講演情報

[O04-03]土佐清水ジオパークにおける水産業の地質・地形学的背景とそれを活用したジオツアーの実践事例★招待講演

*冨永 紘平1、土井 恵治1、吉田 千代美2 (1.一般社団法人 土佐清水ジオパーク推進協議会、2.土佐清水ジオの会)

キーワード:

ジオパークガストロノミー、水産業、土佐清水ジオパーク、ジオツーリズム、黒潮

土佐清水ジオパークは、「―黒潮と共に生きる―漁師が生まれる大地の物語」をテーマとし、黒潮と大地が出会うことで育まれてきた漁師町としての自然・文化を伝えている。本ジオパーク多くの水産資源を有し、漁業とそれと関連した文化が発展した地域である。本発表では、土佐清水市が豊富な水産資源を有する地質・地形学的背景を概観し、土佐清水ジオパークでの活用事例である「土佐の清水さばツアー」を紹介する。
土佐清水ジオパークのエリアは、高知県土佐清水市の陸域と海岸から1 kmの範囲の海域からなる。この地域は、四国最南端である足摺岬を有し、日本列島の主要な島である北海道、本州、四国、九州のうち黒潮が最初に接岸する地の一つとして知られている。本ジオパークの主要な水産資源として、宗田節と清水さばの2つが挙げられる。宗田節は、ソウダガツオから作られる鰹節のことで、通常の鰹節と比べて濃い口醤油にも負けない味・香りが強い材である。土佐清水市は宗田節の生産量日本一を誇り、全国シェアの7割を占めるといわれている。清水さばとは、足摺沖で立て縄漁によって漁獲され土佐清水で水揚げされる、重さ620 g以上のゴマサバのことである。通常サバは刺身に適さないといわれているが、清水さばは刺身やたたきなどで食される。
土佐清水の水産資源の多くは、足摺沖約10~20 kmまで広がる大陸棚上で漁獲される。この海域では、黒潮が大陸棚にぶつかることで湧昇流が発生し、深層の栄養分が海面近くに供給されていることが知られている。この海域の海底の地質構造に着目すると、足摺周辺の大陸棚は室戸岬と共に南北方向の背斜軸上に位置している。この南北方向の軸を持つ波曲構造は、日本列島の東西圧縮により形成されたと解釈されている。
本ジオパークでは、ガイド団体土佐清水ジオの会が主体となり、水産資源と地質・地形の関係を紹介する「土佐の清水さばツアー」が提供されている。本ツアーでは、清水漁港にある清水さばの水槽と魚市場の見学し、土佐清水で海産物が獲れる理由を海底地形から解説する。その後、土佐清水市街地の町歩きを行い、土佐清水が漁民の寄港地として発展した歴史をひもとく。ツアー終了後には、オプションで市内飲食店にて清水さばなどの新鮮なお刺身定食が食べられる。本ツアーの魅力としては、魚市場見学中にそこで働く漁師の生の声が聞ける点が挙げられる。
水産業は土佐清水市の重要なアイデンティティの一つである。土佐清水ジオパークでは、地質・地形の観点から同市の水産業を価値付けし、ツアー商品という形で来訪者に体験を提供してきた。これらは、地域の文化的アイデンティティを可視化し、美食を通じて来訪者体験を豊かにすることにつながる。