講演情報
[O03-P02]2021年秋に発生した前例のない道東赤潮★招待講演
*黒田 寛1、髙木 聖実2、大西 拓也2、中野渡 拓也2、東屋 知範2、桑田 晃2、葛西 広海2、谷内 由貴子2 (1.北海道大学、2.水産研究・教育機構水産資源研究所)
キーワード:
有害赤潮、カレニア・セリフォルミス、海洋熱波・寒波、生態系総合解析
2021年9月中旬、北海道東部太平洋沿岸域において前例のない大規模赤潮が発生し、沿岸漁業に甚大な被害をもたらした。赤潮の優占種は Karenia selliformis(Ks)であり、本種による赤潮は日本で初めてである。本研究では、道東赤潮の発生・維持・消滅過程、輸送過程および低次生態系への影響等を明らかにするため、観測、衛星解析、数値実験および培養・暴露実験に基づく統合的な解析を実施した。解析の結果、赤潮発生前の2021年7月中旬以降、北西太平洋では史上最大級の海洋熱波が発生し、8月中旬にはすみやかに海洋寒波へと移行していた。このような急激な高水温から低水温への反転は、海洋熱波や海洋寒波が単独で生じる場合と比べても極めて稀であり、道東赤潮の引き金となった可能性が指摘されている。次に、粒子追跡の順追跡および逆追跡から、Ksはカムチャッカ半島東岸を起源とし、東カムチャッカ海流および親潮によって道東海域へ輸送された可能性が示された。したがって、Ksの起源は、2020年秋にカムチャッカ半島東岸沿岸域で発生した大規模赤潮である可能性が高い。また、粒子順追跡では、2021年6月以降、すなわち赤潮発生の数か月前かつ海洋熱波発生の直前から、道東周辺海域へ到来する粒子数の増加が示唆され、この結果は船舶観測によるKsの出現時期とも一致していた。赤潮発生時における高密度陸棚域調査および衛星解析の結果、Ksは主として水深20 m以浅の海面近くに高密度で分布しており、陸棚域における高密度分布は数kmスケールの筋状あるいはパッチ状構造を伴うサブメソスケール変動と密接に関連していた。また、赤潮の発生から衰退に至る過程において、Ks高密度域が道東東側海域から西側海域へと遷移する様子が衛星からも検出され、北海道道立総合研究機構における現場観測とも整合していた。さらに、道東陸棚域における低次生態系構造を2021年秋とその前の5年間とで比較すると、通常の珪藻主体の海からカレニア主体の海へと変化しており、主要な栄養塩のフローを含む生態系構造が大きく異なっていた。
