講演情報

[O02-04]気候変動シナリオ下における地中熱ヒートポンプシステムの長期省エネ性能評価★招待講演

*島田 佑太朗1、冨樫 聡1 (1.国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

キーワード:

地中熱ヒートポンプ、気候変動シナリオ、省エネ

地中熱ヒートポンプ(GSHP)は、空調の熱源として地下100m程度までの浅部地盤を利用する再生可能エネルギー熱利用技術である。浅部地盤は恒温性があり、外気より夏は低温・冬は高温となるため、一般的な空気熱源ヒートポンプ(ASHP)に比べ電力消費量を削減できる。この特性からGSHPは気候変動下でも高い省エネ効果が期待される。

気候変動シナリオにおける将来的なGSHPの性能は既往研究にて評価されてきたが、GSHPのASHPに対する優位性を評価するためには、以下3点の課題が存在する。
1)ライフタイム(50年間)におよぶ長期連続的なシミュレーションによる評価がなされておらず、地中への熱の蓄積による性能変化を考慮できないこと
2)等条件下でGSHPとASHPの性能を評価した事例が存在せず、将来の気象条件下におけるGSHPの省エネ性能が評価されていないこと
3)建物の全空調負荷を地中熱が処理する想定の評価であり、運用や設計の条件が現実のシステム構成と乖離していること

そこで、本研究ではこれら3つの課題に対応すべく、地中熱と空気熱源ヒートポンプのハイブリッドシステムを対象に
気候シナリオを考慮した50年におよぶ連続シミュレーションを行い、空気熱源ヒートポンプに対する省エネ性能を評価することを目的とした。

評価は以下の3ステップから成る。
Ⅰ)全球気候シミュレーションの結果をダウンスケーリングし、将来の気象データを作成。本研究では共有社会経済経路(通称SSP)を基に、1.8℃、2.7℃、4.4℃相当のシナリオを気候変動シナリオとして採用した。
Ⅱ)将来の気象データを境界条件として、3次元建物モデルの空調負荷をEnergyPlusにより算出。
Ⅲ)算出した空調負荷を境界条件として、物理モデル(Modelica)で構築したGSHPとASHPの熱源プラントモデルによって電力消費量を算出し、GSHPの省エネ性能を評価

上述の3ステップによる評価の結果、年積算暖房負荷に対する冷房負荷の比率に留意すれば、50年間の長期にわたってGSHPはASHPに対して現在と同等の年間省エネ率を維持可能であることが明らかとなった。
なお、省エネ率が維持されたのは、いずれのシナリオにおいても、地中温度の変化に応じて冷房時と暖房時の省エネ率が変化し、その推移には相反する傾向が見られたことが要因である。

この結果より、気候シナリオ下においても、GSHPは冷暖房を通じて現在の省エネ効果を維持できる可能性があるものの、GSHPの省エネ効果はGSHP運用が誘発する地温変化に強く影響を受けるため、冷房・暖房負荷のバランスを慎重に検討する必要があることがわかった。

今後は本研究の成果を基に、気候変動シナリオを考慮したGSHPとASHPシステムの運用手法の最適化を行い、その結果を基にGSHPシステムの環境価値の定量把握に繋げていく予定である。