験的な採熱量(比採熱量)を適用し、各地点における深度方向の加重平均を算出することで、標準的なボアホール熱交換器1本あたりの期待採熱量を推定・評価した。
2.2 ヒートポンプシステムの実証試験
県内5地点のモデル施設において、クローズド型地中熱ヒートポンプシステムと空気熱源ヒートポンプ(ASHP)を並列設置し、比較実証試験を実施した。実測データの解析結果、地中熱ヒートポンプは空気熱源と比較して、期間平均成績係数(COP)で約1.5倍以上の高効率を示すことが確認された。 また、農業分野への応用として、熊谷市(イチゴ栽培)および久喜市(ハーブ栽培)の協力農家において、地下水を直接熱源とするオープン型地中熱システムの実証試験を行った。その結果、従来の化石燃料利用と比較して地中熱の有効性が確認されたほか、温度管理の高度化による農作物の高品質化や、収穫期間の拡大といった栽培面での副次効果も得られることが示唆された。
3. 太陽熱利用に関する研究
太陽熱利用に関しては、当センター内に設置した真空管式太陽熱集熱システムを用いて長期モニタリングを実施した。真空管式は外気との温度差による熱損失が少ないため、外気温の影響を受けにくく、冬季においても高温集熱が可能であることが実証された。システム全体のエネルギー変換効率としても50%を超える高い値が得られ、高効率な熱利用が可能であることが確認された。
一方で、太陽熱エネルギーは気象条件や地理的条件に依存する変動性のエネルギーとしての側面を持つ。地域内での効率的な利用計画には、全天日射量等の高時空分解能データが不可欠であるため、現在は県内の日射量分布に関する面的解析(空間補間等の手法を用いた詳細マッピング)を進めている。
謝辞 本研究成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものである。
